彼を探して〜Pay foreword to your Journey 〜

霜月美雨

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宿を出てから、Yさんは何度か馴染みの友人に呼び止められていた。

ふと私は路肩に並ぶアクセサリー屋のひとつの腕飾りに目が止まる。

ドロップスのようにカラフルで、一つ一つに手書きの加工が施されていた。
ーーーー綺麗。。

「ミウちゃーん、ちょっと先行ってて~
すぐ追いつくから!」
馴染みの友達たち数名と立ち話をしながら
Yさんが言う。
「はーーい!」


私達は、いつもの街の喧騒を抜けて、駅までの足に飛び乗った。
カオティックな街並みと、ここまでの日々が走馬灯のように過ぎ去っていく。


私達は結局、寸出の差で列車と行き違ったけれど、
すぐに他の列車も同じ方向へ行く、途中で追いつくから乗り替えろと、周りのローカルの人達が教えてくれた。


「キミなんで分かるの?ミウちゃんのソレ、ほんと凄いわ~」

Yさんは、英語でもない、私も知らない言語
で語られる言葉を、私が意味から受け取る様子を見て、心底不思議な魔法少女でも見るかの様子で目をパチクリさせた。


「雰囲気ですよ~~^^」


Yさんとここへ来る途中も、こんなやり取りがあったなぁ…なんて、ふと思い出した。

私達は教えられた通りの列車で無事に都市に向かうことができた。

寝台車で暮れゆく夕日を見つめる。
それが沈み切るまで、ただひたすら見ていた。

その日も交代で眠った。

翌朝乗り替えの際に、荷物を減らそうと、手持ちの蒼のロングカーディガンを捨てようとした時、
Yさんが口を開いた。

「捨てちゃうの?それ。」

「うん。日本帰っても夏だし、もう要らないかな…」


ーー行きの列車で、寝ている彼にかけた、あのカーディガンだったーー


「蒼にあうのに~。勿体無いなぁ。
オレ、貰ってもいい?」

ーーへ?

「こんな使ったやつだけど、良かったら、どうぞ。」

旅人あるある。
帰国する人から託されるインスタント味噌汁やアイテム達。

「サンキュー☆
ぁ!そうだ。」

危ない忘れるトコだった~~と
Yさんはバックパックの外ポケットから小さい茶封筒を取り出した。

「ハイ。これは美雨ちゃんに。」

???

素直に顔にハテナマークを浮かべながら、
封筒を開けてみた。

「…!!!… これ……っ」

涙がでそうになる。
ーーーーあの時私が見ていたブレスレットだ…ーーーー

「……ありがとう。」

「ミウちゃんは、まずフィアンセさんとの事、片付けてからやね。。」

「うん……がんばる。」

「おぅっ。頑張ってちょーだい。」

「Yさんも、ここから先の長旅、気をつけてくださいね。」

「もちろんよ!」

「色々ほんと、ありがとうございました。ほんとに、色々…」

「こちらこそよ?またどこかであいたいよ~!」

「…こんな私に、またあいたいなんて言って貰えて……嬉しいです。ありがとう。」

「ーー??? そうなの??」

「…Yさん、どんどん進んでっちゃうからなぁ…」

「ハハハ!確かに!ミウちゃんも、
やったらいいさぁ~好きなように!^^」

「……うん。」

「おうよ?」

~~~~~

乗り換えた列車は、翌日昼頃都市に到着。
私は食堂で食事を済ませると、少し早かったが空港に向かうことにした。

街では早々に再開した男の子と共に
Yさんが見送ってくれた。

「ホントに空港まで行かなくて平気?」

「大丈夫。ありがとう。Yさん。」

Yさんは、タクシーの運転手に、寄り道せず必ず空港に行くよう念を押すと、ドライバーにチップを渡した。


私とYさんは最初の日のように、
がっちりと握手して、
街のメインストリートで別れた。

タクシーの扉が閉まり、
Yさんと友達が手を振ってくれる。

私も控えめに手を振った。

タクシーが走り出して、
Yさん達と町が遠ざかった。

後部の窓ガラスから小さくなっていく彼らと街並みを見ていた。

ふと前に向き直ると、どっと堪えていた涙が溢れた。

ドライバーはバックミラー越しに何度か何か言いたげに視線を向けたけれど、
そのまま無言で私を空港まで連れて行った。

~~~~~


待合室の黒大理石の床に荷物を下ろし、そばの椅子に座る。

左手のリングの跡はもう最初ほど気にならないくらいに日焼けをしていた。

手首には、あのカラフルなガラスのブレスレットが鮮やかに虹色を映していた。



ーーーー無駄じゃなかった。私が彼を探して、こうして飛び出してきた事。ーーーー


ーーーーここで過ごした時間は、私が私を生きた証。ーーーー


クスっと笑って見上げた青空には

次々と飛び立つ飛行機達が

ここからの自分の人生を

祝福してくれているかのようだった。



今度はわたしもーー きっと。


……fin☆
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