6 / 154
6 ほっぺにチュウで倒れます
「天音、シャワー先入る? それとも……一緒に入る?」
最後は耳元でささやかれた。
本当なら胸がドキドキするところなのに、俺はいまそれどころじゃない。
どうしてこうなった。
まさか今日こんなことになるなんて誰が想像した?
敦司に報告したら目ん玉飛び出るよっ。
俺なんてもう、いますぐ心臓発作で倒れそうだよっ。
マジでどうしようっ。
俺にはあそこで断る勇気は出なかった。
断ったら二度目は無いかもしれない。
もし断れば、冬磨のセフレになるために、今度は俺が冬磨を誘うことになる。一度断っておいて今度は誘う。それはもう冬磨に執着する男にしか見えない。もう断られるシーンしか想像できない。二度と話をすることもできなくなるかもしれない。
そう思うと誘いを受けるしか道はなかった。
とにかく、準備はしなきゃ。しっかりガッツリ準備しなきゃ。
もしかしたら……なんて思って、昨日も家で広げてはみた。
でも、それがはたしてビッチだと思ってもらえるのか、俺には全くわからない。
だって初めてだし……。本当にどうしよう。もう少し時間がほしかった。
「天音? どうした? 顔色悪くないか?」
「……別に。シャワー、俺が先でいい?」
「ん、いいよ。ゆっくりどうぞ」
冷静にゆっくりとバスルームに向かった。
ドアを閉めてすぐに中を見渡す。
ガラス張りとかじゃないよねっ?
マジックミラー……でもないよねっ?
すかさず確認して、違うようだとホッとする。
やっと呼吸ができた気がする。
どうしよう……俺、本当に冬磨と……やるのっ?
嘘だ、嘘でしょ、嘘じゃないの……っ?
もう本当に心臓壊れそう……。こんなにバクバクしてるのに冬磨にバレないっ?! バレるよねっ?!
今日限りで終わっちゃったらどうしよう……っ。
ちゃんとビッチが演じれるのか不安で死にそうになりながら、俺はシャワーを長めに浴びた。
中を綺麗にして準備をする。
ローション忘れた! と思ったらバスルームにもちゃんとあった。ホテルってすごい。
念入りに念入りに指でほぐす。絶対に初めてだとバレないように、しっかりと、ガッツリと。
指何本入れば大丈夫なんだろ……。
お願い、誰か教えて……っ!
俺には尻の才能がないのか、いつも全然気持ちよくない。てか……気持ち悪い。
どうしよう……気持ちいい演技しなきゃ……。
大丈夫。ゲイビいっぱい観たもん。大丈夫。
「天音? ちょっと長くねぇか? 大丈夫?」
まずい。時間かけすぎたっ!
「あー、ごめん、湯船で寝ちゃった」
「ははっマジか! お前余裕だなー。いいよ。時間押したら延長すればいいし、気にすんな。ゆっくり洗ってこいよ」
「んー、さんきゅ」
冬磨、優しい……。心配をかけたあとでも、優しい言葉と思いやりで安心させてくれる。冬磨の優しさで、焦りとか不安とかどうでもよくなっていく。
あの吹雪の日も、冬磨の気遣いと優しさに感動した。今もまた冬磨の優しさにふれて、好きの気持ちがどんどんあふれる。
冬磨を思うと、胸が熱くなる。
大好き……冬磨……。
いまから冬磨に抱かれるんだ。もしかしたら今日限りかもしれない。
それなら、ビッチの演技で必死になるなんてもったいない。
ちゃんと冬磨を感じよう。最後かもしれないと思って、全身で冬磨を感じたい。
知識は頭に入ってる。準備もきっと完璧だ。ビッチ天音の演技は……口調だけは残しておこう。
後悔のないように、冬磨に抱かれよう。
俺の中でなにかが吹っ切れた。
シャワールームを出て、服かバスローブかで数分悩む。でも、ビッチがここで服着るわけないじゃん、と気が付きバスローブを羽織った。
ドキドキしながら部屋に戻ると、冬磨が優しい表情でソファから立ち上がり、こちらに歩いてくる。
「もう風呂で寝るなよ? 湯船で寝ると危ねぇから。心配すんじゃん」
「悪ぃ。ちょっと昨日徹夜だったんだ」
仕事が、と言おうとして、昨日もバーに行ったことを思い出す。
あぶないあぶない。徹夜の理由は言うのやめよ。
「マジでか。体調大丈夫か?」
「ん、平気。冬磨戻るまで寝てるわ。……ちゃんと起こせよな?」
「わかった。起こすよ。ちゃんと天音を抱きたいしな?」
「……あっそ」
無表情を装うことはできても、顔の火照りまでは抑えられない。
まだなにも始まってないのにどうしようっ。
うつむき加減で冬磨とすれ違うと、後ろからそっと手が頭にふれてチュッと頬にキスを落とされた。
「おやすみ、天音」
「……ばぁか」
冬磨はクスクスと笑ってバスルームに消えていく。
冬磨の気配が部屋から完全に消えると、俺は膝から崩れ落ちて床に倒れ込んだ。
冬磨に……冬磨にキスされた……っ!
やばいどうしようっ。やばいどうしようっ。口から心臓が飛び出そうっ。
両手で顔を覆って必死に呼吸をくり返す。そうしないと呼吸すら忘れそうだった。
なんとか気を取り直した俺は、変な呼吸をくり返しながらなんとかベッドに横になった。
落ち着かなくて何度もゴロゴロ転がった。
初めてなのに経験豊富なふりなんて本当にできるかな……。
冬磨には寝て待っていると伝えた。寝たふりした方がいいかな。
……だめだ。嘘はビッチ天音だけにしよう。
そう決めて身体を起こし、ベッドの背に寄りかかった。
「あれ? 起きてたのか」
「……うん。なんか寝付けなくてさ」
「お前、顔赤いぞ? 熱あるんじゃないか?」
心配そうに眉を寄せ、ベッドの上に腰をかけた冬磨が俺の額に手を当てた。
「……っ、ねぇよ……熱なんか。ちょっと風呂でのぼせただけ」
「ああ、ははっ。そりゃ湯船で寝こければな」
のぼせだと信じてくれた。よかったっ。
もうずっと顔が熱い。冬磨をこんなに間近で見つめたこともないし、話をしたこともない。ましてやふれたことなんて……。
ごめんね、冬磨。俺、最後まで意識たもてないかも……。
ところで……どう始めるんだろう。俺どうしたらいいんだろう。なにか言ったほうがいいんだろうか。
なにを言えばいいの……?
「……冬磨」
「ん?」
「……しよ?」
「……うわ。可愛いな、天音。ベッドではキャラ変わるタイプ?」
俺なんか間違えたっ?
ビッチ天音は可愛かったらだめだよねっ?
どうしようっ、さっそく失敗したっ!
最後は耳元でささやかれた。
本当なら胸がドキドキするところなのに、俺はいまそれどころじゃない。
どうしてこうなった。
まさか今日こんなことになるなんて誰が想像した?
敦司に報告したら目ん玉飛び出るよっ。
俺なんてもう、いますぐ心臓発作で倒れそうだよっ。
マジでどうしようっ。
俺にはあそこで断る勇気は出なかった。
断ったら二度目は無いかもしれない。
もし断れば、冬磨のセフレになるために、今度は俺が冬磨を誘うことになる。一度断っておいて今度は誘う。それはもう冬磨に執着する男にしか見えない。もう断られるシーンしか想像できない。二度と話をすることもできなくなるかもしれない。
そう思うと誘いを受けるしか道はなかった。
とにかく、準備はしなきゃ。しっかりガッツリ準備しなきゃ。
もしかしたら……なんて思って、昨日も家で広げてはみた。
でも、それがはたしてビッチだと思ってもらえるのか、俺には全くわからない。
だって初めてだし……。本当にどうしよう。もう少し時間がほしかった。
「天音? どうした? 顔色悪くないか?」
「……別に。シャワー、俺が先でいい?」
「ん、いいよ。ゆっくりどうぞ」
冷静にゆっくりとバスルームに向かった。
ドアを閉めてすぐに中を見渡す。
ガラス張りとかじゃないよねっ?
マジックミラー……でもないよねっ?
すかさず確認して、違うようだとホッとする。
やっと呼吸ができた気がする。
どうしよう……俺、本当に冬磨と……やるのっ?
嘘だ、嘘でしょ、嘘じゃないの……っ?
もう本当に心臓壊れそう……。こんなにバクバクしてるのに冬磨にバレないっ?! バレるよねっ?!
今日限りで終わっちゃったらどうしよう……っ。
ちゃんとビッチが演じれるのか不安で死にそうになりながら、俺はシャワーを長めに浴びた。
中を綺麗にして準備をする。
ローション忘れた! と思ったらバスルームにもちゃんとあった。ホテルってすごい。
念入りに念入りに指でほぐす。絶対に初めてだとバレないように、しっかりと、ガッツリと。
指何本入れば大丈夫なんだろ……。
お願い、誰か教えて……っ!
俺には尻の才能がないのか、いつも全然気持ちよくない。てか……気持ち悪い。
どうしよう……気持ちいい演技しなきゃ……。
大丈夫。ゲイビいっぱい観たもん。大丈夫。
「天音? ちょっと長くねぇか? 大丈夫?」
まずい。時間かけすぎたっ!
「あー、ごめん、湯船で寝ちゃった」
「ははっマジか! お前余裕だなー。いいよ。時間押したら延長すればいいし、気にすんな。ゆっくり洗ってこいよ」
「んー、さんきゅ」
冬磨、優しい……。心配をかけたあとでも、優しい言葉と思いやりで安心させてくれる。冬磨の優しさで、焦りとか不安とかどうでもよくなっていく。
あの吹雪の日も、冬磨の気遣いと優しさに感動した。今もまた冬磨の優しさにふれて、好きの気持ちがどんどんあふれる。
冬磨を思うと、胸が熱くなる。
大好き……冬磨……。
いまから冬磨に抱かれるんだ。もしかしたら今日限りかもしれない。
それなら、ビッチの演技で必死になるなんてもったいない。
ちゃんと冬磨を感じよう。最後かもしれないと思って、全身で冬磨を感じたい。
知識は頭に入ってる。準備もきっと完璧だ。ビッチ天音の演技は……口調だけは残しておこう。
後悔のないように、冬磨に抱かれよう。
俺の中でなにかが吹っ切れた。
シャワールームを出て、服かバスローブかで数分悩む。でも、ビッチがここで服着るわけないじゃん、と気が付きバスローブを羽織った。
ドキドキしながら部屋に戻ると、冬磨が優しい表情でソファから立ち上がり、こちらに歩いてくる。
「もう風呂で寝るなよ? 湯船で寝ると危ねぇから。心配すんじゃん」
「悪ぃ。ちょっと昨日徹夜だったんだ」
仕事が、と言おうとして、昨日もバーに行ったことを思い出す。
あぶないあぶない。徹夜の理由は言うのやめよ。
「マジでか。体調大丈夫か?」
「ん、平気。冬磨戻るまで寝てるわ。……ちゃんと起こせよな?」
「わかった。起こすよ。ちゃんと天音を抱きたいしな?」
「……あっそ」
無表情を装うことはできても、顔の火照りまでは抑えられない。
まだなにも始まってないのにどうしようっ。
うつむき加減で冬磨とすれ違うと、後ろからそっと手が頭にふれてチュッと頬にキスを落とされた。
「おやすみ、天音」
「……ばぁか」
冬磨はクスクスと笑ってバスルームに消えていく。
冬磨の気配が部屋から完全に消えると、俺は膝から崩れ落ちて床に倒れ込んだ。
冬磨に……冬磨にキスされた……っ!
やばいどうしようっ。やばいどうしようっ。口から心臓が飛び出そうっ。
両手で顔を覆って必死に呼吸をくり返す。そうしないと呼吸すら忘れそうだった。
なんとか気を取り直した俺は、変な呼吸をくり返しながらなんとかベッドに横になった。
落ち着かなくて何度もゴロゴロ転がった。
初めてなのに経験豊富なふりなんて本当にできるかな……。
冬磨には寝て待っていると伝えた。寝たふりした方がいいかな。
……だめだ。嘘はビッチ天音だけにしよう。
そう決めて身体を起こし、ベッドの背に寄りかかった。
「あれ? 起きてたのか」
「……うん。なんか寝付けなくてさ」
「お前、顔赤いぞ? 熱あるんじゃないか?」
心配そうに眉を寄せ、ベッドの上に腰をかけた冬磨が俺の額に手を当てた。
「……っ、ねぇよ……熱なんか。ちょっと風呂でのぼせただけ」
「ああ、ははっ。そりゃ湯船で寝こければな」
のぼせだと信じてくれた。よかったっ。
もうずっと顔が熱い。冬磨をこんなに間近で見つめたこともないし、話をしたこともない。ましてやふれたことなんて……。
ごめんね、冬磨。俺、最後まで意識たもてないかも……。
ところで……どう始めるんだろう。俺どうしたらいいんだろう。なにか言ったほうがいいんだろうか。
なにを言えばいいの……?
「……冬磨」
「ん?」
「……しよ?」
「……うわ。可愛いな、天音。ベッドではキャラ変わるタイプ?」
俺なんか間違えたっ?
ビッチ天音は可愛かったらだめだよねっ?
どうしようっ、さっそく失敗したっ!
あなたにおすすめの小説
【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます
猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」
「いや、するわけないだろ!」
相川優也(25)
主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。
碧スバル(21)
指名ナンバーワンの美形ホスト。自称博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。
「絶対に僕の方が美形なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ!」
「スバル、お前なにいってんの……?」
冗談?本気?二人の結末は?
美形病みホス×平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。
※現在、続編連載再開に向けて、超大幅加筆修正中です。読んでくださっていた皆様にはご迷惑をおかけします。追加シーンがたくさんあるので、少しでも楽しんでいただければ幸いです。
人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます
七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。
歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。
世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。
気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。
俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き
toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった!
※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。
pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!
https://www.pixiv.net/artworks/100148872
俺の好きな男は、幸せを運ぶ天使でした
たっこ
BL
【加筆修正済】
7話完結の短編です。
中学からの親友で、半年だけ恋人だった琢磨。
二度と合わないつもりで別れたのに、突然六年ぶりに会いに来た。
「優、迎えに来たぞ」
でも俺は、お前の手を取ることは出来ないんだ。絶対に。
運命の番は僕に振り向かない
ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。
それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。
オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。
ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。
ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。
ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。
ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。
完結しました!ありがとうございました。
借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます
なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。
そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。
「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」
脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……!
高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!?
借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。
冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!?
短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。
冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される
マンスーン
BL
王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。
泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。