ドラゴンに殺られそうになって(電車にはねられそうになって)気が付いたらOLになっていた(気が付いたら魔術師になっていた)件

ミドリ

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第三章 上級編開始

第408話 OLサツキの上級編、フレイのダンジョンの奥へ

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 ユラはよく分からない。怒ったかと思うと笑う。だけどこれだけは分かる。ユラがサツキに怒っている訳ではないことは。

 相変わらず肩を掴んでぐいぐいと奥へと進んでいるが、先程現れたファイヤーゴースト以降、今のところ敵は現れていない。後ろを振り返ると、アールとウルスラがちゃんと付いてきていた。でも、あちらは会話はなさそうだ。

「ファイヤーゴーストって、このダンジョンだと弱い方なの?」
「いや、前は違った」

 え? とサツキが見上げると、ユラの顔から笑顔が消えていた。時折見せるユラの真剣な顔は、つい目を奪われてしまうのだ。すると、視線に気付いたユラがサツキを見下ろし、にやっと笑った。うん、まあこれはこれで好きではある。

「見惚れてた?」
「見惚れてない」
「嘘つけ」
「本当だよ。で、前は違ったってどういうこと?」
「それなんだよ」

 ユラが語り出した。

「ダンジョンの入り口で俺とアールが言ってたろ? 前はこんなに暑くなかったって」
「言ってたね」
「暑くなるってことは、地下にある熱が上がってきてるってことだろ?」
「そうだね」

 溶岩がせり上がってきてるということだろうか。そんな所に入り込んで、本当に大丈夫なんだろうか。

「ダンジョン内部が暑くなると、当然火に強くないモンスターは淘汰されて消えていくだろ?」
「ダーウィンだね」
「は?」
「何でもないです。続きをお願い」

 ダーウィンが唱えた自然淘汰説はこの世界でも有効な様だった。弱ければ死ぬか、死なない為に集う。サツキはサイエンス系番組もそれなりに好きだった。

「で、火に強いモンスターがどんどん幅を利かせてくる。ついでに熱を食って強くなる。すると、弱い奴が上に上がってきて、強い奴が下に降りていく」
「弱肉強食の世界なんだね……」
「だな。だから、今さっき会った奴はこのダンジョンでは最弱ってことだ」
「あれで?」

 ユラは頷く。

「まあ魔術師がいれば楽勝だからな。火種の採取があったからちょっと手こずっただけだ」
「てことは、魔力の温存が出来ないんじゃない?」
「そうなんだよ」

 ユラが考え込む風に眉間に皺を寄せる。そろそろ肩の手も離してもらいたい。

「ということは、サツキが魔力を使い切る前に俺が魔力回復を行わないといけないってことだ」
「ユラの魔力だって必要なんじゃないの?」
「そう。出来れば温存したい。てことで出てくるのがこれだ」

 ユラはそう言うと、ズボンのポケットから魔石を取り出した。

「こいつは魔力増強の効果があるから、初級魔法でもかなり効果が出るんじゃないかと思うんだ」
「うん?」
「だからこれはサツキが持て」
「え?」

 ユラが、サツキの手に魔石を握らせた。その表情は真剣そのもので、サツキは素直に頷くしか出来なかった。

「なるべく初級魔法だ。俺が指示する。この石もどれだけもつか分からねえからな」
「……分かった」

 リアムの魔力量は多い。初級魔法ならバンバン使っても問題はない。そしてふと思った。

「さっきね、怒ってすごい集中したら効果が強かった気がしたんだ」
「当然だ」

 ユラが言った。

「で、それって俺の為に怒ってたのか?」

 顔が完全に笑っていた。
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