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第四章 アルティメット編開始
第601話 魔術師リアムのアルティメット編・正体をばらした後の夜道
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早川ユメと友になった日の夜は、社宅がある駅まで早川ユメを送って行き、そこで別れた。
今、リアムと祐介は相変わらず手を繋ぎながら家路についている。
「しかし早川さんは非常に勘のいい女性だな」
「そうかもね。あれだけ表裏が全然違って僕は正直驚いたけど、サツキちゃんは驚かなかったの?」
祐介は、リアムが早川ユメに対しリアムと呼ぶように頼んだところをしっかり聞いていただろうに、こうして変わらずリアムのことをサツキと呼ぶ。これは一体どういう意味なのか。ここまで徹底していると、何か考えがあってやっているとしか思えぬ。でも聞く勇気はない。ええい、これは後回しだ。最後にはっきりさせる内容だ。優先順位を決めたではないか。悩むなリアム、しゃっきりとしろ!
リアムは自分を鼓舞した。
「驚きはしなかったぞ。というか、私は彼女の表の顔は知らぬからな」
初めてカフェで会った早川ユメは、すでに今の彼女だった。外階段での時も然り。一緒に昼食を取った時も然り。
「あ、そうか。ごめん、つい見た目がサツキちゃんだから思い違いしちゃった」
「構わぬ」
「ごめん」
「構わぬと言っておろうが」
「だってさ、気分よくないでしょ?」
祐介がリアムの顔を上から覗き込んできた。シャッターが閉まった商店街を上から照らす外灯の明かりが祐介の背後から祐介を照らすものだから、祐介の顔が暗くてよく見えない。
祐介の意図が、よく分からなかった。祐介は、中身がリアムであることはしっかりと分かっている。中身のリアムが男であることも、あっさりと早川ユメに認めていた。
そしてふと思い出した。あの時はいつものことだと思って特に気にもとめていなかったが、確か早川ユメに男と付き合ってるのか、という様なことを聞かれ、祐介は何と答えていたか。
別にいいでしょ、だ。
「え!?」
「え? 何を驚いてんの」
「いや待て、どういうことだ?」
「僕の話聞いてなかったでしょ」
「祐介、暫し待て」
「全くさ、本当いつも勝手なんだから……」
祐介はぶつくさ言いながらも、正面に向き直ってリアムを待ってくれることにした様だ。やはり素直な男である。
これは熟考が必要な案件である。つまり、早川ユメに対しても、祐介とリアムは付き合っている恋人同士である、と祐介は主張した訳だ。リアムの中身が男で、サツキとは別人だと言ったのにも関わらず。
「祐介?」
「なに?」
「私は祐介と、付き合っているのか?」
「またその質問?」
はは、と祐介が笑う。確かに以前も同じ質問をした。その時は、そういうつもりでやっていると言われたから、つもりなのだ、と思ったものだが。
「そういうつもりだけど」
また同じ答えが返ってきた。待て、つもり、という言葉の意味の認識が、もしかしたらリアムと祐介では違うのかもしれぬ。祐介はつもりなのだ。だが、リアムはそれをつい勘違いしてしまっている、そういうことなのか。
「祐介」
「なに?」
「言葉とは、難しいものだな」
「どうしたの急に」
「相手に誤解なく物事を伝えるのは難しいものなのだな、と実感したまでだ」
「ねえ」
祐介が手を引っ張るので、リアムは祐介を見上げた。
「今日はさ、僕の膝の上でドライヤーしようよ」
「は?」
「嫌?」
「いや、別に構わんが……」
「じゃあ約束ね」
唐突な祐介の提案に、リアムはただ首を傾げることしか出来なかった。
今、リアムと祐介は相変わらず手を繋ぎながら家路についている。
「しかし早川さんは非常に勘のいい女性だな」
「そうかもね。あれだけ表裏が全然違って僕は正直驚いたけど、サツキちゃんは驚かなかったの?」
祐介は、リアムが早川ユメに対しリアムと呼ぶように頼んだところをしっかり聞いていただろうに、こうして変わらずリアムのことをサツキと呼ぶ。これは一体どういう意味なのか。ここまで徹底していると、何か考えがあってやっているとしか思えぬ。でも聞く勇気はない。ええい、これは後回しだ。最後にはっきりさせる内容だ。優先順位を決めたではないか。悩むなリアム、しゃっきりとしろ!
リアムは自分を鼓舞した。
「驚きはしなかったぞ。というか、私は彼女の表の顔は知らぬからな」
初めてカフェで会った早川ユメは、すでに今の彼女だった。外階段での時も然り。一緒に昼食を取った時も然り。
「あ、そうか。ごめん、つい見た目がサツキちゃんだから思い違いしちゃった」
「構わぬ」
「ごめん」
「構わぬと言っておろうが」
「だってさ、気分よくないでしょ?」
祐介がリアムの顔を上から覗き込んできた。シャッターが閉まった商店街を上から照らす外灯の明かりが祐介の背後から祐介を照らすものだから、祐介の顔が暗くてよく見えない。
祐介の意図が、よく分からなかった。祐介は、中身がリアムであることはしっかりと分かっている。中身のリアムが男であることも、あっさりと早川ユメに認めていた。
そしてふと思い出した。あの時はいつものことだと思って特に気にもとめていなかったが、確か早川ユメに男と付き合ってるのか、という様なことを聞かれ、祐介は何と答えていたか。
別にいいでしょ、だ。
「え!?」
「え? 何を驚いてんの」
「いや待て、どういうことだ?」
「僕の話聞いてなかったでしょ」
「祐介、暫し待て」
「全くさ、本当いつも勝手なんだから……」
祐介はぶつくさ言いながらも、正面に向き直ってリアムを待ってくれることにした様だ。やはり素直な男である。
これは熟考が必要な案件である。つまり、早川ユメに対しても、祐介とリアムは付き合っている恋人同士である、と祐介は主張した訳だ。リアムの中身が男で、サツキとは別人だと言ったのにも関わらず。
「祐介?」
「なに?」
「私は祐介と、付き合っているのか?」
「またその質問?」
はは、と祐介が笑う。確かに以前も同じ質問をした。その時は、そういうつもりでやっていると言われたから、つもりなのだ、と思ったものだが。
「そういうつもりだけど」
また同じ答えが返ってきた。待て、つもり、という言葉の意味の認識が、もしかしたらリアムと祐介では違うのかもしれぬ。祐介はつもりなのだ。だが、リアムはそれをつい勘違いしてしまっている、そういうことなのか。
「祐介」
「なに?」
「言葉とは、難しいものだな」
「どうしたの急に」
「相手に誤解なく物事を伝えるのは難しいものなのだな、と実感したまでだ」
「ねえ」
祐介が手を引っ張るので、リアムは祐介を見上げた。
「今日はさ、僕の膝の上でドライヤーしようよ」
「は?」
「嫌?」
「いや、別に構わんが……」
「じゃあ約束ね」
唐突な祐介の提案に、リアムはただ首を傾げることしか出来なかった。
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