陰キャ高校生が大学に行くまで。

しあんちゅ

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1年生

隠されてしまったやる気スイッチ

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 5月19日、土曜日。
 学校を終えた俺は友達数人と一緒に勉強することになった。
 場所はMの付くハンバーガー食う所。

「あいつ、後どんくらいで来る?」

「うーん…そろそろかな」

 合流するのは別の高校へ行った中学時代の友人だ。
 その会話から少し経ったとき

「あ、きた」

 という一人の発言で全員が入り口を振り向く。
 合流した友人を見た全員が声を揃えて言った。

「「髪なっが」」

 …と。
 俺の学校は頭髪のチェックがあるため基本的に髪は短い。
 しかし、その友人のいる高校は頭髪どころか基本的になにしても大丈夫なところだったため、友人の髪は鼻に付きそうなくらいまで伸びていた。


 そんなくだりを経て、俺含めた全員は勉強…


 …出来るはずがない。


 そう、出来る訳がないのだ。
 1ヶ月に1回くらいしか会わない友人との食事だ、ずっと雑談をしていた。



 その時間、約五時間。

 長い、長い昼食だった。



 その帰り、時刻は大体20時くらい。
 結局最後までマックを残ったのは俺とその友人だけだった。


「一つ質問いい?」

 と、電車の中で俺は言った。
 友人は何かと耳を傾ける。

「俺ってお前んとこの大学、行こうとすれば行けると思う?」

 俺が行きたいと思っている大学の附属校に友人は入っていた。

 最初に言った通り俺は馬鹿だ。
 周りの友人たちの全員が頭が良いという環境の中、俺は心底不安になっていた。

 友人は静かに言った。

「うーん…あそこは○○学部が有名じゃん?だからそれ以外が狙い目なんだよ。そんで、そういうの狙う人に限って頭悪いから…いけるんじゃない?」

 その言葉に俺は少し希望を感じた。
 しかし、その時の俺は同時に友人の言葉が本当か、疑ってしまった。

 これは少しでも勇気づけようとしてくれているささやかな嘘ではないか、と。

 人気の少ない電車とそこから見える夜景は普段なら魅力を感じるのだが、このときに限っては目が雲っていた。



 何度も言うようで申し訳ないが、俺は頭が良くない。
 天才じゃないし秀才じゃない。


 だから疑ってしまった。勉強のできるその友人に対して。







 その一日後。
 日曜日は1週間分の睡眠をした。

 勉強は少しだけやったくらいで、やる気がどんどんなくなっていってるのが自分でもよくわかった。


 俺の欠点はここだ。



 俺は、人生において勉強で焦ったことが無かった。

 本当にこんなんでいいのか、今までもずっと。そう思ってきた。





 試験当日まで、あと1日。


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