カミセン～神養成専門学校～

２０．問６「科学技術」１

「何やら教室内の空気がよどんでいますね。意見の対立でもあったのでしょうか」

見張られているのだろうか。
教壇に立ったMr.クロウは開口一番、先ほどまで起こっていた教室内での対立に触れた。

「各自、自分の考えがあることは当然です。今は意見がぶつかることもあるでしょう」

Mr.クロウは彼と真一を見ながら諭した。

「しかし、あなた方は次の神を選び出すために集められた存在です。くだらない個人的な考えなどは捨てて下さい。そして、神としての考えをしっかり学んで頂き、立派な神になって下さい。それが私の願いです。どうか、そのことを忘れないで下さい」

真一たちのことをこれ以上咎める気はないようだ。

「さぁ、では気を取り直して授業に入りましょう。今回の授業のテーマは「人は科学技術の発展を追い求めるべきか」ということです。これまでの人は度々科学技術を発展させ続けてきました。その技術の中には地球に対して悪影響を及ぼすと考えられるものもあります。そのことを踏まえ、人は科学技術をこれ以上発展すべきなのか、それとも科学技術の発展を捨て衰退の道を歩むべきかということについて考えてもらいたいのです。では皆さんの意見を伺っていくとしましょう」

真っ先に挙手する者がいた。
やはり挙手したのは彼だった。

「簡単な質問だ。人は発展し続けるべきだ。人が発展させ続けてきた科学技術には地球に対して影響を及ぼすものがある。いい意味でも、悪い意味でも。しかし、重要なのは技術をどう使うかということ。どんなに良い技術も悪いことに使えば悪になる」

いつも通り、お手本のような回答だった。

「良い技術でも悪いことに使えば悪になるですか。よい回答だと思います」

Mr.クロウも彼の答えを褒める。

「では、他の皆さんの意見も聞いていきましょう」

Mr.クロウは他の生徒の意見を求める。
しかし、挙手する生徒は現れない。
皆、彼の回答に賛同しているということだろう。
沈黙が続いた。

「おや、他の意見はないということでしょうか。実に寂しいことです。今は互いに意見をぶつけあう時間です。遠慮なく意見を述べて下さい」

Mr.クロウは他の意見を促した。
すると、一人の生徒が挙手をした。

「人は科学技術の発展を諦めるべきだと思います。人が生み出した科学技術の中には地球に対して悪影響をおよぼすものがある。そんな危険な技術は捨てるべきで、例え生活が不便になっても科学技術の発展を追い求めるべきではないと思います」