ドラゴンに殺られそうになって(電車にはねられそうになって)気が付いたらOLになっていた(気が付いたら魔術師になっていた)件

ミドリ

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第三章 上級編開始

第415話 魔術師リアムの上級編初日の就寝へ

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 その夜、リアムと祐介は、互いの部屋で風呂に入り寝支度を済ませることにした。

 羽田がいないかと心配になり、祐介が自宅に入り鍵を閉めるまではリアムは風呂に入ることすら出来なかった。祐介がガタガタと部屋で何かをしている音が聞こえて初めて、ほっと息をついた自分に気が付くと、離れたくなかったのは自分の方だと認識させられた。

 シャワ―を浴びると、バスタブの床は真っ赤に染まった。先程祐介から聞いた話だと、どうやらリアムの昨日から始まった症状は生理前症候群というものらしく、身体の中で身体をコントロールしているホルモンなるものが影響し、様々な不調を引き起こすそうだ。女性の身体の仕組みというものも、これから知っていくことでこういった突発的な出来事を避けることが出来るのかもしれぬ。しかしどこで調べればいいのかが分からないので、後程祐介に尋ねてみようと思った。

 そしてこの血の量は、二日目が一番多いことが多々あるらしい。個人差はあるものの、期間は数日に渡るとのことなので、今週はこれとうまく付き合っていかねばならないのだろう。それを思うと憂鬱だったが、世の女性はこれを何気ない顔をして乗り越えているのだから天晴のひと言である。そうと気付けば、今までの自分の生活がいかに気楽なものであったか。

 リアムは洗い終わるときちんと風呂場を片し、頭にタオルを巻いて祐介を待った。その間、テレビを点けて寂しさを紛らわすことにした。テレビでは、世界の土地を訪れる番組をやっていた。リアムはそれをぼうっと眺めるが、内容が頭に入ってこない。

 テーブルの上に置きっぱなしのガラケーが目に入った。電話をしてみようか。いつでもしていいと、祐介は言っていたではないか。

 リアムはガラケーに手を伸ばすと、履歴の一番最初にある祐介の番号を出し、電話を掛けた。いつもは早い祐介なので、何か問題でも起きたのだろうかと不安になった。

 暫く耳元で呼び鈴が鳴る。そして壁の向こうからも微かに音が聞こえた。やはり安定の壁の薄さである。と、ガタタ、と音がした。と、祐介が電話にでた。

『サツキちゃん、ごめん、待ってた?』

 何だか祐介の息が粗いが、どうしたのだろうか。

「大丈夫か? 具合が悪いのなら何とか自分でドライヤーに挑戦してみるが」
『あ、いや、具合は全然悪くない、あは、あはは』
「本当か? 様子がおかしいぞ」
『え、いや、その』
「はっきり言え」

 すると、電話の向こうの祐介が黙った。やはり少し息が粗い。腹でも痛いのだろうか。

『あのー、その、くっついて寝るから、変な気が起きない様にちょっと』
「……」

 リアムは理解した。そして聞いたことを後悔した。

「済まぬ、生生しいことを言わせてしまったな」
『謝られるとすっごい気不味いからそこは流して』
「では、気が落ち着いたら来ればいいぞ」
『終わったんですぐ行きます』
「……分かった」
『待っててね』

 そう言うと、祐介は電話を切った。まあ、若い男性だ。勿論そういったこともあるであろうことは予想は出来ていたが、祐介には申し訳ないことをした。

「……ブリーザラー」

 リアムは、自分の顔の火照りを取る為に、涼しくなる呪文を唱えたのだった。
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