ドラゴンに殺られそうになって(電車にはねられそうになって)気が付いたらOLになっていた(気が付いたら魔術師になっていた)件

ミドリ

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第三章 上級編開始

第550話 OLサツキの上級編、フレイのダンジョン地下二十階の朝

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 深夜に一人恥ずかしさでのたうち回りたい気分に陥っていたサツキだったが、顔を冷水で洗い流すと少し興奮も冷めやり、再びベッドへと戻った。目を瞑ると、また先程の考えが頭をぐるぐると駆け回ったが、だからといって今更サツキがどうすることも出来ないのも明白だ。

 もしリアムと山岸祐介が付き合ったりしたら、サツキの身体のリアムを山岸祐介は抱くんだよね! と思ってしまいまたベッドの上でゴロゴロと転がり回りたい気分になったが、もうあれは前のサツキの身体だ。戻るつもりがない以上、あれはリアムの物だし、こっちはこっちで散々リアム本体の時でもユラとキスしまくっているから向こうのことなんて何も言えない。

 いや、でもリアムは男だ。でもウルスラが相当頑張っていたのになびかなかったことを考えると、奥手なのか、それとも男が好きなのか。こちらの世界は同性間の恋愛も自由な様だし。ユラもアールもそれについては何も言っていなかったので、単にあまり他人に興味がない人だったのかもしれないし、それか、強い信念を持っていそうな人なので、異性に対しても強い拘りがあったとか。

 サツキは、面白くなってつい「ふふ」と笑ってしまった。元の世界のことではあるけど、これはリアムのことであってサツキのことではない。引っ込み思案だったサツキが、ある日突然意思の強いリアムに変わる。周りの反応はさぞや見ものだっただろう。あの早川ユメあたりなんて、いつもサツキを馬鹿にしてたから、そんなサツキなリアムが山岸祐介と仲睦まじく過ごしているところなんて見たら、物凄い顔をしそうだ。

 多分あの羽田にだって、お局の木佐にだって、ガツンとやったに違いない。

「……ちょっと見たかったなあ」

 自分には出来ないことをやっている自分の姿を想像するのは、楽しかった。

 逆に向こうはサツキがリアムの身体にいることはどう思っているんだろうか。多分、裸を見てキャーキャー言ってたことなんて思ってもみないのだろうな、と何となく思った。

 そんなことを考えている内に、やがてゆっくりと睡魔がやって来た。

 夢の中では、サツキとリアムがこれまであったことを楽しくお喋りして、それをユラと山岸祐介が見守っていた。話の内容はあやふやだったけど、変わってよかったね、と互いにそう言い合った場面だけは、朝起きた後も鮮明に目の裏に残っていた。



「サツキ? お風呂に行かない?」

 サツキが物音に目を覚ましてベッドの外に這いずり出ると、ウルスラが伸びをしながら声を掛けてきた。

「あ、私、今朝はちょっといいや」

 出来るだけさり気なく断ったつもりだったが、怪しまれなかっただろうか。

「えー。折角背中を流してあげようと思ったのにい!」
「うーん、お腹空いちゃったから、早く朝ご飯を捕りに行きたくて」
「うふ、なんか可愛らしい理由だから仕方ないか」
「ごめんね」

 ふう、怪しまれなかった様だ。まさかキスマークが付いているからだなんて言えやしない。

 すると、風呂の支度をしていたウルスラが「あ」と言って振り返った。

「ちゃんとユラを連れて行くのよ? 勝手に一人で行っちゃ駄目だからね」
「あはは、分かりました。じゃあユラを起こそうかな」
「本当よく寝るわよねーあいつ」
「ふふ、本当だね」

 ウルスラが風呂へと行ってしまうと、サツキはまだ寝ているユラとアールのベッドからはみ出している足を見た。ユラの色白の足があるベッドの入り口に腰掛けると、サツキは中を覗き込んだ。
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