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第四章 アルティメット編開始
第617話 魔術師リアムのアルティメット編・病院初日のコーヒータイム
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リアムが二度寝から目が覚めると、なんと祐介がもう起きていた。珈琲のいい香りが漂っている。
台所で正に今珈琲を淹れていた部屋着のままの祐介が、音に気付いたのか振り返った。
「あ、おはようサツキちゃん」
「おはよう。いつ起きたのだ?」
「んー? さっき」
時計を見ると、時刻は八時。二時間程二度寝していた計算になる。
「祐介、目覚まし時計を付けていただろう」
「え? でも鳴ってないよね?」
「私が止めたぞ。祐介は私に起きるなと引き止めていたが」
記憶にないのだろう。祐介は微妙な表情を浮かべていた。
「……まあいい」
リアムはベッドから降りると、シーツと毛布をさっと畳み、ソファーの形に戻し、ソファーに腰掛けて祐介特製の珈琲を待つことにした。
暫くすると、祐介が湯気をなびかせた珈琲をテーブルの上に並べた。リアムの隣に腰掛けると、当たり前の様におでこにキスをした。え? とリアムは驚いて祐介を見上げた。祐介はおどけた表情をして笑った。
「これはおはようの挨拶ですから」
そして何かを言い始めた。
「よく寝ているサツキちゃんの為に、僕が美味しい珈琲を淹れました。僕はサツキちゃんにおはようの挨拶でキスをしました。さてサツキちゃんはどうするでしょうか」
「な、何だいきなり」
「これは問題です。さあ答えて下さい」
リアムは祐介を軽く睨みつけてみたが、駄目だ、笑ってしまった。リアムのそんな様子を見て、祐介もへへ、と笑うものだから、もう笑顔が抑えられなくなってしまった。これはリアムの完敗だ。
「ほら、少し屈め」
リアムがそう言うと、祐介は少し屈んでくれたので、リアムは祐介の前髪を手でどけると、そこに軽くキスをした。顔を離すと、祐介がじっとこちらを見ているではないか。またこの目だ。この目をされると、リアムは考えなど全て捨てて祐介を抱き締めて離したくなくなってしまうから止めて欲しいのだが、ここ最近祐介はちょくちょくこの目をしてリアムを見つめるのだ。
「珈琲を飲んでもいいか?」
無理やり口に出した。すると祐介はしゃきっと背中を伸ばし、にっこりと笑った。
「うん。結構上手に出来たと思うから味わってみて」
「また調べたのか? 祐介は研究熱心だな。魔術師に向いているかもしれんぞ」
リアムが珈琲を口に運びながら言うと、祐介は満更でもなさそうな表情をして言った。
「そうしたら二人で何の研究しようか?」
「そうだな。この世界の魔力に代わる物について是非とも研究をしたいものだが」
「あ、そういえば科学の博物館に行こうって話したもんね。明日あたり行こうか?」
出来たら行きたい。だが、出来る限り早く早川ユメの弟の目を覚ましてやりたかった。平日ではなかなか時間的に面会も難しい為、週末が勝負となる。
「すまない、祐介。祐介と行きたいのはやまやまなのだが、病院に行ってやりたいのだ」
その言葉で、祐介はリアムの意図を理解したらしい。ふ、と笑うと、仕方ないなあといった風に微笑んだ。
「僕も一緒に行くからね」
祐介はそう言うと、今度はリアムの瞼の上にキスをしたのだった。
台所で正に今珈琲を淹れていた部屋着のままの祐介が、音に気付いたのか振り返った。
「あ、おはようサツキちゃん」
「おはよう。いつ起きたのだ?」
「んー? さっき」
時計を見ると、時刻は八時。二時間程二度寝していた計算になる。
「祐介、目覚まし時計を付けていただろう」
「え? でも鳴ってないよね?」
「私が止めたぞ。祐介は私に起きるなと引き止めていたが」
記憶にないのだろう。祐介は微妙な表情を浮かべていた。
「……まあいい」
リアムはベッドから降りると、シーツと毛布をさっと畳み、ソファーの形に戻し、ソファーに腰掛けて祐介特製の珈琲を待つことにした。
暫くすると、祐介が湯気をなびかせた珈琲をテーブルの上に並べた。リアムの隣に腰掛けると、当たり前の様におでこにキスをした。え? とリアムは驚いて祐介を見上げた。祐介はおどけた表情をして笑った。
「これはおはようの挨拶ですから」
そして何かを言い始めた。
「よく寝ているサツキちゃんの為に、僕が美味しい珈琲を淹れました。僕はサツキちゃんにおはようの挨拶でキスをしました。さてサツキちゃんはどうするでしょうか」
「な、何だいきなり」
「これは問題です。さあ答えて下さい」
リアムは祐介を軽く睨みつけてみたが、駄目だ、笑ってしまった。リアムのそんな様子を見て、祐介もへへ、と笑うものだから、もう笑顔が抑えられなくなってしまった。これはリアムの完敗だ。
「ほら、少し屈め」
リアムがそう言うと、祐介は少し屈んでくれたので、リアムは祐介の前髪を手でどけると、そこに軽くキスをした。顔を離すと、祐介がじっとこちらを見ているではないか。またこの目だ。この目をされると、リアムは考えなど全て捨てて祐介を抱き締めて離したくなくなってしまうから止めて欲しいのだが、ここ最近祐介はちょくちょくこの目をしてリアムを見つめるのだ。
「珈琲を飲んでもいいか?」
無理やり口に出した。すると祐介はしゃきっと背中を伸ばし、にっこりと笑った。
「うん。結構上手に出来たと思うから味わってみて」
「また調べたのか? 祐介は研究熱心だな。魔術師に向いているかもしれんぞ」
リアムが珈琲を口に運びながら言うと、祐介は満更でもなさそうな表情をして言った。
「そうしたら二人で何の研究しようか?」
「そうだな。この世界の魔力に代わる物について是非とも研究をしたいものだが」
「あ、そういえば科学の博物館に行こうって話したもんね。明日あたり行こうか?」
出来たら行きたい。だが、出来る限り早く早川ユメの弟の目を覚ましてやりたかった。平日ではなかなか時間的に面会も難しい為、週末が勝負となる。
「すまない、祐介。祐介と行きたいのはやまやまなのだが、病院に行ってやりたいのだ」
その言葉で、祐介はリアムの意図を理解したらしい。ふ、と笑うと、仕方ないなあといった風に微笑んだ。
「僕も一緒に行くからね」
祐介はそう言うと、今度はリアムの瞼の上にキスをしたのだった。
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