ドラゴンに殺られそうになって(電車にはねられそうになって)気が付いたらOLになっていた(気が付いたら魔術師になっていた)件

ミドリ

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第二章 中級編開始

第201話 魔術師リアムの中級編二日目の執務エリアの様子

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 執務エリアに祐介と一緒に戻ると、祐介が部屋にいた皆にまずは頭を下げた。

「ご迷惑おかけしました」

 すると、潮崎ら営業がにこやかに答える。

「山岸くんは悪くないよ、どう考えても悪いのはあの人だし」

 山口の隣にいる、田端という三十代半ばの中肉中背、可もなく不可もない顔で全体的にあまり特徴のない男が、顔を顰めた。

「それにしても、会社の同僚を殴るなんてちょっと行き過ぎですよ。さすがにこれ、社長に上げた方がいいんじゃないですか?」

 そう言いつつ潮崎を見る。潮崎は四十代後半に足を踏み入れたばかりだが、この中では最年長者だ。頭を掻きながら、苦笑いした。

「ええー……。昨日社長にチクったら、凄い勢いで怒るから怖かったんだよねえ」
「はは、怖いなんて思ってないくせに」

 山口が大きな腹を揺らしてからかう。

「潮崎さん、本当見た目によらず強くいけるから格好いいっすよ」

 もう一人の営業、佐川がへら、と笑った。ツンツン頭の細面のこの男は祐介と同期入社で、年齢は二つ上だが祐介とは比較的仲がいい様だ。

「止めてよ、もうこれ絶対僕が言う流れになってるじゃない」

 お人好しそうな顔で潮崎が言った。でも、とそれまで黙って聞いていた木佐ちゃんが声を上げた。

「実際問題、これって傷害罪じゃないんですか? 殴って、血が出たんですよ? 注意されて相手を殴る人が同じ会社にいると思うと、私正直怖いです」
「木佐ちゃん殿……」

 そう、この中では木佐ちゃんが一番羽田の行動を怖がっていた。昨日は肩を触られており、祐介が言うところによるとあれは十分セクハラ行為に該当するらしかった。

「まあ、じゃあ、後で言いに行くよ。今日社長来てるみたいだし」
「潮崎さんすみません、僕の所為で……」

 祐介がしょんぼりしている。先程シャンプーの匂いを存分に嗅いで落ち着いたはいいが、今度は凹んでしまったらしい。

 潮崎が笑った。

「いいよ、こういうのはさ、年上から言った方が社長も聞くだろうし。それにしても、山岸くんが怒るところなんて初めて見たよ。君も怒ることあるんだねえ」
「え、いや、あはは」

 祐介が頭を掻いた。祐介が怒らない? それは意外だった。

「そうなのか? 一緒にいるとすぐに膨れたり拗ねたり笑顔のまま怒ったりしているではな……」
「わー!!」

 祐介がいきなり大声を出すと、リアムの口を手で押さえた。

「むが、むがむが」
「ちょっと黙ろうか、サツキちゃん!」

 祐介が笑顔でまた怒っている。

「ほら、また怒って……もごもご」
「サツキちゃん、ほら、仕事しようか仕事」

 潮崎が腹を抱えて笑っている。他の者もニヤニヤとこちらを眺めていた。皆どうしたのだろうか。

「見事に尻に敷かれてるねえ、山岸くん」

 あはは、と潮崎が笑うと、祐介は何とも情けない顔をして、次いで仕方ないなあ、という風に笑った。 
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