魔法学園のFPSプレイヤー

青空鰹

文字の大きさ
10 / 13

第9話

しおりを挟む
「ルンルンル~ン! ルンル~ン!? はい到着ですぅ~」

彼女が歌を聞いていたら到着していた。そして自ら扉を開けて入って行く。

「どうしたんですかぁ~? シュンくん、早く部屋に入って来て下さぁ~い。後、入ったら扉を閉めといて下さいね」

「あ・・・・はい」

やっぱりこの人は勝手な人だな。そう思いながら俺も理事長室に入って閉める。

「さてぇ~、シュンくん。早速で悪いんですけどぉ~、その時の状況を話して下さぁ~い」

「手短に話した方が良いですか?」

「えぇ~、なるべく手短にお願いします。え~っとぉ~、私の紅茶セットは何処に置いたんでしたっけぇ~?」

「セレス先生」

「はい~、何でしょうかぁ~?」

「向こうのテーブルの上にあるのは違いますか?」

「ん~? ・・・・あ!?」

俺が指をさす方向を見て気づいた様子を見せて声を出す。

「ありましたぁ~!」

セレス先生は棚を漁るのを止めて、テーブルに置いてあったティーカップを手に取る。

「シュンくん、ありがとうございますぅ~!?」

「ああ、はい。それで話をしても大丈夫ですか?」

「ええ~、良いですよぉ~」

セレス先生が自分が飲む為の紅茶を準備している中で、俺は話し始める。

「一時間目の授業が始まって少し経った時に敵意を感じたんです。それで窓の外を見てみたらフードを被った二人がいたんです」

「よく気が付きましたねぇ~」

「まぁ、アリスのように気配を隠しきれてなかったので」

「お姉さまはかなり強いですからねぇ~」

ホント、あの人は化け物だよ。

「それでその片方が魔法を撃って来たんです」

「よく無事でいられましたねぇ~」

「まぁ、壁を吹き飛ばされる瞬間に咄嗟とっさに伏せて避けましたから無傷でいれました。その後、侵入者の所まで気付かれないようにしながら近づいて、狙えそうな位置まで来たら、壁に隠れながら銃を構えたんですけど、どっかの教師に襟首えりくびを引っ張られたせいで全く違う方向に撃ってしまいました」

「襟首を引っ張られたせいでぇ~?」

セレス先生は首を傾げながら言う。

「はい、その後何とか一人は倒したんですが、もう一人に逃げられてしまいました」

「そうなんですかぁ~」

紅茶が出来たのかティーポットを持つとティーカップに注ぎ入れる。

「私の特製ティーが完成しましたぁ~!」

特製ティーって・・・・何か特別な事してるようには見えなかったな。

そう思っていると、セレス先生は紅茶を入れたティーカップを持ちながら椅子に座る。

「アイツに逃げられる時に何処からかファイアボールが飛んで来た」

「ファイアボールが飛んで来たんですかぁ~?」

「はい、あの二人の他に仲間がいたとは気付かなかった」

しかもファイアボールを撃って来たヤツの正体も見てないしな。

「それで侵入者の正体は、セレス先生が渡して来た手配書の二人でした」

「そうですかぁ~、しかし困りましたねぇ~」

「何が?」

「アナタは先生の指示に従わなかったのはぁ~、校則違反であり処罰しなければいけないのですけどぉ~、侵入者を追い払ったのは事実なのでぇ~、何とも言えないですねぇ~。う~ん・・・・」

セレス先生は困った顔をした後に両手をポンッと叩くと、俺に向かって話し始める。

「今回は名誉賞も処罰も無しと言う事にしましょ~」

ん? この人が何を言いたいか分からないぞ。

「つまりどう言う事ですか?」

「つまりプラスマイナスがゼロと言う事にしましょ~。って事ですよぉ~」

・・・・なるほど。俺の事を名誉として讃たたえれば、校則違反をしたヤツを何で讃えるんだ! って文句を言う輩やからが出る。逆に校則違反で処罰すれば、学園に入って来た侵入者を追い払った名誉ある生徒を処罰するとは何事だ! と言うだろう。

「なるほど・・・・そしてセレス先生の方で、私と彼とで話は済ませました。と言う事にするんですね」

「はい~、その通りですよぉ~。シュンくんは察しが良いですねぇ~」

そこまで話せば誰だって気付くだろう。

「それよりも、セレス先生」

「はい~、何でしょうかぁ~?」

「今回の件でアナタは多方面から叩かれますよ。大丈夫ですか?」

帝国で一番有名な学園の敷地内に不審者が侵入して暴れられたとなると大問題であり、理事長であるセレス先生が責任を問われるのは目に見えている。増してや、理事長の席に座りたいヤツに取っては今回の事件は良い題材だ。

「そうですねぇ~、とても困りましたぁ~」

いや・・・・紅茶を飲みながら、とても困りました。の一言で終わらせるのもどうか思う。

「まぁ俺が気になったのは、侵入者と戦っている間に先生が誰一人来なかった事ですね」

俺の襟首を引っ張って来た先生以外は見当たらなかったし、あの先生は戦ってもなかった。

「そうですねぇ~。先生達皆さんはぁ~、始めての事態で混乱していたのでぇ~、対応が遅くなってしまったんですよぉ~」

「それと先生達に役目を与えてなかったから、こんなに遅くなったんじゃないんですか?」

「役目ですかぁ~?」

「現場を確認する係と情報を伝える係、それに生徒達を非難させる係の三組に分かれて行動すれば、多分良かったと思います」

「なるほどぉ~、そう言う方法もありますねぇ~」

セレス先生はそう言った後にゆっくり紅茶を飲んでいるので、ちゃんと俺の話に向き合っているのか不安を感じつつも話を続ける。

「それで、その三組の構成についてはセレス先生の方で決めて下さい」

「あらぁ~? シュンくんの方で考えてくれないですかぁ~?」

「・・・・セレス先生、俺はこの学園の先生を全員知ってる訳じゃないので、構成しろと言われた所で俺は困るだけですよ。それにその構成を考えるのは学園側の仕事だと思いますよ?」

「・・・・確かにぃ~、言われてみればそうですねぇ~」

セレス先生はそう言い、椅子から立ち上がりティーポットを手に取ると、紅茶をティーカップへ注ぐ。

「三組の構成についてはぁ~、私達の方で考えますねぇ~」

「はい。それと、ん?」

コンコンッと扉を叩く音がしたので、話すのを止める。

「あらぁ~? お客さんみたいですねぇ~。どちら様ですかぁ~?」

「理事長。私、リーザ・エルガードです。現場の調査が粗方あらかた終わったので伝えに来ました。入ってもよろしいですか?」

「リーザ先生でしたかぁ~、どうぞぉ~」

「はい・・・・それと隣にスウェルブ先生がいるのですが、入れても大丈夫ですか?」

スウェルブ先生? 何で理事長室に入ろうとしてるんだ?

「その人はダメでぇ~す。自分の職場に戻って貰いまぁ~す」

「理事長! 何で私はダメなんですかっ!?」

「うるさいしぃ~、話を途中で止めてくきてメンドクサイのでぇ~、入室は許可出来ませんよぉ~」

「そんな理由で入室出来ないのは遺憾いかんです! 入らせて頂きますよ!?」

「絶対ダメですよぉ~。入って来たら怒りますからねぇ~」

そう言いつつ紅茶をゆっくり飲んでいる姿を見て俺は、この人は他人を怒れるのか? と疑問を感じてしまう。

「どうせあの先生はセレス先生に責任追求をしに来ただけだろうから、追い返しても問題無いと思いますよ?」

「ムッ! その声は、あの時の無能なガキ!?」

先生が生徒に向かって無能なガキって・・・・言っちゃいけない言葉だと思うが?

「そのガキが入れて、何故私が理事長室に入れないんですかっ!?」

酷い言われようだな・・・・まぁ気にはしないけどな。

「シュンくんはぁ~、話があったのでぇ~、私が理事長室に案内しましたぁ~」

「その話は終わったんですか? 終わったのでしたら、大切な話をしたいのでソイツを追い出して頂きたい」

この人は理事長室に入れる事を前提で言ってるのか?

「まだ続いてますからぁ~、追い出しませんよぉ~」

「ヌゥ~! 納得出来ませんっ!? 入らせて頂きますっ!!?」

スウェルブ先生はドアを開け放つと、目を血走らせながらズガズガと理事長室に入って来てテーブルの机を叩くと、怒声を浴びせ始めた。

「理事長!? 今回の件はぁ~・・・・もん・・・・・・だぃ・・・・・・・・・・・・・」

ん? ・・・・最初の勢いが無くなった。何が起きてるんだ?

俺が立っている場所からでは、スウェルブ先生が邪魔でセレス先生のようすが見えないので、少し横に移動してからセレス先生の顔を見た瞬間、身体が石のように固まってしまった。

「・・・・スウェルブ先生」

「は・・・・はい」

「アナタは私に、"とても失礼な醜態を見せた。"とは思ってませんか?」

あのニコニコした顔から表情が抜けていて、口調が全く違うセレス先生がそこにいた。

「いや・・・・あの・・・・・・・・それは、その」

「失礼だ。とは思ってないのですね」

「いえっ!? 私に落ち度はありましたっ!!?」

「そうですよね。今回は見なかった事にしてあげるので、大人しくここから出て行ってください。私の気が変わらない内に・・・・ね?」

「ヒッ!? 失礼しましたぁ~~~!!?」

スウェルブ先生はそう叫びながら走って出て行く姿を、呆然とした顔で見送ると先ほどから感じていた戦慄と恐怖が嘘の様に消えていった。

「・・・・やっと静かになりましたぁ~! リーザ先生ぇ~、どうぞ入って来て下さぁ~い」

「はい、失礼します」

平然とした顔で理事長室に入って来ると、手元にある資料を見ながら何枚かめくり、セレス先生の顔を見なが話し始める。

「セレス理事長、被害の報告を話してもよろしいですか?」

「はい~、お願いしますぅ~!?」

俺が聞き慣れた口調に戻ってるな。

「E-1-2の壁が崩壊していて生徒に怪我はありません」

壁に大穴を開けるほど強力な魔法を撃たれて、怪我人は0ゼロって奇跡だな。

「それで反対側の壁に小さな穴がいくつかあったので、気になって生徒達に聞いてみたら・・・・彼がやった。と言うんですよ」

リーザ先生が指をさして言ってくるので、正直に答える事にした。

「確かに俺がやった」

「・・・・何でそんな事をしたんですかぁ~?」

「俺のクラスメイト達は錯乱しているせいか、二つしかないドアに我先に逃げようと殺到していて、先生がいくら呼び掛けても聞こえてるようすがなかったから、銃を撃って注意を引きるける為にやった」

「・・・・なるほどぉ~、シュンくんは嫌われ役を演じたんですねぇ~。!? シュンくん偉いですよぉ~!?」

「それで、俺が気になるのは一つ」

「何ですかぁ~?」

そう言った後に紅茶を飲むが、紅茶が冷えてしまっているのが気になるのかティーカップの底を見つめている。

「リーザ先生、侵入経路の特定は出来たのですか?」

「・・・・その特定まだです。現在も調査中です」

やっぱり特定するにはまだ時間が掛かるか・・・・それはそれで良いとして。

「セレス先生。一つお願いがあります」

「はい~、何ですかぁ~?」

「今晩は俺以外の生徒達を、自分の部屋から出ないようにして下さい」

「えぇ~!? どうしてですかぁ~? 何か理由があるんですか~?」

「それは・・・・」

俺の話を聞いたセレス先生とリーザ先生は驚いた表情を見せた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

魅了の対価

しがついつか
ファンタジー
家庭事情により給金の高い職場を求めて転職したリンリーは、縁あってブラウンロード伯爵家の使用人になった。 彼女は伯爵家の第二子アッシュ・ブラウンロードの侍女を任された。 ブラウンロード伯爵家では、なぜか一家のみならず屋敷で働く使用人達のすべてがアッシュのことを嫌悪していた。 アッシュと顔を合わせてすぐにリンリーも「あ、私コイツ嫌いだわ」と感じたのだが、上級使用人を目指す彼女は私情を挟まずに職務に専念することにした。 淡々と世話をしてくれるリンリーに、アッシュは次第に心を開いていった。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...