417 / 731
第三章 上級編開始
第415話 魔術師リアムの上級編初日の就寝へ
しおりを挟む
その夜、リアムと祐介は、互いの部屋で風呂に入り寝支度を済ませることにした。
羽田がいないかと心配になり、祐介が自宅に入り鍵を閉めるまではリアムは風呂に入ることすら出来なかった。祐介がガタガタと部屋で何かをしている音が聞こえて初めて、ほっと息をついた自分に気が付くと、離れたくなかったのは自分の方だと認識させられた。
シャワ―を浴びると、バスタブの床は真っ赤に染まった。先程祐介から聞いた話だと、どうやらリアムの昨日から始まった症状は生理前症候群というものらしく、身体の中で身体をコントロールしているホルモンなるものが影響し、様々な不調を引き起こすそうだ。女性の身体の仕組みというものも、これから知っていくことでこういった突発的な出来事を避けることが出来るのかもしれぬ。しかしどこで調べればいいのかが分からないので、後程祐介に尋ねてみようと思った。
そしてこの血の量は、二日目が一番多いことが多々あるらしい。個人差はあるものの、期間は数日に渡るとのことなので、今週はこれとうまく付き合っていかねばならないのだろう。それを思うと憂鬱だったが、世の女性はこれを何気ない顔をして乗り越えているのだから天晴のひと言である。そうと気付けば、今までの自分の生活がいかに気楽なものであったか。
リアムは洗い終わるときちんと風呂場を片し、頭にタオルを巻いて祐介を待った。その間、テレビを点けて寂しさを紛らわすことにした。テレビでは、世界の土地を訪れる番組をやっていた。リアムはそれをぼうっと眺めるが、内容が頭に入ってこない。
テーブルの上に置きっぱなしのガラケーが目に入った。電話をしてみようか。いつでもしていいと、祐介は言っていたではないか。
リアムはガラケーに手を伸ばすと、履歴の一番最初にある祐介の番号を出し、電話を掛けた。いつもは早い祐介なので、何か問題でも起きたのだろうかと不安になった。
暫く耳元で呼び鈴が鳴る。そして壁の向こうからも微かに音が聞こえた。やはり安定の壁の薄さである。と、ガタタ、と音がした。と、祐介が電話にでた。
『サツキちゃん、ごめん、待ってた?』
何だか祐介の息が粗いが、どうしたのだろうか。
「大丈夫か? 具合が悪いのなら何とか自分でドライヤーに挑戦してみるが」
『あ、いや、具合は全然悪くない、あは、あはは』
「本当か? 様子がおかしいぞ」
『え、いや、その』
「はっきり言え」
すると、電話の向こうの祐介が黙った。やはり少し息が粗い。腹でも痛いのだろうか。
『あのー、その、くっついて寝るから、変な気が起きない様にちょっと』
「……」
リアムは理解した。そして聞いたことを後悔した。
「済まぬ、生生しいことを言わせてしまったな」
『謝られるとすっごい気不味いからそこは流して』
「では、気が落ち着いたら来ればいいぞ」
『終わったんですぐ行きます』
「……分かった」
『待っててね』
そう言うと、祐介は電話を切った。まあ、若い男性だ。勿論そういったこともあるであろうことは予想は出来ていたが、祐介には申し訳ないことをした。
「……ブリーザラー」
リアムは、自分の顔の火照りを取る為に、涼しくなる呪文を唱えたのだった。
羽田がいないかと心配になり、祐介が自宅に入り鍵を閉めるまではリアムは風呂に入ることすら出来なかった。祐介がガタガタと部屋で何かをしている音が聞こえて初めて、ほっと息をついた自分に気が付くと、離れたくなかったのは自分の方だと認識させられた。
シャワ―を浴びると、バスタブの床は真っ赤に染まった。先程祐介から聞いた話だと、どうやらリアムの昨日から始まった症状は生理前症候群というものらしく、身体の中で身体をコントロールしているホルモンなるものが影響し、様々な不調を引き起こすそうだ。女性の身体の仕組みというものも、これから知っていくことでこういった突発的な出来事を避けることが出来るのかもしれぬ。しかしどこで調べればいいのかが分からないので、後程祐介に尋ねてみようと思った。
そしてこの血の量は、二日目が一番多いことが多々あるらしい。個人差はあるものの、期間は数日に渡るとのことなので、今週はこれとうまく付き合っていかねばならないのだろう。それを思うと憂鬱だったが、世の女性はこれを何気ない顔をして乗り越えているのだから天晴のひと言である。そうと気付けば、今までの自分の生活がいかに気楽なものであったか。
リアムは洗い終わるときちんと風呂場を片し、頭にタオルを巻いて祐介を待った。その間、テレビを点けて寂しさを紛らわすことにした。テレビでは、世界の土地を訪れる番組をやっていた。リアムはそれをぼうっと眺めるが、内容が頭に入ってこない。
テーブルの上に置きっぱなしのガラケーが目に入った。電話をしてみようか。いつでもしていいと、祐介は言っていたではないか。
リアムはガラケーに手を伸ばすと、履歴の一番最初にある祐介の番号を出し、電話を掛けた。いつもは早い祐介なので、何か問題でも起きたのだろうかと不安になった。
暫く耳元で呼び鈴が鳴る。そして壁の向こうからも微かに音が聞こえた。やはり安定の壁の薄さである。と、ガタタ、と音がした。と、祐介が電話にでた。
『サツキちゃん、ごめん、待ってた?』
何だか祐介の息が粗いが、どうしたのだろうか。
「大丈夫か? 具合が悪いのなら何とか自分でドライヤーに挑戦してみるが」
『あ、いや、具合は全然悪くない、あは、あはは』
「本当か? 様子がおかしいぞ」
『え、いや、その』
「はっきり言え」
すると、電話の向こうの祐介が黙った。やはり少し息が粗い。腹でも痛いのだろうか。
『あのー、その、くっついて寝るから、変な気が起きない様にちょっと』
「……」
リアムは理解した。そして聞いたことを後悔した。
「済まぬ、生生しいことを言わせてしまったな」
『謝られるとすっごい気不味いからそこは流して』
「では、気が落ち着いたら来ればいいぞ」
『終わったんですぐ行きます』
「……分かった」
『待っててね』
そう言うと、祐介は電話を切った。まあ、若い男性だ。勿論そういったこともあるであろうことは予想は出来ていたが、祐介には申し訳ないことをした。
「……ブリーザラー」
リアムは、自分の顔の火照りを取る為に、涼しくなる呪文を唱えたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
闇の王と菫青石の宝珠〜侯爵令嬢ですが、失踪した兄を捜すついでにイケメンだらけの騎士団に潜入して、魔物討伐も行って参りますっ!〜
藤原 清蓮
ファンタジー
ここは、魔法や精霊が存在している世界。ガブレリア王国。
ある日、魔物討伐を専門とする騎士団所属の兄・アレックスが失踪した。その失踪には、800年前に起きた隣国の魔女との争いが関係していた。それを知った双子の妹・アリスは、兄の行方を探すため、双子の友達である神獣と共に、男装して騎士団に潜入する――
壮大な王道ファンタジー、開幕!!
毎日18時頃に公開予定!
※本作品は、一人称ですが、主人公だけでなく、サブキャラ目線もあるため、苦手な方はご了承ください。
タイトルに(side〜)と書いてあるものは、そのキャラクター視点で、無記名の場合は主人公・アリス視点となります。
※ゆるふわ設定です。生暖かく見守って頂けると幸いです。
※カクヨムにて2023年4月に公開スタートし、完結済み。1万PV突破作品!
※表紙絵は、Xの企画にて常葉㮈枯様に描いていただいた、主人公アリスとアレックスのミニチュア画です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる