それでも私は、いきている

NANA

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私の名前は夏希…別に夏に産まれたわけではない。
家族は両親と私と二歳下の妹の4人。

昭和の終わりに、両親が共働きという環境の家で育った。今では死語だが、いわゆる「鍵っ子」だったのだ。
しかし他の鍵っ子友達とは少し違い、父方の祖父母の家で放課後や夏休み等の時間を過ごしていた。
祖父母は私や妹にとても優しくしてくれた。親と過ごす時間より、祖父母と過ごす時間の方が多かった。
ただおやつがいつも、蒸したサツマイモや茹でたトウモロコシやお煎餅で「どうしてサザエさんちのおやつはケーキなの?」なんて幼心に思っていた。

私は祖父母の存在は大きかった事を後になって気付くのだ。
この時は一緒に居て当たり前…たまに煙たくも感じる事もあった。


小学生の頃、親は私に習い事を色々させた。
特に熱を入れたのがピアノだった。
どの家庭もそうだが、親は自分が幼少期できなかった事を子供に押し付けたがる傾向がある。
毎週ピアノ教室に通っていた。
バイエル、ブルグミュラー、ソナチネ、ソナタ…主にクラシックだった。
また声楽の基礎の為にソルフェージュも練習していた。
普段から親と接する時間が少なかった私には親に評価される事が唯一の喜びであり、自分の存在意義であった。

テストの点数はもちろんのこと、通知表は必ず5が並んでいないと親に認めてもらえないと思っていた。
学習塾に通っていなかったので、必死になって自分で勉強した。
いつも親の期待に応えようとしていた。
「夏希はえらい子だね」
「夏希は賢い子だね」
そんな言葉が出る度に将来的なプレッシャーをもしかしたら感じていたのかもしれない。
何をするにも小学校で一番…
「一番」という立場はこの時はまだ好きだったのかもしれない。
後にこの時の「一番」が私の人生の歯車を狂わせる。

大人達に囲まれながら育ったせいか小さな頃から大人の言葉を使うようになり、小学校高学年の頃には生徒会に入った。
スローガンを考えたり、先生と討論したり…
朝礼の時、先生達と並び、校長先生や先生に続きスピーチを毎回していた。全校生徒の前で自分の意見を述べる事はとても満足していた。


「夏希ちゃんって、お小遣いいくらもらってるの?」
小学生時代必ずといっていいくらい出る話。
私はいつも返答に困ってしまっていた。
私の家では"お小遣い制度"というものがなかったからだ。
欲しい物がある時は必ず親に相談し、その都度必要な分だけのお金を貰っていた。
親が必要ない物だと感じた場合は勿論お金は貰えない。
「私、お小遣いを貯めてスーパーファミコンソフト買ったの!」
「私、やっとセーラームーンのステッキ買ったの!」
そんな話が飛び交う休み時間…私はいつも教室の窓の外ばかり見ていた。
  ツマラナイ
私にはその時、お金に執着がなかったのだ。
玩具等は買っては貰えなかったけれど、私は"お小遣いのない制度"に充分満足していた。

窓の外の校庭では同じクラスの男の子が無邪気にサッカーをしていた。
この頃既に同級生は恋愛対象ではなかった。


そんな大人になりたがりのガキの私は、中学生になると大人の男に恋をする…

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