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第二章 中級編開始
第160話 OLサツキの中級編初日の予定はもしかして
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ウルスラがジュリアンとまだああだこうだやっているのを横目に、ユラは欠伸をしながらこちらに向かってきた。軽く手を上げ挨拶をする。
「よお」
「遅いぞユラ」
「おはようユラ」
サツキは手を振り返した。いつもサラサラと肩で揺れているユラの金髪は、今日は後頭部の部分がぴょんと跳ねている。何だか急に幼く見えて、可愛いな、と笑ってしまった。ユラが、ん? という顔をする。今日は昨日ほど機嫌は悪くないらしい。
サツキが自分の髪の毛の後ろを指でちょいちょいと差して教えると、ユラが自分の頭を触って、跳ねた髪に気付くと笑った。おお、クールビューティー系イケメンの意外な笑顔。昨日のあれがなければキュンときてしまいそうなレベルの可愛さだ。
「死んだ様に寝てた」
そう言うと、アールとサツキの間の席に座る。また「はあーっ」とわざとらしい溜息をついてテーブルに突っ伏したアールを見て、一瞬とても面倒臭そうな顔になった。あれ? ユラのアール実は大好き説、もしかして違う? いやでも、好きな相手でもユラならこういう顔をしそうではある。
「何この面倒臭いの」
言い切った。アールを見るが、起き上がる気はない様だ。確かに面倒臭い。サツキだって面倒臭い。
「なんかね、今日から三日間ある春祭りに家族が来るんだって」
「ふーん」
全く興味がなさそうだ。これは言っても大丈夫だろうか。嫉妬とかしたりされてもそれはそれで面倒臭い。
「でね、また今年も出会いがなくなるって言って落ち込んでるみたい」
「出会ったってどうせ頭が馬鹿なのばれたら逃げられるじゃねえか」
身も蓋もない。事実であればこそ、アールが憐れだった。
「ユラも冷たい……だってさ、お前もあのジンクス知ってるだろー?」
ようやく顔を上げたアールの顔は半泣きだ。イケメンだけに可愛らしいが、泣いている理由があまりにも馬鹿らしい。
「あれだろ? 春祭りで出会った男女は幸せになるってやつだろ? 馬鹿らしい」
ユラも同意見の様だ。
「うっわーユラ、夢ないなあ!」
「俺は目に見えるものしか信じない主義なの」
「え、じゃあお前祭り参加しないの?」
ユラが、腕を組んで天井を仰ぐ。
「今日は鑑定士の所に行きたいんだよなー。ていうか祭りのことすっかり忘れてた。何処行っても混んでるだろ? 俺人混み嫌いだし、ひとりでのんびり家でゴロゴロしてるよ」
「色気ないなー」
やっぱりユラも祭りのことは忘れていたらしい。でもよし、これで後はウルスラを誘えば、無事女子三人でエンジョイフェスティバルが出来る。リアムには申し訳ないが、やっぱり一度は着てみたいドレス。だって、女の子だもの。
み○をの様な台詞を心の中で吐きつつ拳を小さく握り締めたサツキは、ウルスラが戻ってくるのを待った。どれだけ交渉してるんだろう。ドラゴンを倒して報酬はたんまりもらっている筈なのに。
「ウルスラ何やってんの?」
「価格交渉。少しでも釣り上げるって」
「出たよ守銭奴」
ははは、と男二人が笑うと、遠くからウルスラが睨んでくるのが分かった。
「よお」
「遅いぞユラ」
「おはようユラ」
サツキは手を振り返した。いつもサラサラと肩で揺れているユラの金髪は、今日は後頭部の部分がぴょんと跳ねている。何だか急に幼く見えて、可愛いな、と笑ってしまった。ユラが、ん? という顔をする。今日は昨日ほど機嫌は悪くないらしい。
サツキが自分の髪の毛の後ろを指でちょいちょいと差して教えると、ユラが自分の頭を触って、跳ねた髪に気付くと笑った。おお、クールビューティー系イケメンの意外な笑顔。昨日のあれがなければキュンときてしまいそうなレベルの可愛さだ。
「死んだ様に寝てた」
そう言うと、アールとサツキの間の席に座る。また「はあーっ」とわざとらしい溜息をついてテーブルに突っ伏したアールを見て、一瞬とても面倒臭そうな顔になった。あれ? ユラのアール実は大好き説、もしかして違う? いやでも、好きな相手でもユラならこういう顔をしそうではある。
「何この面倒臭いの」
言い切った。アールを見るが、起き上がる気はない様だ。確かに面倒臭い。サツキだって面倒臭い。
「なんかね、今日から三日間ある春祭りに家族が来るんだって」
「ふーん」
全く興味がなさそうだ。これは言っても大丈夫だろうか。嫉妬とかしたりされてもそれはそれで面倒臭い。
「でね、また今年も出会いがなくなるって言って落ち込んでるみたい」
「出会ったってどうせ頭が馬鹿なのばれたら逃げられるじゃねえか」
身も蓋もない。事実であればこそ、アールが憐れだった。
「ユラも冷たい……だってさ、お前もあのジンクス知ってるだろー?」
ようやく顔を上げたアールの顔は半泣きだ。イケメンだけに可愛らしいが、泣いている理由があまりにも馬鹿らしい。
「あれだろ? 春祭りで出会った男女は幸せになるってやつだろ? 馬鹿らしい」
ユラも同意見の様だ。
「うっわーユラ、夢ないなあ!」
「俺は目に見えるものしか信じない主義なの」
「え、じゃあお前祭り参加しないの?」
ユラが、腕を組んで天井を仰ぐ。
「今日は鑑定士の所に行きたいんだよなー。ていうか祭りのことすっかり忘れてた。何処行っても混んでるだろ? 俺人混み嫌いだし、ひとりでのんびり家でゴロゴロしてるよ」
「色気ないなー」
やっぱりユラも祭りのことは忘れていたらしい。でもよし、これで後はウルスラを誘えば、無事女子三人でエンジョイフェスティバルが出来る。リアムには申し訳ないが、やっぱり一度は着てみたいドレス。だって、女の子だもの。
み○をの様な台詞を心の中で吐きつつ拳を小さく握り締めたサツキは、ウルスラが戻ってくるのを待った。どれだけ交渉してるんだろう。ドラゴンを倒して報酬はたんまりもらっている筈なのに。
「ウルスラ何やってんの?」
「価格交渉。少しでも釣り上げるって」
「出たよ守銭奴」
ははは、と男二人が笑うと、遠くからウルスラが睨んでくるのが分かった。
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