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序章 転移
第27話 魔術師リアムは風呂に入りたい
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昨晩、水道なる物の使い方すら分からず祐介に呆れられながらも何とか化粧を落とし、化粧水もどれだか分からず結局コットンパフという白い綿で祐介に溜息をつかれながら塗ってもらった。「何でこんなに奉仕してるんだろう」とぶつくさ言っていたが、分からないものは仕方がない。それに肌荒れを心配してきたのは祐介の方だ。
翌朝目を覚ますと、教わった通り今度は洗顔石鹸を泡立て洗う。この辺りはリアムの世界と一緒だ。ただ、この水にも対価が必要だそうで、流しっぱなしにするとそれだけ金がかかるという。是非どういう仕組みになっているのか、じっくりと話を聞きたかった。
「さて」
改めて鏡の中のサツキの顔を眺める。しっかり寝られたからだろう、昨晩はたっぷりとあった目の下のクマはほぼ消えている。さすが若者、幾つかは知らないが回復が早い。
鏡に顔を更に近付けてみる。肌はきめ細かく、色白だ。仕事ばかりと言っていたので、恐らく陽の光などろくに浴びていないのだろう。目は大きく、よく見ると少し茶色い。化粧の必要があるのだろうか、そこそこ可愛い顔をしていると思うのだが。髪は風呂に入っていないのでボサボサだが、黒の直毛。背中まで届く真っ直ぐなそれに触れてみると、サラサラしていた。
そこまで観察し、何はともあれ風呂に入っておくべきだということを思い出した。風呂は基本毎日入るのが嗜みらしい。
がしかし、この風呂の使い方が分からない。
「よし」
リアムは玄関に並べてあったサンダルを突っかけると、鍵を開け家を出、すぐ隣の祐介の家の扉を叩いた。
「祐介! 風呂に入りたい! 早くうちに来てくれ!」
暫くすると、中からドタドタと走ってくる音が聞こえてきた。壁だけなく、この家は扉も薄いらしい。扉が勢いよく開いた。
「さ、サツキちゃん! 一応社宅だからっ他にも同じ会社の人いるしっあんまり堂々と風呂とかうちに来いとか言わないでっ」
「ああ、そうか。誤解されたら困る様な意中の相手がいるのか。そういうのは早く言ってくれ」
恋人はいないが、好いている相手はいるのか。何とも初心なことだ。すると祐介が真っ赤になって否定した。
「いっいません!」
「ならばいいだろう」
「いや僕はよくてもサツキちゃんがさ!」
「私は別に構わない。それよりも風呂だ、風呂。使い方を教えてくれ」
ぐい、と祐介を引っ張り出すと、思い切り抵抗された。
「ちょっとサツキちゃん! 僕下トランクスだけ!」
「トランクスとは何だ」
「ああああもおおっ! 下着! パンツ一丁なの!」
「一丁……とは」
「一枚! あーもう面倒くさい! 行きます行きます!」
「祐介」
「何だよっ」
リアムは頭をぐしゃぐしゃしている祐介に向かって、言った。
「お前の方が大声を出しているぞ。いいのか?」
ぶち、と何かが切れた音がした気がした。
翌朝目を覚ますと、教わった通り今度は洗顔石鹸を泡立て洗う。この辺りはリアムの世界と一緒だ。ただ、この水にも対価が必要だそうで、流しっぱなしにするとそれだけ金がかかるという。是非どういう仕組みになっているのか、じっくりと話を聞きたかった。
「さて」
改めて鏡の中のサツキの顔を眺める。しっかり寝られたからだろう、昨晩はたっぷりとあった目の下のクマはほぼ消えている。さすが若者、幾つかは知らないが回復が早い。
鏡に顔を更に近付けてみる。肌はきめ細かく、色白だ。仕事ばかりと言っていたので、恐らく陽の光などろくに浴びていないのだろう。目は大きく、よく見ると少し茶色い。化粧の必要があるのだろうか、そこそこ可愛い顔をしていると思うのだが。髪は風呂に入っていないのでボサボサだが、黒の直毛。背中まで届く真っ直ぐなそれに触れてみると、サラサラしていた。
そこまで観察し、何はともあれ風呂に入っておくべきだということを思い出した。風呂は基本毎日入るのが嗜みらしい。
がしかし、この風呂の使い方が分からない。
「よし」
リアムは玄関に並べてあったサンダルを突っかけると、鍵を開け家を出、すぐ隣の祐介の家の扉を叩いた。
「祐介! 風呂に入りたい! 早くうちに来てくれ!」
暫くすると、中からドタドタと走ってくる音が聞こえてきた。壁だけなく、この家は扉も薄いらしい。扉が勢いよく開いた。
「さ、サツキちゃん! 一応社宅だからっ他にも同じ会社の人いるしっあんまり堂々と風呂とかうちに来いとか言わないでっ」
「ああ、そうか。誤解されたら困る様な意中の相手がいるのか。そういうのは早く言ってくれ」
恋人はいないが、好いている相手はいるのか。何とも初心なことだ。すると祐介が真っ赤になって否定した。
「いっいません!」
「ならばいいだろう」
「いや僕はよくてもサツキちゃんがさ!」
「私は別に構わない。それよりも風呂だ、風呂。使い方を教えてくれ」
ぐい、と祐介を引っ張り出すと、思い切り抵抗された。
「ちょっとサツキちゃん! 僕下トランクスだけ!」
「トランクスとは何だ」
「ああああもおおっ! 下着! パンツ一丁なの!」
「一丁……とは」
「一枚! あーもう面倒くさい! 行きます行きます!」
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リアムは頭をぐしゃぐしゃしている祐介に向かって、言った。
「お前の方が大声を出しているぞ。いいのか?」
ぶち、と何かが切れた音がした気がした。
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