【完結】当て馬王子が主人公ではなく私とくっつくのは解釈違いなんです! 綺麗さっぱり消え失せさせて頂きます

雪野原よる

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恋が終わるまで

2.転生しました

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 私は転生者である。そう言えば、結構多くのことが伝わると思う。

 前世では寝入るように意識を失って、そのまま目覚めなかった。気が付いたら、寝る前に開いて、読んでいたweb小説の世界の中にいた。

 その小説は、一言でいえば「悪役令嬢もの」。さらに言えば、「婚約破棄ざまぁ」だ。

 もうちょっと説明を付け加えると、「電波系ヒドインに籠絡された王子が、婚約者の令嬢を謂れのない冤罪で婚約破棄しようとして、返り討ちされるweb小説」という感じ。
 つまり、めっちゃテンプレ。そして私はテンプレが大好物だ。同じような小説を、少なくとも300作は読んできたと思う。数えてないけど、体感的に。

 このタイプの話には、無数の変化球が存在する。悪役令嬢が男だったり、ヒロインと悪役令嬢がくっついたり、国が滅んだり滅びなかったり、救いが一切無かったり、逃亡して冒険者になったり、元鞘に納まったりする。そして、私が生まれ変わったこの世界は、「王子が悪役令嬢のことを好きだから敢えて婚約破棄する」というパターンの物語だ。

「レインフォール王子、かわいそう……!」

 死ぬ前に呟いていた独り言がこれだ。

 物語の主人公は、悪役令嬢のアナリア嬢。乙女ゲームの世界に転生してしまったことに気付いて、こっそり家を出て冒険者をやったり、スローライフの準備をしたりしている。そこで冒険者に身をやつした隣国の王子と出会い、その正体を知らぬまま恋に落ちてしまうのだ。

 けれど、彼女には婚約者がいた。十歳のとき、強制的に婚約させられてしまったこの国の第三王子、レインフォールだ。

 彼女は無自覚ヒロインでもあるので、幼少期に出会ったレインフォール王子にいろんな本音をぶつけて、かえって好かれてしまう。転生チートであるアナリアを王家も気に入り、王命で婚約を結ばれてしまったのだ。

 レインフォールは優しく婚約者らしく振舞うけれど、二人の関係は上手くいかない。結局のところ、彼は当て馬なのだ。普段どんなに優しくても、一回の失点が命取りになる。

「なんで、今日は私が贈ったネックレスを着けてきてくれなかったんだ……!」
「何よ、その高圧的な態度! 人を従わせたいって根性が透けて見えるわ!」

 レインフォール王子は彼女の心が離れていっているのを感じているので、不安になって揺れてしまったのである。でも、一つ失点があれば、別の男のところに行く大義名分ができる(……できる?)。怒り、彼の前を脱走するアナリア。街中で偶然(?)隣国の王子と出くわし、思わずその胸の中で啜り泣いてしまう。

「あの人はいい人だって分かってるけど……息が詰まってしまうの」
「アナリア……君を隣国へ攫っていきたい」
「駄目……私には婚約者が……」

 これぞ「カテゴリ:恋愛」の展開である。

 レインフォール王子との関係はどんどん悪化し、その間に乙女ゲームヒロイン(電波系ヒドイン)が登場する。もちろん、逆ハーレム狙いで暗躍(隠れてないけど)するヒドイン。学園中のイケメンを、地位と身分が上の方から順に籠絡していくヒドイン。そのヒドインにたらし込まれて、アナリアに婚約破棄を言い渡すレインフォール王子。だが、それは実は、アナリアのためにレインフォールが仕組んだ茶番だった。隣国の王子に颯爽と助けられ、去っていくアナリアの姿を見送りながら、「アナリア……幸せに」と呟くレインフォール。彼は愚かな婚約破棄を仕出かした責任を取り、平民に身を落とし、電波系ヒロインを引き取って世話をしながら生きて行くのであった。そしてその後に番外編として続くアナリアと隣国王子のいちゃいちゃ新婚生活うんたらかんたら。

 で、私はその電波系ヒドイン、リリスに生まれ変わったんだけどね?

 いろんな意味で酷いな?
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