ドラゴンに殺られそうになって(電車にはねられそうになって)気が付いたらOLになっていた(気が付いたら魔術師になっていた)件

ミドリ

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第三章 上級編開始

第375話 魔術師リアムの上級編初日、おはようのキス

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 祐介にしがみつき泣いている内に、また寝てしまったらしい。

 目の前には、祐介の浴衣がはだけた胸。腕枕とぐるっと回された腕。

 世界で一番安心出来る場所だ。

 リアムは寝起きでぼんやりとした頭で考える。あれだけ祐介には別の未来があると分かっていても、それでも何とか祐介の横にいれないかと願う自分がいる。浅ましく、図々しい願いだ。

 そして思う。祐介は親切だから、優しい人間だから、こうしてリアムの面倒を見てくれているのだ。リアムが早く独り立ち出来るよう、こうして男と触れ合うのも慣れるようにと立ち回ってくれているに過ぎない。

 でも。

 でももし、祐介がリアムの名を呼んでくれる日が別れの時よりも前に来たのなら、その時は言ってしまおうか。

 好きだと。この先もずっと一緒にいたいと。

 祐介を見上げる。すかー、すかー、とよく寝ている。

「こんなに近くにいるのにな……」

 思わず口をついて出た。

 ただ、この先職場も同じ、家も隣では離れられまい。せめて住居を移転でもせねば、いずれ出来る祐介の恋人と祐介の笑い声が、あの薄い壁を通して聞こえてきてしまうに違いない。

 やはり無理だ。物理的に離れなければ、リアムは耐えられそうにない。

 そこまで思うと、また涙が出てきた。一体この身体はどうしたというのか。リアムの考えが嫌な方へとばかり向いてしまうのも、昨日からの体調の変化にある程度関係がありそうだった。

 これが治れば、祐介との別ればかり考えてしまうこの状態から抜け出せるのではないか。リアムはそう分析をした。

 涙を手で拭い、回された祐介の腕を取って祐介の拘束から抜け出す。起き上がると、時計を見た。六時半。もう大浴場は開いている時間だ。

 寝ている祐介に何も言わず出て行くと、先程の様に心配されてしまう。これはどうも毎日羽田を警戒していた所為かと思われた。もう習慣になってしまったのだろう。祐介には心労ばかりかける。

「祐介、起きてくれ。風呂に行こう」

 祐介の頬に軽く触れる。ピクリともしない。リアムはそのまま、祐介の前髪を指でかき上げ、暖かい頭皮に触れた。途端、愛おしさが溢れてきた。

 そのまま、おでこに口を触れた。おやすみのキスは昨夜も結局してやれなかった。その代わりの意味で。

 顔を離すと、祐介がキョトンとした顔でリアムを見ていた。何て顔をしているんだ。リアムは微笑むと、祐介に言った。

「おはよう祐介。よく寝れたか?」
「サツキちゃん、今おでこに……」
「嫌だったか?」
「嫌じゃない! 全然嫌じゃない!」

 祐介がガバッと起き上がった。

「でも」

 上目遣いでリアムを見る。

「……起きてる時の方がいいな、なんて」

 照れ臭そうに言う祐介があまりにも可愛らしくて、リアムは破顔した。膝立ちをし、祐介の頭を持つ。

「仕方のないやつだ。おはよう、祐介」

 リアムはそう言うと、もう一度おでこにキスをした。すると、祐介がリアムの腰にぎゅっと抱きつき、胸に顔をうずめ言った。

「あー、幸せ」
「祐介、胸に触れているぞ」
「あー、うん」
「うん、と言われても。祐介?」
「噛み締めてるからちょっと待って」

 祐介も少しおかしくなってるのではないか。

 温泉には恐るべし効果があるのかもしれぬ。謎に思うリアムであった。
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