3年2組の山田くん

ことのは

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日常、それは変わらない日々

少しの誤解は、友達との会話の中に

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 突然教室の扉が開き、同じクラスの志村翔しむらかける中村明里なかむらあかりが入ってきた。
 2人は一瞬驚いた顔をしていたが、次第に間が悪かったと言わんばかりに苦笑いをする。
 何を血迷っているのかは分からないが、2人が勘違いしていることは青木にも分かった。

「明里…。勘違いしているようだから言っておくが、別に何もないぞ」
「え? …でも神妙な顔で話してたようだけど」
「はっきり言っとくが、青木あおきとは幼馴染で友人だ。それ以上でもそれ以下でもない」
山田やまだの言う通りだ。だから翔もその顔は止めろ」
「…良い雰囲気なのに邪魔して悪かった」
「話聞いてたか!?」
「友人から恋人に昇格したかったんだろ?」
「なんでそんな話になるんだよっ!」
「全く…。頭が痛い……」

 馬鹿げた話に頭が痛くなる。ほんと、人の話を聞いてくれと切に言いたい。
 2人は少し笑って志村は青木の隣に、明里は自分の隣の席に座った。

「じゃあ、一体何の話をしてたの?」
「あぁ、いや…」
「それは、なぁ…」

 明里の言葉に、青木と顔を見合わせる。

「中村、こいつ等だって言えないことの1つや2つあるだろう?」
「まぁ、そうだけど…」
「…それより、何で2人は一緒だったんだ? 先生に呼ばれてたのか?」
「あたしはコレ、書いてもらってたんだ」

 そう言って、明里はカバンの中から卒業アルバムを出してページをめくる。
 止まったページを見ると、皆からの寄せ書きが目に飛び込んできた。その寄せ書きは仲の良い友人や後輩、先生方でページは埋め尽くされていた。

「卒業式前日までよくやるなぁ…。んで、ちゃんと貰ってこれたのか?」
「うん。バッチリ!」
「最後の最後まで先生に迷惑かけてるなぁ、明里は」
「なにそれー。ユウ酷い」
「卒業式前は先生たち忙しんだから、少しは遠慮しないとダメだろ」
「あーあー、全然聞こえなーい」
「全く…」

 明里は両手で、拒むように両耳を塞いだ。

 呆れる気持ちを抑え、再度寄せ書きを見ればそこには優しい言葉で溢れていた。
 卒業式前で忙しいはずなのにだ。本当に優しい先生達で、そんな先生の教え子であることは誇りだ。
 でも、そんな恩師に泥を塗るような真似をする自分は――

「ユウ? どうしたの? 具合でも悪い?」

 その言葉にはっとして明里を見れば、心配そうな顔が飛び込んできた。
 大丈夫、気付かれてはいない。彼らが知ってるはずがない。大丈夫、そう言い聞かせた。
 そしていつも通りの口調で、いつも通りの顔で笑って見せる。

「大丈夫。少し考え事をしていただけだから」
「考え事って、何考えてたんだ?」
「…いや。そういえば、明里みたいに寄せ書きして貰わなかったなと思ってな…」
「は? 山田お前あんなに言い寄られてたのに、貰わなかったのかよ?」
「別に言い寄られてないんだが…。それに寄せ書きは誰にも書いてないぞ」
「マジかよ!?」
「意外だ…」
「だってユウ、卒業式当日に書くからそれまで待ってほしいって言うんだもん…」
「あー、なるほどな。でも、何で卒業式なんだ?」
「いや…、特に深い意味はないんだが…」
 言い淀んでいると、3人の好奇な視線が痛いほど刺さった。
「なんで卒業式当日じゃないと書かないんだよ。それだと時間ないだろ?」
「どうせ卒業式が終わったらすぐ帰るつもりだろ? いつ書く気なんだ?」
「えー、書いてくれないとかないよね? あたし、当日もちゃんと持ってくるからねっ」

 そうまでして寄せ書きが欲しいのかと、笑ってしまった。
 そんな態度に明里はムッとし、「ちゃんと書いてよねー」と頬を膨らました。

「分かってる。ちゃんと書くよ」
「約束だからね」
「はいはい」
「ほんとかなー?」

 疑いの目で見てくる明里の頭をポンポンと軽く叩く。

「明里に嘘言ったことないだろ?」
「まぁ、そうだけど…」
「信じられない?」
「そうじゃないけど…」
「なら、信じてくれる?」
「…うん」
「それなら良かった」

 明里は顔を少し紅くして、嬉しそうに笑った。
 ソレを見ていた2人は口を揃えて「タラシだなぁ…」と言うが、気にしないでおこう。
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