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16.問4「難民」3
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意見は完全に割れていた。
挙手した生徒の方は15人に上った。
『移民に賛成』の生徒は15人、『移民に反対』の生徒は12人。
真一は挙手できなかったことで『移民に反対』側となった。
ほぼ半分ではあるが、少数派の方に入る。
「やはり今回の議題は難しかったようです。主張がほぼ半々に分かれてしまいましたね」
今回の結果はMr.クロウにとってどう映ったのだろうか。
想像通り、それとも予想外。
黒いカラスの仮面を被り顔を隠しているMr.クロウの表情を読むことはできない。
声色はいつも通り淡々としたものであった。
いつも通りの事務をこなしているような感じだ。
「では、今回から趣向を変えてみましょう。私は答えを伝えずに指を鳴らします。指を鳴らしても残っていた方が正解ということになります。指が鳴るまで、どちらが正解かはわからないということです。では」
指を鳴らす姿勢をとるMr.クロウ。
指が鳴ったあと、自分はどうなるんだろう、そう考えながらMr.クロウの指先に集中する真一。
わずかな時間であったはずだ。
しかし、とても長い静寂の時間のように感じられた。
心臓の鼓動が早くなっているのが感じられた。
緊張で手の平が汗ばんでいるのが分かった。
そして、その運命の瞬間はやってきた。
Mr.クロウはパチンと指を鳴らした。
その瞬間、『移民に賛成』の意思を表明し挙手していた生徒たち15人が姿を消した。
「おめでとう。今この場に残っている諸君は正しい答えを選ぶことができた方々です」
真一は息を吹き返したかのように大きく深呼吸をした。
半分以上の生徒が脱落した難問に見事正解することができたのだ。
例えそれが、答えを決めかね身体が動かなかった結果であっても。
「さて、15名が脱落し残った生徒は12名ですか。かなりの難問だったとはいえ、多くの生徒がこの問題で消えていくことになってしまいました。実に残念なことです。消えていった生徒たちにこの言葉を送りましょう。輪廻転生し、次こそ良い人生を」
リンゴーン、リンゴーン。
終業を告げる鐘の音が鳴り響く。
「では休憩時間としましょう」
Mr.クロウは音もなくスーッと動き、教室から出ていった。
教室を見渡す真一。
教室内は空席が目立ち、寂しく感じられる。
それもそのはず、4限目を終え、当初42人いた生徒は今や12人まで減っていた。
特に4限目の生徒の減り方は異常だった。
真一自身、今この場にいるのは博打に勝ったようなものであった。
次の授業も自分は残ることができるのだろうか、そんな不安感を真一は感じるようになっていた。
挙手した生徒の方は15人に上った。
『移民に賛成』の生徒は15人、『移民に反対』の生徒は12人。
真一は挙手できなかったことで『移民に反対』側となった。
ほぼ半分ではあるが、少数派の方に入る。
「やはり今回の議題は難しかったようです。主張がほぼ半々に分かれてしまいましたね」
今回の結果はMr.クロウにとってどう映ったのだろうか。
想像通り、それとも予想外。
黒いカラスの仮面を被り顔を隠しているMr.クロウの表情を読むことはできない。
声色はいつも通り淡々としたものであった。
いつも通りの事務をこなしているような感じだ。
「では、今回から趣向を変えてみましょう。私は答えを伝えずに指を鳴らします。指を鳴らしても残っていた方が正解ということになります。指が鳴るまで、どちらが正解かはわからないということです。では」
指を鳴らす姿勢をとるMr.クロウ。
指が鳴ったあと、自分はどうなるんだろう、そう考えながらMr.クロウの指先に集中する真一。
わずかな時間であったはずだ。
しかし、とても長い静寂の時間のように感じられた。
心臓の鼓動が早くなっているのが感じられた。
緊張で手の平が汗ばんでいるのが分かった。
そして、その運命の瞬間はやってきた。
Mr.クロウはパチンと指を鳴らした。
その瞬間、『移民に賛成』の意思を表明し挙手していた生徒たち15人が姿を消した。
「おめでとう。今この場に残っている諸君は正しい答えを選ぶことができた方々です」
真一は息を吹き返したかのように大きく深呼吸をした。
半分以上の生徒が脱落した難問に見事正解することができたのだ。
例えそれが、答えを決めかね身体が動かなかった結果であっても。
「さて、15名が脱落し残った生徒は12名ですか。かなりの難問だったとはいえ、多くの生徒がこの問題で消えていくことになってしまいました。実に残念なことです。消えていった生徒たちにこの言葉を送りましょう。輪廻転生し、次こそ良い人生を」
リンゴーン、リンゴーン。
終業を告げる鐘の音が鳴り響く。
「では休憩時間としましょう」
Mr.クロウは音もなくスーッと動き、教室から出ていった。
教室を見渡す真一。
教室内は空席が目立ち、寂しく感じられる。
それもそのはず、4限目を終え、当初42人いた生徒は今や12人まで減っていた。
特に4限目の生徒の減り方は異常だった。
真一自身、今この場にいるのは博打に勝ったようなものであった。
次の授業も自分は残ることができるのだろうか、そんな不安感を真一は感じるようになっていた。
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