魔法学園のFPSプレイヤー

青空鰹

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第8話

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教室の中では混乱した生徒達の叫び声に、早くこの場から逃げようとしているのか足音がうるさく聞こえる。

そんな中、一人の男子学生が眉間みけんにシワを作りながら立ち上がり、服に付いたホコリを振り落としながらこう思っていた。

あの野郎、絶対許さねぇ。

ブレザーを脱ぎ捨てチェストリグを身に付けポーチの中にマガジン入れた上、愛銃であるSIG MCXを出してマガジンを装填しチャージングハンドルを引っ張った後にそのまま手を離す。

「・・・・あっ!?」

気を取り戻した先生が起き上がり、俺に顔を向けてくるとこう言ってきた。

「い・・・・いいいい、一体何が起きたんですか!? 教室の壁が吹き飛んじゃって、ローブを着た二人組がいて」

だいぶ混乱してるな・・・・仕方ない。

「ビレリー先生!!」

「は、はい!?」

声を張り両肩を掴みそう言うと、驚いた顔をしながらこっちを向いたところで、語りかけるように話し始める。

「アナタが今やらなきゃいけない事は、生徒達の避難と安全確保。違いますか?」

「いえ、仰るとおりです」

「そして、他の先生達と連携を取って対処する事・・・・違いますか?」

「あってます」

「分かったのなら即行動!」

「は、はい! 」 

そう言うとドアに殺到している生徒達に向かって声を掛け始める。

「み、みなさん、落ち着いて! 止まってください!?」

ビレリー先生が生徒達に向かって声を掛けるが自分達の悲鳴で聞こえないのか混乱しているのか、どちらか分からない全く耳に届いていない。

「みなさん、止まってください! ・・・・止まってぇ~!?」

全く気付かないな。仕方ないやるか。

SIG MCXのセレクターをフルオートに合わせた後に、ドアに殺到している生徒達の頭上の壁を狙い、トリガーを絞る。

バババババンッ!?

「ウワッ!?」

「キャァーーーッ!?」

「ヒィッ!?」

様々な悲鳴が聞こえた後に全員その場に立ち止まり俺の顔を向くと、その内の一人がこっち歩いてきた。

「何すんだよ! 危ねえじゃねぇか!?」

胸ぐらを掴み掛かろうしている手を払い、そいつを押し退けるとクラスメイト達に向かって話し始める。

「全員落ち着いたな。お前らはビレリー先生の指示に従って行動するんだ! 分かったら返事しろ!? 」

『はいっ!?』

「それじゃあ先生、後はお願いします」

「は、はぁ?」

そう言った後にマガジンを装填リロードしながら廊下に出ると両肩を掴まれる。

「ちょ、ちょっとキミ! 何処に行くんですか?」

「何処? アイツらのところに行くだが?」

「何を言ってるんですか!? 危険です! 私の指示に、ッ!? 」

セレス先生は俺の前に出て顔を見た瞬間に目を見開き怯えた表情をしながら固まってしまう。そのやり取りを見ていたクラスメイト達は、何でビレリー先生があんな顔をしているんだろう? と話し合っている。

「アリスがここに居たら、アイツをブッ飛ばして来い!? と言ってる。ビレリー先生、後の事は頼みます」

「は・・・・はい」

返事を聞いた俺は校門に向かい走り始める。その姿を立ち尽くすように見ていたビレリー先生は、小声でこう言った。

「な、何なんですか・・・・何なんですかあの子は!?」





「あぁ、神よ! 我々はを魔を司る者と、魔に穢けがされし者達の魂をアナタのもとへ送ります。どうかアナタ様の力で救済してください!!」

「我々はこの学園おられる方々を、アナタ様のもとへ送ります! どうか、その魂を導みちびいてください!!」

空に向かって祈りを捧ささげている二人組みを、俺は壁に身を隠しながら様子を窺う。

あの二人はこんなところで何を言ってるんだ。危険な状況なのにこんな事して・・・・もしかして、バカなのか? しかし、こっちに気づいてないって事は絶好のチャンスだ。

SIG MCXのセレクターをセミオートにあわせてから、壁ごしにSIG MCX構える。

多分セレス先生がここにいたのなら、出来ればあの二人を生かしておいて欲しい。と言うはずだ。

そう思い、心を落ち着かせた後に足に照準を合わせてからトリガーをゆっくり絞るが。

「コラ、キサマは何をしてるんだ! さっさと避難しろ!?」

狙いを定めて集中しているところに、先生らしき人が急に襟首えりくびを捕み引っ張られてしまい、狙いとは全く違う方向に弾が飛んで行ってしまう。しかも銃声が侵入者の二人に聞こえてしまった為、こっちを向いてくる。

「チッ!」

「何だ今の音は? まぁ良い。さっさと避難するんだ!?」

クソッ! コイツのせいで最悪な形でバレた!?

「邪魔だッ!?」

そう言いながら襟首を掴んでいる先生の顔を肘ひじで殴り襟首を掴んでいる手を離させると、セレクターをフルオートに切り替え二人組みを狙いトリガーを絞り弾を撃ち込むが避けられてしまうが、想定範囲内。そのまま3~4発づつ撃ち込みながら片方に狙いを絞り込み、そして。

「ガァッ!?」

狙っていた敵の背中に2発、左足1発弾が当たり転がるように倒れる。

「ガッ!? ・・・・ゴホッ!? ゴホッ!?」

立とうとしているのか、地面を這いつくばっている。

「兄弟!?」

助けさせねぇよ。

そう思いながら、駆け寄っている仲間に狙いを定め撃ち続けて校門の裏側まで追いやる。

「チッ! 生意気な小僧がっ!?」

クソ・・・・他の先生達はまだ来ないのかよ?

薬莢カートリッジを撃ち切ってしまったので壁に身を隠しながら装填リロードすると、今度はSIG MCXを構えてつつ壁越しに敵が隠れた場所を見るがおかしい事に気付く。

・・・・おかしい、あそこにいるような気配がない。

「まさか!」

校門の塀へいを左右に顔を動かし見てみると、左側の鉄格子てつごうしにソイツが立っていて魔石をかざしていた。

「喰らえ小僧! 【ファイアボール】!?」

「チッ!?」

飛んで来るファイアボールを舌打ちをしながら避けてから、仕返しに敵を撃つが塀に隠れて避けられてしまうがそれは想定内。俺自身も近くの壁に身を隠す。

危なかった。塀に隠れてながら移動していたとは思っても見なかった。しかも、早く魔法を放つ為に魔石を使ったのか。

「ファイアボール!? ファイアボール!!? ファイアボール!!!?」

俺が隠れている場所に向かって魔法を放ち続けている。恐らく今度は銃で反撃されないようにているんだろう。しかも、ファイアボールを言う度に声が大きくなっているってことは。

「死ねっ!?」

やっぱりか!?

振り下ろしてくる剣をSIG MCXで受け止めて相手の顔を見ると怒り表あらわにしていた。

「・・・・お前に一つだけ聞きたい」

「何だ?」

「何で教室向かって強力な魔法を放ったんだ? もしかして、お前はテロリストなのか?」

「テロリストだと! 愚問!?」

俺から離れると剣先を俺に向けて話し始める。

「私は崇高すいこうなるガルジニオ教団の信者、名はファドム! 魔を司る者の魂を神の下へ送ろうとしているだけだ!」

「フーン」

やっぱりコイツがあの指名手配犯か・・・・セレス先生の言う通り頭がイカれてる。

「キサマは何故私の邪魔をする!?」

「邪魔? おいおい、何を言ってるんだ。邪魔をしたのはお前の方だろう」

「何だと!?」

「この学園で勉強に励はげもういる学生達に危害を加えて授業妨害をした・・・・違うか?」

「それこそ愚問!? 貴様らは穢れているのだ」

「はぁ?」

一体コイツは何を言ってるんだ?

「貴様には分からぬか! 悪しき身体を持つ者の魔力によって貴様は洗脳されているのだろう? それ故ゆえに私を、神様の執行代理を邪魔しようとするのだろう。違うか?」

「バカかお前は?」

呆れながら言うと、男は癇かんに障さわったのか。手を握りしめて歯ぎしりをし始めた。

「ここに来たのは俺自身の意識だ。後、お前らが学園の壁をぶっ飛ばして殺そうとして来た報復だ!?」

SIG MCXを後ろに回してSIG GSRを構えて撃つが避けられてしまう。

「見え透いた攻撃だな!?」

そう言ってから真っ直ぐ突っ込んで来る。しかし、これは想定内の攻撃だ。こっちも突っ込んでタックルを喰らわせる。

「グアッ!?」

そして、怯んでいる隙を突いて腕を掴み背負い投げて地面に叩き付けると、相当なダメージを負ったのか地面でもがき苦しみ始める。

「相手が悪かったな」

倒れている男に向けてSIG GSRを構えながらそう言うと、悔しそうに見上げてくる。

「グッ・・・・クソォ~~~!!?」

「そのまま動くなよ。お前らをこのまま学園側に引き渡す」

「グッ・・・・貴様こんな事してただで済むと思っているのか?」

「ああ、思ってるぞ」

「貴様が死んだ時、我らが神が貴様の犯したこの罪を裁くだろう」

「まだそんな事言ってるのか。ん?」

先生達の声が聞こえてくる。って事はこっちに先生達が向かってくるな。

「やれやれ、対応がウワッと! 何だ!?」

突然ファイアボールが目の前を横切ったので飛んで来た方向を向くが、さっき俺に撃たれた男が力なく横たわってだけで何も見当たらなかった。

コイツら二人の他に仲間がいたのか?

そう思いながら視線をファムドに戻すが、そこには誰もいなかった。

なっ!? 一体どこに行ったんだ?

周囲を見回してみるが、どこにもファムドが見当たらない。

逃げられた。

「クソッ! 油断した!?」

「キミッ!? そこのキミ!?」

悔しがっていると、いつの間にか先生達が近づいて来て話し掛けてきていた。

「どうして生徒のキミがここにいるんだ。避難しなかったのか?」

「まぁ、はい。アイツらを食い止めていたんです」

「食い止めていたぁ? 馬鹿かキミは!? 侵入者と戦うなんて一体何を考えてるんだ。もしキミ死んだらどうするんだ!?」

「はぁ・・・・怒るのは良いんですけど、先に確認したい事がですが良いですか?」

「何だ? 言ってみろ」

「俺が侵入者と戦っていたのに・・・・何で今更ここに来たんだ。対応が遅すぎだと思うんですけど?」

「お前!?」

誰かは知らないが、一応この学園の先生なんだろうな。と思っていたら胸ぐらを掴まれてしまった。

「まぁまぁ~、そこのせんせぇ~・・・・落ち着いて下さぁ~い」

この独特な話し方は・・・・セレス先生が来たのか・・・・てか右手を離して欲しい。

「理事長!? しかし彼は避難せずここに居るんですよっ!?」

セレス先生はアゴに手を当てて少し困った顔をしながら答え始めた。

「う~ん・・・・シュンくんが言ってる事は事実なのでぇ~。否定が出来ないんですよねぇ~」

「しかし・・・・想定外の出来事でしたので仕方ないのではないでしょうか?」

想定外の出来事だっただと。ふざけるなよ。

「いいや、悪いけど想定出来たね」

「何だと?」

「学園の警備が完璧と過信していたからこうなった。違いますか?」

「過信? 過信なんてしていない! 現に警備の方は大陸で一番と言っても良いレベルだぞ!?」

「じゃあ、その大陸一番がどうして不法侵入ですかね? ちゃんとした説明をしてもらいましょうか。どうなんですか? 」

声に熱[ねつを感じさせながら聞く俺に対し、目の前の先生は胸ぐらを掴んでいる手を離してから、たじろぎながら後ろに下がる。

「そ・・・・それは、その」

下がって行く先生を追おうとしたところで、セレス先生の手が俺の視界に入ってくる。

「そこまでですよぉ~。シュンくん」

「・・・・何で止めるんですか?」

「このままでは話が進まないのでぇ~、理事長室の方で私から話ますよぉ~・・・・私では不満がありますかぁ~?」

・・・・俺も熱くなり過ぎたな。

「ないので行きます・・・・理事長室に」

「そうですかぁ~。なら私と一緒に理事長室に行きましょうかぁ~」

「はい」

そう返事をした後に、アサルトライフルとハンドガンに入っている弾を抜きながらセレス先生に付いて行くのであった。
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