ドラゴンに殺られそうになって(電車にはねられそうになって)気が付いたらOLになっていた(気が付いたら魔術師になっていた)件

ミドリ

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第三章 上級編開始

第424話 OLサツキの上級編、フレイのダンジョンのエレ・イリカ・ヴェール

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 一行は、時折ユラの地図を確認しつつ、ダンジョンの奥へと進んで行った。フレイのダンジョンはルーンのダンジョン程広くはないが、足場が悪く視界も悪く、なかなか移動は大変だった。

 そして、行けども行けども出てくるのはファイヤースパイダーの子供ばかり。地下九階へと続く階段の前まで辿り着いた時、サツキの魔力はほぼ尽きかけており、そして太陽の石は二つ目の瓶もそろそろ埋まりそうな量になっていた。

「サツキ、回復するぞ」
「うん」

 ウルスラとアールは階段に座って休憩している。それをユラはチラッと見ると、ボソリと言った。

「一回じゃ完全回復出来ないかもなあ」
「前は出来てなかった?」
「何か、サツキの魔力量が増えてきてるかもしれない」
「そんなことあるの?」

 ユラは頷く。

「普段リアムが使ってなかった呪文を唱える機会が増えてるし、二つ名ももらったから、そのあたりに関係あるかもしれないぜ」

 普段使ってなかった呪文。イルミナとメタモラだ。確かにバンバン使っている。成程、そういうこともあるのかもしれない。

 ユラがチラチラと階段の二人をやけに気にしている。

「なに、どうしたの」
「いや、回復系ってさ、離れた所からするよりも直接触れた方が効果が上がるんだよ」
「そうなんだ?」
「そうなんだよ。だから実は、真っ黒こげのリアムにはちょっと気持ち悪かったけどキスしまくって」
「え?」

 黒焦げの死体にキスをするとは、なかなかなハードモードだ。サツキだったら、いくらそれが知り合いだからって無理かもしれない。そう考えると、ユラの責任感というのは果てしなく強いものなのかもしれなかった。

「ユラ、今一気に尊敬度が上がった」
「今まで低かったのか?」
「否めない」
「……まあ上がったのならいいか。で、だな」
「うん」

 そうだ、その話じゃなかった。

「つまり、キスをすれば回復量が上がる」
「……はい」
「だけど、ここには煩いあいつらがいる」

 ユラが本当に煩そうに二人を見た。仲間じゃないの、という言葉が出かかったが、止めた。

「だから、ちょっと影に来い」
「え」

 ユラはそこまで言うと、ウルスラとアールに「ちょっと用足し行ってくる!」とひと言残すと、サツキの腕を引っ張ってズルズルと奥の少し暗い一角へ連れて行った。そしてサツキを壁際に押し付けると、身体を押し付け逃げ出せない様にしてしまった。横にラムがくっついて来ているが、ユラは基本無視だ。

「いいか、逃げるなよ」
「う……うん」

 ユラがサツキの顎を持つと、顔を近付けた。

「エレ・イリカ・ヴェール……」

 最後の言葉と共に、ユラの唇がサツキの唇に触れ、そして身体の中に魔力がどんどん流れ込み始めた。おおおお、確かに前に手を繋いで回復してもらった時よりも、勢いが凄い! ほぼ空になっていた魔力が満ちてくるのが分かるのだ。完全回復するまではずっとキスをしっ放しなので長いは長いが、サツキが今はリアムだからかいつもの様に激しいキスはしては来ない。

 やがて魔力が満ちたのが分かった。だがユラはまだ離さない。教えた方がいいのかもしれない。とんとん、と肩を叩いたが、ユラは一瞬目を開けた後また閉じてしまった。

 そして、サツキの首にユラの腕が回された。
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