ドラゴンに殺られそうになって(電車にはねられそうになって)気が付いたらOLになっていた(気が付いたら魔術師になっていた)件

ミドリ

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第二章 中級編開始

第357話 魔術師リアムの中級編五日目の夕飯前、リアムの語り中断

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 祐介が部屋の鍵を開け、中にリアムを通してくれた。

「続きは髪の毛を乾かしてからね」

 祐介はそう言うと、リアムを座椅子に座らせ自分は後ろに回り、ドライヤーで乾かし始めた。相変わらず気持ちいい。こればかりは止められないが、これもいずれは自分で出来る様にならなければなるまい。

 だが、今日はもうそのことを考えるのはやめだ。祐介は、今日はリアムを甘やかす日だと宣言していた。ならば祐介の望み通り、リアムは目一杯その状況を楽しんでこそ、祐介の期待に応えられるというものであろう。

 肩の力を抜いた。首に当たるドライヤーの温かい風が、少し冷えてしまった身体に心地いい。

「はあー、やはりこれはいい……」
「もうずっと一生やってあげるよ」
「ん? 何か言ったか?」
「いや何でもありません」
「何か聞こえた気がしたが」
「ドライヤーの音でしょ」

 手櫛てぐしで整え、最後はいつもの冷風だ。そしてブラシで丁寧に梳かし、完成である。

「はい、出来上がり」
「おお、ありがとう祐介」

 リアムがそう言って今度は祐介のを乾かすべく立ち上がろうとすると、祐介が背後から抱き締めてきた。くんくん、と頭の匂いを嗅ぎ始めた。これまでだったら、過度な接触につい気恥ずかしくなり何とか早く抜け出したいと思っていたものだが、リアムは先程自分の気持ちに気付いたばかりである。従って、気恥ずかしいのに代わりはないが、まあこのままいても悪くはない。

 それに、今日は甘える日なのだ。細かいことは考えるな、リアム!

 リアムは自分に言い聞かせた。

 それにしても、とふと疑問に思った。

「シャンプーは違う物だが、そんなにいい匂いか?」

 くんくん、と自分の髪を掴んで嗅いで見るが、家で使用しているシャンプーほどいい匂いはしない。

「……たまには違う匂いもいいかなって」
「成程。私にはよく分からんが」
「後でさ、僕の頭の匂い嗅いでみたら?」
「いいのか?」
「いいよ。その代わり同じ様にこうしてね」
「え……」

 祐介がリアムから離れると、上から覗き込んでにっこりと笑った。

「僕のことも甘やかしてくれるんでしょ?」
「あ、ああ、そうだが、これが甘やかすことにどう繋がるのか……」
「繋がるから。ほら、じゃあ交代ね」

 祐介はそう言うと、リアムにドライヤーを渡した。場所を交代し、いよいよドライヤー開始である。

「よし……! やるぞ!」
「あんまり気合い入れないで、怖いから」
「す、済まぬ。とりあえず巻き込まぬ様にするから」
「振る様にするといいよ」
「承知した!」
「怖いなあ……」

 リアムはドライヤーのスイッチを入れた。ブオオ、と温風が吹き出し、祐介の髪の毛を舞い上がらせる。祐介の髪を触ってみた。サツキの髪は細い。それよりも大分太い髪の毛で、癖のないさらさらな髪だ。

 濡れた髪に指を通していく。すると、祐介がぶるぶるっと震えた。リアムは思わず笑った。

「な? 気持ちいいだろう?」
「本当だ。癖になりそう」
「毎日やってやろうか?」
「腕前を見てから」
「よし、見ておれ!」
「その気合いが怖いんだよな……」

 リアムは祐介の髪を乾かすことに集中したのだった。
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