【完】セフレなんて嫌なんだ 〜変装した俺とマネージャーの恋愛方法〜

たっこ

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他のネコがベタベタするな ♢壱成♢

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 京が来ない。
 鳴らないスマホと鳴らないインターホンにため息が出た。
 今日はどうしてもノブの京に会いたかった。京に抱きしめてもらいたかった。あの痛いほど好きだと訴えてくる瞳に見つめられたかった。
 俺は秋人に嫉妬してる自分にあきれ、自己嫌悪におちいり帰宅した。
 今日は帰りが早かったから絶対に来ると思っていたのに、何時間待ち続けても京は来ない。

 自分でもバカだと思う。あの秋人に嫉妬するなんて。
 秋人が蓮くんを溺愛しているのはわかっているのに、二人の距離が近すぎてバカみたいに嫉妬した。
 他のメンバーならなにも思わなかっただろう。
 でも秋人はネコだ。他のネコが京にベタベタするのは我慢できなかった。
 帰り際、また二人がくっついてなにやらコソコソし、しまいには京が顔を赤らめていた。あれがどうしても気になる。なぜ秋人に赤面するんだ。
 俺は冷蔵庫からビールを取り出し、その場で一気に飲み干した。足りない。もう一缶取り出し口をつけた。
 胸のモヤモヤがおさまらない。
 秋人も秋人だ。自分だって蓮くんが誰かにベタベタされたら、絶対に嫉妬で狂って人生の終わりみたいに泣くだろうに。だったら少しはこっちにも配慮くらいしてくれたっていいじゃないか。
 そう思ってから、俺が京を好きだと秋人が知るはずないよな、とため息をついた。

 二缶目のビールも飲み干し、三缶目を開けたところでスマホが鳴った。電話の着信音だ。 
 俺は慌ててソファまで戻り、スマホに表示されたノブの名を見て飛びついた。

「もしもしっ!」
『おわっ、え、どうした? すごい勢いだな』
 
 驚いた声のあと、くはっと笑い声が耳に届く。
 
「ノブ…………いま仕事が終わったのか?」
『えっ、と。仕事は早かったんだけどな? 今日はちょっといろいろあってさ』
「……そうか」
 
 もう日付も変わった。今日はもう会えない。わかっていても声を聞くと会いたくなる。
 京じゃない、俺だけの優しいノブの京の声が愛おしい。

『あ……のさ壱成』

 京の声が、どこか緊張を含んだ声に変わる。なぜか胸がざわついた。まだ嫉妬の余韻が残っているせいか……。

「どうした?」
『明日さ、仕事が終わったら……家に行くから』

 鍵を渡してからは、いつでも連絡なしに勝手に来ている京が、明日来ることをわざわざ報告してきた。
 いつもと違うことに、また胸がざわついた。
 
「……いつも、勝手に来るだろ?」
『うん。だよな。うん……。明日さ、話したいことがあるんだ。大事な話なんだ』
「なん……だよ、あらたまって……」
『だから、帰ってくるの待ってるな』
 
 ドクドクと心臓が嫌な音を立てた。
 それは、なんてことない言葉だ。ただ待ってる、それだけだ。でも、何時に帰宅するのか、どっちが早いのか遅いのか、そんなやり取りをする前に待っていると言われたのは初めてだ。
 明日はそれぞれ個別の仕事で、俺のほうが帰りが遅い。でも“ノブ”はそれを知るはずがない。京はいままでそういうことは慎重だったはずなのになぜだ。……いや、まさか。深い意味はないよな……。


            ◇ 


 京の話というのが気になって、今日は一日仕事に身が入らなかった。
 ミスなしで終われたのがまるで奇跡だった。
 そうだ、きっと心配も杞憂に終わるだろう。そうだ、大丈夫だ。
 リュウジを家に送り、帰路につく。

 だいぶ気持ちも落ち着いてきた頃、マンションに着いた。
 車を地下駐車場に入れる前に来客用スペースを見るのはもう癖になっている。
 いつもの場所にノブの車が停まっていた。もう京が来ていると思うと、また心臓が暴れだした。
 車を確認し終え、俺は車を地下に入れようとした。
 でも、なにか違和感を感じ、ノブの車を二度見してハッとした。
 いつも勝手に家の中で待ってる京が車の中にいる。いま着いたという風でもない。なぜだ。
 またいつもと違うことに胸がざわつく。
 京が俺に気づき「あ」という顔をした。
 すでに車が動いていたので反応もできず、そのまま地下に入ってしまった。
 なにかわからない違和感がまだ続く。なんだろうか。
 
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