ふれていたい、永遠に

たっこ

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離れていかないで【side蓮】2

「……あ、お……はよう、秋さん」
「ん、おはよ」

 今日は久しぶりのキスシーンの撮影で、緊張でおかしくなりそうだった。
 あの台風の日以来のキス。
 役に入り込める自信がない。
 それに秋さんとの距離感が変わってしまって、すっかり耐性がなくなっていた。
 今まで秋さんがふれてきたように俺からふれようかと思ってみても、もし拒否されたらと思うと怖くて行動に移せなかった。
 でもこのままだと意識しすぎて、また以前のように撮影を止めてしまうかもしれないと、朝から不安で緊張が半端ない。

「あ、秋さん。あの……お願いがあって」
「うん、なに?」
「あの……、ちょっと、腕組んだら……駄目かな?」
「…………え?」

 秋さんの瞳が困惑したように揺れた気がしたけど、きっと気のせいだと思い込んだ。

「あ……その、今日の撮影、また止めちゃいそうで不安で。秋さんとの距離に慣れておきたい……っていうか。その、前みたいにもっと近くに寄っていたいなって」

 どう伝えたらいいのかとそればかり考えていて、判断が鈍っていたんだと思う。
 お願いすれば、秋さんが断るはずないとどこかで思ってた。

「……いや、駄目だろ。もう少し周りよく見ろよ。スタッフさんも……マネージャーさんもいるんだからさ」

 まさか断られるなんて思わなくて、秋さんの言葉が信じられなくて愕然とした。
 今まで悩んできたこと、言えなくて飲み込んできた言葉、我慢してきたことが全部吹き飛ぶほどショックを受けた。

「なに……それ……」
「え?」
「意味……分かんないよ。今まで誰がいたってくっついてきてたのは秋さんの方じゃん」
「…………っ」
 
 言えなかった言葉を吐き出したら、止まらなくなった。
 
「俺、なにか嫌われることしちゃった?」
「ち、違うっ。そうじゃねぇって」
「じゃあなにっ? もう分かんないよ。ずっとニコイチだって、絶対だって約束したのに……っ」
「……蓮っ」
「秋さんが何か悩んでることも、聞いてもなにも話してくれないし。こんなの、全然ニコイチじゃない……っ」

 頭の中がぐちゃぐちゃで、言っていいことの判断がつかないままに吐き出してしまった。
 
「蓮……あの……」

 秋さんがなにか言いかけたけど、顔が見られなくてその場を離れてスタジオの隅に逃げ込んだ。
 両手で顔をおおって深い息をつく。
 思わず全部言ってしまった。
 言わなくていいことまで言ってしまった。
 きっともう……完全に嫌われた。

 さっきの会話を思い返すと、色々とおかしい。
 ただの友達だったらあんなこと言うはずないだろ、と今さら青くなる。
 ただの友達だったら、もし断られたってなんだよ冷たいな、で終わる話なのに。
 秋さんを好きだから、あんなにショックを受けた。
 勝手に傷ついて、勝手にキレて、秋さんに嫌な思いをさせた。……俺、最低だ。



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