410 / 731
第三章 上級編開始
第408話 OLサツキの上級編、フレイのダンジョンの奥へ
しおりを挟む
ユラはよく分からない。怒ったかと思うと笑う。だけどこれだけは分かる。ユラがサツキに怒っている訳ではないことは。
相変わらず肩を掴んでぐいぐいと奥へと進んでいるが、先程現れたファイヤーゴースト以降、今のところ敵は現れていない。後ろを振り返ると、アールとウルスラがちゃんと付いてきていた。でも、あちらは会話はなさそうだ。
「ファイヤーゴーストって、このダンジョンだと弱い方なの?」
「いや、前は違った」
え? とサツキが見上げると、ユラの顔から笑顔が消えていた。時折見せるユラの真剣な顔は、つい目を奪われてしまうのだ。すると、視線に気付いたユラがサツキを見下ろし、にやっと笑った。うん、まあこれはこれで好きではある。
「見惚れてた?」
「見惚れてない」
「嘘つけ」
「本当だよ。で、前は違ったってどういうこと?」
「それなんだよ」
ユラが語り出した。
「ダンジョンの入り口で俺とアールが言ってたろ? 前はこんなに暑くなかったって」
「言ってたね」
「暑くなるってことは、地下にある熱が上がってきてるってことだろ?」
「そうだね」
溶岩がせり上がってきてるということだろうか。そんな所に入り込んで、本当に大丈夫なんだろうか。
「ダンジョン内部が暑くなると、当然火に強くないモンスターは淘汰されて消えていくだろ?」
「ダーウィンだね」
「は?」
「何でもないです。続きをお願い」
ダーウィンが唱えた自然淘汰説はこの世界でも有効な様だった。弱ければ死ぬか、死なない為に集う。サツキはサイエンス系番組もそれなりに好きだった。
「で、火に強いモンスターがどんどん幅を利かせてくる。ついでに熱を食って強くなる。すると、弱い奴が上に上がってきて、強い奴が下に降りていく」
「弱肉強食の世界なんだね……」
「だな。だから、今さっき会った奴はこのダンジョンでは最弱ってことだ」
「あれで?」
ユラは頷く。
「まあ魔術師がいれば楽勝だからな。火種の採取があったからちょっと手こずっただけだ」
「てことは、魔力の温存が出来ないんじゃない?」
「そうなんだよ」
ユラが考え込む風に眉間に皺を寄せる。そろそろ肩の手も離してもらいたい。
「ということは、サツキが魔力を使い切る前に俺が魔力回復を行わないといけないってことだ」
「ユラの魔力だって必要なんじゃないの?」
「そう。出来れば温存したい。てことで出てくるのがこれだ」
ユラはそう言うと、ズボンのポケットから魔石を取り出した。
「こいつは魔力増強の効果があるから、初級魔法でもかなり効果が出るんじゃないかと思うんだ」
「うん?」
「だからこれはサツキが持て」
「え?」
ユラが、サツキの手に魔石を握らせた。その表情は真剣そのもので、サツキは素直に頷くしか出来なかった。
「なるべく初級魔法だ。俺が指示する。この石もどれだけもつか分からねえからな」
「……分かった」
リアムの魔力量は多い。初級魔法ならバンバン使っても問題はない。そしてふと思った。
「さっきね、怒ってすごい集中したら効果が強かった気がしたんだ」
「当然だ」
ユラが言った。
「で、それって俺の為に怒ってたのか?」
顔が完全に笑っていた。
相変わらず肩を掴んでぐいぐいと奥へと進んでいるが、先程現れたファイヤーゴースト以降、今のところ敵は現れていない。後ろを振り返ると、アールとウルスラがちゃんと付いてきていた。でも、あちらは会話はなさそうだ。
「ファイヤーゴーストって、このダンジョンだと弱い方なの?」
「いや、前は違った」
え? とサツキが見上げると、ユラの顔から笑顔が消えていた。時折見せるユラの真剣な顔は、つい目を奪われてしまうのだ。すると、視線に気付いたユラがサツキを見下ろし、にやっと笑った。うん、まあこれはこれで好きではある。
「見惚れてた?」
「見惚れてない」
「嘘つけ」
「本当だよ。で、前は違ったってどういうこと?」
「それなんだよ」
ユラが語り出した。
「ダンジョンの入り口で俺とアールが言ってたろ? 前はこんなに暑くなかったって」
「言ってたね」
「暑くなるってことは、地下にある熱が上がってきてるってことだろ?」
「そうだね」
溶岩がせり上がってきてるということだろうか。そんな所に入り込んで、本当に大丈夫なんだろうか。
「ダンジョン内部が暑くなると、当然火に強くないモンスターは淘汰されて消えていくだろ?」
「ダーウィンだね」
「は?」
「何でもないです。続きをお願い」
ダーウィンが唱えた自然淘汰説はこの世界でも有効な様だった。弱ければ死ぬか、死なない為に集う。サツキはサイエンス系番組もそれなりに好きだった。
「で、火に強いモンスターがどんどん幅を利かせてくる。ついでに熱を食って強くなる。すると、弱い奴が上に上がってきて、強い奴が下に降りていく」
「弱肉強食の世界なんだね……」
「だな。だから、今さっき会った奴はこのダンジョンでは最弱ってことだ」
「あれで?」
ユラは頷く。
「まあ魔術師がいれば楽勝だからな。火種の採取があったからちょっと手こずっただけだ」
「てことは、魔力の温存が出来ないんじゃない?」
「そうなんだよ」
ユラが考え込む風に眉間に皺を寄せる。そろそろ肩の手も離してもらいたい。
「ということは、サツキが魔力を使い切る前に俺が魔力回復を行わないといけないってことだ」
「ユラの魔力だって必要なんじゃないの?」
「そう。出来れば温存したい。てことで出てくるのがこれだ」
ユラはそう言うと、ズボンのポケットから魔石を取り出した。
「こいつは魔力増強の効果があるから、初級魔法でもかなり効果が出るんじゃないかと思うんだ」
「うん?」
「だからこれはサツキが持て」
「え?」
ユラが、サツキの手に魔石を握らせた。その表情は真剣そのもので、サツキは素直に頷くしか出来なかった。
「なるべく初級魔法だ。俺が指示する。この石もどれだけもつか分からねえからな」
「……分かった」
リアムの魔力量は多い。初級魔法ならバンバン使っても問題はない。そしてふと思った。
「さっきね、怒ってすごい集中したら効果が強かった気がしたんだ」
「当然だ」
ユラが言った。
「で、それって俺の為に怒ってたのか?」
顔が完全に笑っていた。
0
あなたにおすすめの小説
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~
みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった!
無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。
追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
魔眼の剣士、少女を育てる為冒険者を辞めるも暴れてバズり散らかした挙句少女の高校入学で号泣する~30代剣士は世界に1人のトリプルジョブに至る~
ぐうのすけ
ファンタジー
赤目達也(アカメタツヤ)は少女を育てる為に冒険者を辞めた。
そして時が流れ少女が高校の寮に住む事になり冒険者に復帰した。
30代になった達也は更なる力を手に入れておりバズり散らかす。
カクヨムで先行投稿中
タイトル名が少し違います。
魔眼の剣士、少女を育てる為冒険者を辞めるも暴れてバズり散らかした挙句少女の高校入学で号泣する~30代剣士は黒魔法と白魔法を覚え世界にただ1人のトリプルジョブに至る~
https://kakuyomu.jp/works/16818093076031328255
『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』
チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。
その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。
「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」
そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!?
のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる