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第一章 初級編開始
第147話 魔術師リアムの初級編三日目夜の予定
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ヒールは高いとフラフラする。だが少し傾斜があると足が綺麗に見える。
傾斜があると爪先が痛いから嫌だ。だったら爪先が開いている物を選べばいい。
ひらひらとした物やキラキラした物は無理だ。ならシンプルな物にしよう。
リアムが譲れない部分を述べると、祐介が提案するを繰り返し、購入したのは黒の布が横に張ってある、少しだけ傾斜がついたヒール部分は太めのサンダル。最終的には祐介が選んだ。
レジと言うらしい会計をする場所で、若い女性店員に祐介がにこやかに微笑んでいる。女性店員はぽーっと祐介を見つめており、釣り銭を持った手の動きが止まっている。
さすがだ祐介。是非ともその技をリアムが魔術師リアムであった時に知りたかった。
笑顔だ、笑顔が魅了には必須なのだ。渋さが必須要件だと思っていたリアムのなんと愚かなことか。
羨ましい気持ちで女性店員と祐介を交互に眺めていると、リアムの視線に気付いた女性店員がはっとし、慌てて釣り銭を祐介に手渡す。
「あ、履いていくので、袋だけ下さい」
「はい!」
祐介が袋と、値札を取り外したサンダルをレジで受け取り、リアムの前に片膝をつきリアムを見上げた。
「どうぞ」
「ここで履き替えていくのか?」
「うん。履いてた靴は袋に入れるから」
祐介が並べたサンダルに足を入れる。じっと見られているとソワソワしてしまうが、祐介が贈ってくれた物だ、きっともらった瞬間を見たいのだろう。
リアムが履き替えると、祐介は履いていたサンダルを袋にしまい、袋を腕にかけた。
「ありがとう祐介、あ、それは自分で持つ」
「駄目。――ほら」
立ち上がった祐介が腕を差し出す。一瞬躊躇ったが、これも特訓だ。リアムは祐介の腕を掴んだ。
「ありがとうございましたー!」
「どうも」
祐介が颯爽と挨拶をする。女性店員の顔がにやけていた。もてるにはこの爽やかさも必須条件なのかもしれない。
やはり渋さは方向性として間違っていたのか。リアムは反省した。だがもうどうしようもない。
店を出ると、もう外は暗くなっていた。
「美味しいワインがあるお店……あ、駄目だ、駄目駄目、明日は仕事だもんね、今日はお酒なしね。美味しいスペイン料理屋があるみたいだよ。ちょっと小洒落てるからひとりじゃ入りにくくて入ったことなかったんだよね。そこに行こうよ」
「ワイン……」
「駄目」
「……分かっている」
明日はいよいよリアムにとっては初出社だ。祐介が持っていた集合写真で顔と名前はほぼ覚えたが、仕事内容も正直分からない。未知の世界だ。シャッキリとした頭で赴きたかった。
「明日着ていく服だけ用意しておかないとね。メイクもあるし、早起きだね」
「となると、あのジャイアントウォームの幼体からしか採れない糸で出来た様なあの代物も身につけるのか」
「ごめん何言ってるか分かんない」
「あれだ、下半身に身に着けていたあの薄い代物だ」
「あー……ストッキングか」
「あれは一体どうやって履くのだ?」
祐介の笑顔が固まった。
傾斜があると爪先が痛いから嫌だ。だったら爪先が開いている物を選べばいい。
ひらひらとした物やキラキラした物は無理だ。ならシンプルな物にしよう。
リアムが譲れない部分を述べると、祐介が提案するを繰り返し、購入したのは黒の布が横に張ってある、少しだけ傾斜がついたヒール部分は太めのサンダル。最終的には祐介が選んだ。
レジと言うらしい会計をする場所で、若い女性店員に祐介がにこやかに微笑んでいる。女性店員はぽーっと祐介を見つめており、釣り銭を持った手の動きが止まっている。
さすがだ祐介。是非ともその技をリアムが魔術師リアムであった時に知りたかった。
笑顔だ、笑顔が魅了には必須なのだ。渋さが必須要件だと思っていたリアムのなんと愚かなことか。
羨ましい気持ちで女性店員と祐介を交互に眺めていると、リアムの視線に気付いた女性店員がはっとし、慌てて釣り銭を祐介に手渡す。
「あ、履いていくので、袋だけ下さい」
「はい!」
祐介が袋と、値札を取り外したサンダルをレジで受け取り、リアムの前に片膝をつきリアムを見上げた。
「どうぞ」
「ここで履き替えていくのか?」
「うん。履いてた靴は袋に入れるから」
祐介が並べたサンダルに足を入れる。じっと見られているとソワソワしてしまうが、祐介が贈ってくれた物だ、きっともらった瞬間を見たいのだろう。
リアムが履き替えると、祐介は履いていたサンダルを袋にしまい、袋を腕にかけた。
「ありがとう祐介、あ、それは自分で持つ」
「駄目。――ほら」
立ち上がった祐介が腕を差し出す。一瞬躊躇ったが、これも特訓だ。リアムは祐介の腕を掴んだ。
「ありがとうございましたー!」
「どうも」
祐介が颯爽と挨拶をする。女性店員の顔がにやけていた。もてるにはこの爽やかさも必須条件なのかもしれない。
やはり渋さは方向性として間違っていたのか。リアムは反省した。だがもうどうしようもない。
店を出ると、もう外は暗くなっていた。
「美味しいワインがあるお店……あ、駄目だ、駄目駄目、明日は仕事だもんね、今日はお酒なしね。美味しいスペイン料理屋があるみたいだよ。ちょっと小洒落てるからひとりじゃ入りにくくて入ったことなかったんだよね。そこに行こうよ」
「ワイン……」
「駄目」
「……分かっている」
明日はいよいよリアムにとっては初出社だ。祐介が持っていた集合写真で顔と名前はほぼ覚えたが、仕事内容も正直分からない。未知の世界だ。シャッキリとした頭で赴きたかった。
「明日着ていく服だけ用意しておかないとね。メイクもあるし、早起きだね」
「となると、あのジャイアントウォームの幼体からしか採れない糸で出来た様なあの代物も身につけるのか」
「ごめん何言ってるか分かんない」
「あれだ、下半身に身に着けていたあの薄い代物だ」
「あー……ストッキングか」
「あれは一体どうやって履くのだ?」
祐介の笑顔が固まった。
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