ドラゴンに殺られそうになって(電車にはねられそうになって)気が付いたらOLになっていた(気が付いたら魔術師になっていた)件

ミドリ

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第一章 初級編開始

第139話 魔術師リアムの初級編三日目午後後半、切れる

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 ぶち、と何かが切れる音が頭の中に鳴り響いた。

「いい加減にしろ……」
「見てサツキちゃん! この写真も可愛いよー! うーん、祐介にしてはいい趣味してんじゃない!」
「やだなあ郁姉、照れる」

 そして聞いてない。この姉弟、いい加減にしろ! 

「もうこの化粧は落とす! 今すぐ落とす!」

 ばっと立ち上がると、リアムは洗面所に向かった。

「祐介! 止めて!」
「はい!」

 祐介が駆け足で来たと思うと、洗面所の扉の前に立ち塞がった。リアムは睨みつけ、低い声で言う。

「どけ」
「やだ」
「いい加減、玩具にされているこちらの気持ちも汲み取れ」
「ごめんなさい、やり過ぎました」

 祐介は口では謝るが、どく気はない様だ。

 リアムはもう一度言った。

「どけ」
「もうちょっと見ていたい」
「もう十分だ」
「お願い、頑張ってるご褒美だと思って」
「……どういうことだ」
「僕、頑張ってない?」
「……」

 腹を立てていたリアムの心が、すうっと落ち着く。確かに、毎日声が枯れそうになるまで説明をしてくれている。ご飯も作ってくれるし、羽田からも守ろうとしてくれている。

 祐介は、頑張っている。だが。

「何故これがご褒美になるのだ」
「滅茶苦茶好みだから」
「は?」
「いや何でもないですごめんなさい」
「やはり落として……」
「違うっ違うからサツキちゃん! 考えてみて! 美しい景色を見た時! もっと見ていたいとは思わない!?」

 リアムは考える。初めてダンジョンを攻略した時に見たダンジョン外の夕日。今でも忘れられない美しい光景だ。

「……まあ、な」
「でしょ? 僕は今正にその感動に出会ったんだよ。だからもう少し。ね?」

 確かにこの姿は美しい。リアムですら思った。それを愛でていたいと思う気持ちも、冷静になった今なら分からなくもない。

「その代わり」

 ニヤリと祐介が笑った。

「郁姉が胸を触るのを阻止する」
「乗った」
「何でよおお!」

 それまでリアムと祐介のやり取りを不思議そうに眺めていた郁姉が、叫んだ。

「ていうかあんた、尻に敷かれてるにもほどがあるでしょうが! いやざまあとかも思うけども!」
「血の繋がった姉だよね?」
「そもそもお前はもて過ぎてむかつくんじゃああ!」
「郁姉がもてないのはその言動が原因かと思う」
「ああー! ここに刀があったら今すぐ斬って捨てたい!」
「成敗しないでよ」
「ちくしょおお! この勝ち組が!」

 郁姉ががっくりと膝をついた。訳が分からないが、胸を触られるのはさすがにあれなので祐介の背中に隠れた。

 郁姉の、悲しそうな表情。

「サツキちゃん……」
「はい」
「また服持ってくるから、祐介と別れないでね」

 別れるも何も付き合ってなどいないが、リアムはこくこくと頷いた。

「分かった」
「はううう! いい子……!」

 泣き崩れたふりをしている郁姉を果たしてどうしたらいいのか。

「……帰る」

 肩を落としつつ立ち上がる郁姉に、リアムは声を掛けた。

「あ、あの、ありがとう、です!」
「郁姉、助かったよ」
「この愚弟めが……あ、サツキちゃんはまたね! 後で祐介に連絡先聞いておくから、メイクで分かんないこととか何でも聞いて!」

 確かにそれは助かる。リアムは笑顔で頷いた。
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