ドラゴンに殺られそうになって(電車にはねられそうになって)気が付いたらOLになっていた(気が付いたら魔術師になっていた)件

ミドリ

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第二章 中級編開始

第242話 OLサツキの中級編三日目の午後の鑑定結果

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 この人には一体何が視えているのだろうか。

「あの……私、死んだかと思ってたんです」

 電車に接触しそうになり、運転手と目が合ったあの瞬間に。

 するとユラが言った。

「リアムは完全に死んでたぞ。黒焦げだったし、俺の初の死者蘇生の術が効いたからな。サツキの方も一旦死んだんじゃね?」

 サラッと怖いことを言う。

「あのね、こっちと違って、私の世界では怪我は一瞬で治せないし、死んだら死者蘇生の術なんてないから。それに電車に撥ねられそうだったから、もし撥ねられてたらぐしゃぐしゃに……」

 想像したら背筋がぞくっとした。

 リュシカが言う。

「死んだと認識したのだろうな。似通った波長を持つリアムが同時に死んだと思ったことで、互いの碇の元へと導かれたのだろう」
「碇の元に導かれた?」

 リュシカが頷いた。

「しかしユラが死者蘇生を唱えたのか」
「なんだよ、リュシカまで俺をへっぽこ僧侶って言うのかよ」
「へっぽこってなんかもう二つ名になってない?」
「へっぽこ言うな」
「仕方ないでしょ、二つ名っぽく聞こえたんだから」
「サツキって時折すっごい毒吐くよな」

 するとやり取りを聞いていたリュシカが、さも可笑しそうにクスクスと笑った。

「余計な話をしてしまったな。その二つ名が知りたかったのだな」

 するとユラが身を乗り出した。

「ちょっと待てよ、その碇のことをもっと詳しく」
「ユラ」

 一瞬の溜めの後、リュシカがユラを呼んだ。それは有無を言わせない声だった。

「……何だよ」
「これ以上言うと、私は彼女達の運命を舵取ることになる。だがそれは神の領域だ」
「何だよそれ」
「私が出来るのは、こういった道もあると選択肢を増やしてやることだけだ。他者の進むべき運命を方向付けるのは、やってはならないことなのだよ、ユラ」
「でも、だってその碇を見つけないと、サツキがやばいんだろ?」
「別に死ぬわけではなかろう。ただ元の世界に戻るだけだ」
「でも!」

 ユラが珍しく食い下がっている。うまく聞けないサツキの為に。こういうところは本当にいい人なんだけど。

 サツキがリュシカに尋ねた。

「リュシカさん、向こうの私……リアムは、生きているんですね?」
「それは間違いないだろう」
「そっか……」

 なら、いい。今はそれでいい。リアムの身体を奪って、死んだ身体に行ってもらった可能性もあった。いくらなんでもそれは自分で許せなくなりそうだったけど、向こうで元気ならそれでいい。

「なら、よかったです」

 サツキはにっこりと笑った。ユラはそれを見ると、口を尖らせたがもう何も言わなかった。

 サツキが続ける。

「じゃあ、二つ名の鑑定をお願い出来ますか?」
「任せなさい」

 リュシカが請け負うと、ユラが膨れたまま言った。

「リュシカはがめついからな、きちんと払わないとしょぼい二つ名を付けるぜ、きっと」
「ユラってば。あの、ちゃんとお支払いしますから」
「ははは」

 リュシカは笑うと、暫く見えない目でサツキを見つめる。そしておもむろに、言った。

「変化の魔術師。それがサツキ、貴方の二つ名だ」
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