52 / 173
離れていかないで【side蓮】2
「……あ、お……はよう、秋さん」
「ん、おはよ」
今日は久しぶりのキスシーンの撮影で、緊張でおかしくなりそうだった。
あの台風の日以来のキス。
役に入り込める自信がない。
それに秋さんとの距離感が変わってしまって、すっかり耐性がなくなっていた。
今まで秋さんがふれてきたように俺からふれようかと思ってみても、もし拒否されたらと思うと怖くて行動に移せなかった。
でもこのままだと意識しすぎて、また以前のように撮影を止めてしまうかもしれないと、朝から不安で緊張が半端ない。
「あ、秋さん。あの……お願いがあって」
「うん、なに?」
「あの……、ちょっと、腕組んだら……駄目かな?」
「…………え?」
秋さんの瞳が困惑したように揺れた気がしたけど、きっと気のせいだと思い込んだ。
「あ……その、今日の撮影、また止めちゃいそうで不安で。秋さんとの距離に慣れておきたい……っていうか。その、前みたいにもっと近くに寄っていたいなって」
どう伝えたらいいのかとそればかり考えていて、判断が鈍っていたんだと思う。
お願いすれば、秋さんが断るはずないとどこかで思ってた。
「……いや、駄目だろ。もう少し周りよく見ろよ。スタッフさんも……マネージャーさんもいるんだからさ」
まさか断られるなんて思わなくて、秋さんの言葉が信じられなくて愕然とした。
今まで悩んできたこと、言えなくて飲み込んできた言葉、我慢してきたことが全部吹き飛ぶほどショックを受けた。
「なに……それ……」
「え?」
「意味……分かんないよ。今まで誰がいたってくっついてきてたのは秋さんの方じゃん」
「…………っ」
言えなかった言葉を吐き出したら、止まらなくなった。
「俺、なにか嫌われることしちゃった?」
「ち、違うっ。そうじゃねぇって」
「じゃあなにっ? もう分かんないよ。ずっとニコイチだって、絶対だって約束したのに……っ」
「……蓮っ」
「秋さんが何か悩んでることも、聞いてもなにも話してくれないし。こんなの、全然ニコイチじゃない……っ」
頭の中がぐちゃぐちゃで、言っていいことの判断がつかないままに吐き出してしまった。
「蓮……あの……」
秋さんがなにか言いかけたけど、顔が見られなくてその場を離れてスタジオの隅に逃げ込んだ。
両手で顔をおおって深い息をつく。
思わず全部言ってしまった。
言わなくていいことまで言ってしまった。
きっともう……完全に嫌われた。
さっきの会話を思い返すと、色々とおかしい。
ただの友達だったらあんなこと言うはずないだろ、と今さら青くなる。
ただの友達だったら、もし断られたってなんだよ冷たいな、で終わる話なのに。
秋さんを好きだから、あんなにショックを受けた。
勝手に傷ついて、勝手にキレて、秋さんに嫌な思いをさせた。……俺、最低だ。
「ん、おはよ」
今日は久しぶりのキスシーンの撮影で、緊張でおかしくなりそうだった。
あの台風の日以来のキス。
役に入り込める自信がない。
それに秋さんとの距離感が変わってしまって、すっかり耐性がなくなっていた。
今まで秋さんがふれてきたように俺からふれようかと思ってみても、もし拒否されたらと思うと怖くて行動に移せなかった。
でもこのままだと意識しすぎて、また以前のように撮影を止めてしまうかもしれないと、朝から不安で緊張が半端ない。
「あ、秋さん。あの……お願いがあって」
「うん、なに?」
「あの……、ちょっと、腕組んだら……駄目かな?」
「…………え?」
秋さんの瞳が困惑したように揺れた気がしたけど、きっと気のせいだと思い込んだ。
「あ……その、今日の撮影、また止めちゃいそうで不安で。秋さんとの距離に慣れておきたい……っていうか。その、前みたいにもっと近くに寄っていたいなって」
どう伝えたらいいのかとそればかり考えていて、判断が鈍っていたんだと思う。
お願いすれば、秋さんが断るはずないとどこかで思ってた。
「……いや、駄目だろ。もう少し周りよく見ろよ。スタッフさんも……マネージャーさんもいるんだからさ」
まさか断られるなんて思わなくて、秋さんの言葉が信じられなくて愕然とした。
今まで悩んできたこと、言えなくて飲み込んできた言葉、我慢してきたことが全部吹き飛ぶほどショックを受けた。
「なに……それ……」
「え?」
「意味……分かんないよ。今まで誰がいたってくっついてきてたのは秋さんの方じゃん」
「…………っ」
言えなかった言葉を吐き出したら、止まらなくなった。
「俺、なにか嫌われることしちゃった?」
「ち、違うっ。そうじゃねぇって」
「じゃあなにっ? もう分かんないよ。ずっとニコイチだって、絶対だって約束したのに……っ」
「……蓮っ」
「秋さんが何か悩んでることも、聞いてもなにも話してくれないし。こんなの、全然ニコイチじゃない……っ」
頭の中がぐちゃぐちゃで、言っていいことの判断がつかないままに吐き出してしまった。
「蓮……あの……」
秋さんがなにか言いかけたけど、顔が見られなくてその場を離れてスタジオの隅に逃げ込んだ。
両手で顔をおおって深い息をつく。
思わず全部言ってしまった。
言わなくていいことまで言ってしまった。
きっともう……完全に嫌われた。
さっきの会話を思い返すと、色々とおかしい。
ただの友達だったらあんなこと言うはずないだろ、と今さら青くなる。
ただの友達だったら、もし断られたってなんだよ冷たいな、で終わる話なのに。
秋さんを好きだから、あんなにショックを受けた。
勝手に傷ついて、勝手にキレて、秋さんに嫌な思いをさせた。……俺、最低だ。
あなたにおすすめの小説
君に不幸あれ。
ぽぽ
BL
「全部、君のせいだから」
学校でも居場所がなく、家族に見捨てられた男子高校生の静。
生きる意味を失いかけた時に屋上で出会ったのは、太陽に眩しい青年、天輝玲だった。
静より一つ年上の玲の存在は、静の壊れかけていた心の唯一の救いだった。
静は玲のことを好きになり、静の告白をきっかけに二人は結ばれる。
しかしある日、玲の口から聞いた言葉が静の世界を一瞬で反転させる。
「好きになられるからあいつには近づかない方がいいよ。」
玲に対する感情は信頼から憎悪へと変わった。
それから十年後。
静は玲に復讐するために近づくが…
【完結済】俺のモノだと言わない彼氏
竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?!
■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。