ドラゴンに殺られそうになって(電車にはねられそうになって)気が付いたらOLになっていた(気が付いたら魔術師になっていた)件

ミドリ

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序章 転移

第45話 魔術師リアムと庇護者

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 祐介の背後で繋がれた手の力が強過ぎて、前の様子が気になるが確認することが出来ない。半袖の下に伸びる腕には筋が浮かび上がり、リアムを背中に隠そうと必死なのが分かった。

 何か非常に拙い事態が起きているに違いない。この警戒の仕方は、パーティーの仲間にグール死体喰いが紛れ込み誰がグールかと疑心暗鬼になった時に覚えた緊張感と同じだ。あれは大変だったな、とリアムはしみじみと思い出す。

「何って、散歩だよ散歩」

 羽田はだと呼ばれた中年男性が明るい声で答えるが、対する祐介の声は低いままだ。

「羽田さん、家この辺じゃないですよね?」
「休日出勤して、仕事が終わったから歩いてたらここに着いたんだよ」
「へえ」
「山岸こそ、昨日十時まで会社にいた癖に早起きじゃん」
「いつもこんなものです」

 どうやら同じ職場の人間らしい。そして祐介が警戒するくらいだ、何かある人物なのだろう。

 リアムが息を潜め隠れていると、羽田が尋ねた。

「あれー? 山岸、後ろの子誰? 彼女? あれ、お前彼女いないって言ってたの、あれ嘘?」
「……ちょっと忙しいんで、また」
「彼女の顔、ちょっと見せてよお」
「失礼します」
「隠すなよ!」

 急に羽田が声を荒げ、祐介の肩を前に引っ張りリアムの顔を覗き込んできた。なんて強引な奴だ。

 リアムと男の目が、合った。何とも冴えないむさい親父だ。リアム本体と同じくらいの年齢だろうが、顔色は茶色くあちこちが弛んでいる。鍛錬が足りないのだろう。

 そして言った。

「……やーっぱりね、怪しいと思ってたんだよな」
「行こう」

 祐介は羽田を無視し、背中のリアムを庇いながら道を塞ぐ羽田を避けて前に進む。

「サツキちゃんいくらチャイム押しても出ないからさあ」

 羽田がニヤニヤとしながら続けた。

「あーそっか! 木佐ちゃん、山岸のファンだもんな! サツキちゃんが虐められない様に隠してたって訳か! 納得!」

 背後で羽田が喚き続ける。ぐいぐいリアムを引っ張る祐介の顔は、本当に怖かった。

「ゆ、祐介、痛い」
「我慢して」
「あの男は職場の人間なのだろう? 無視して大丈夫なのか?」
「あいつ、サツキちゃんちまで行ってた」
「へ? あ、ああ、その様なことを言っていたな」

 リアムには関係がよく分からないので、いい悪いも判断出来ない。

「木佐ちゃんに喋ったらどうなるかなー?」

 明確な悪意が篭った羽田のその言葉に、祐介のきつく結ばれた唇が震えながら開いた。

「どうぞ、ご自由に」
「へえー! じゃあそうさせてもらおうかなあ!」

 リアムが祐介と背後の羽田を交互に見ていると。

 祐介が手をぱっと離したと思うと、リアムの頭をぐいっと引き寄せた。

「見なくていい」
「お、おお、承知した」

 背後に視線を感じたまま、リアム達は無言で家へと向かった。
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