ドラゴンに殺られそうになって(電車にはねられそうになって)気が付いたらOLになっていた(気が付いたら魔術師になっていた)件

ミドリ

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第一章 初級編開始

第118話 OLサツキ、初級編三日目特訓開始

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 お風呂はとても気持ちよかったが、一時間が分からない。なので、残念だったが早めに切り上げることにした。

 女風呂から出てすぐにリアムに戻るつもりなので、服は緩めに着たままだ。あまりにもサイズが違うのでやや恥ずかしいだらしない格好になってしまうが、こればかりは仕方ない。

 サツキが暖簾を潜り外に出ると、空気はひんやりとして涼しかった。

「長風呂だな」

 いきなり背後から声を掛けられビクッとすると、壁にユラがもたれかかっていた。

「……何?」
「早く元に戻れよ。アールが起きてる」
「え」

 ユラが苛々した顔で続けた。

「その胸の谷間に指突っ込んでいいなら別にいいけど」
「いっイルミナ・フィン!」

 咄嗟に唱えた。服のサイズが合っている。無事にリアムの姿に戻れた様だ。

「焦ってやんの」

 ふん、と鼻で笑うと、ユラは炊事場へと戻って行った。

「……は?」

 まさか、アールが起きてきたからとわざわざサツキが風呂から出るまで待っていたのか? 昨日はアールがユラを警戒していたのを思い出し。

「うーん?」

 アールとユラは、信頼し合ってる仲間じゃないのだろうか? 炊事場にいるユラとアールを見る。和気あいあいと楽しそうに話している。

 サツキは混乱した。さっぱり分からない。これが男の友情というやつなのだろうか? サツキはそもそも親友なんて呼べる友達がいなかったから、余計に分からないだけなのかもしれないが。

 はっと思い立つ。ユラは何だかんだ言ってるが、いつもアールといる。そしていつもアールを揶揄っている。巷でよく聞く、好きな奴ほど虐めてしまうという小学生男子の心理。あれなんじゃないか?

 そうだとしたら辻褄が合う。サツキに興味を示したアールを止めようと、それであれこれ画策しているのでは。

 霧が晴れた様な感覚があった。

 ウルスラやサツキをアールから遠ざける様な発言の数々。でも素直になれず、アールには皮肉を言う。

 何だ、そういうことだったのか。ユラはきっと、アールが好きなのだ。でもあの性格だから言えなくて。ああ、もしかしたら女の子達に囲まれて失敗したのだって、ユラがさりげなく失敗する様に誘導したのかもしれない。

 そうと分かれば、ユラの嫌味など可愛らしい嫉妬だ。サツキは、せいぜいアールを刺激しない様行動に気をつければいい。

 先生、なんて呼んで、きっとユラはやきもきしてしまったに違いない。済まないことをした。

「皆! おはよう!」

 現金なもので、昨夜はあんなに悩み凹んだ事実はどこへやら、気持ちは晴れ晴れとし、心なしかダンジョンを照らす明かりも明るく感じた。

 そう、ひとつひとつ、こうやって理解を深めていけばきっと万事うまくいく。

 だからサツキのやることは今はただ愚直に呪文を覚え、逃げず立ち向かうことだ。

 サツキの顔に、ようやく笑顔が浮かんだ。
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