ドラゴンに殺られそうになって(電車にはねられそうになって)気が付いたらOLになっていた(気が付いたら魔術師になっていた)件

ミドリ

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第四章 アルティメット編開始

第635話 魔術師リアムのアルティメット編・病院初日の午後

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 病院を後にしたリアムと祐介は、二人で日傘に入りながら駅までの道を歩いていた。

「マサくんさ、何回位魔法を掛けたら目を覚ますかな?」
「正直、分からん。三年も昏睡状態だと、身体も弱っているだろうしな」

 筋肉は相当衰えてしまっているだろう。もしも目を覚ましたとしても、すぐに起き上がるのは難しいかもしれない。

「明日も、あれやるんだよね?」

 祐介の言うあれとは、おでこへのキスのことであろう。

「やるつもりだ」
「……だよね」

 祐介は、はあ、と溜息をついた。わざとらしい。そもそもリアムはこれに関して何も特別な感情など覚えていないのに、祐介は何をここまで嫌がっているのか。確かにサツキの身体を使ってはいるが、その所為であろうか。

「男が男のおでこに治療目的でキスをするだけだ」
「そうだけどさ」
「あれの方が遥かに効果が高いのだ。祐介も実証済であろう?」
「……うん、まあ、僕もしてもらったけどさ」

 どうも歯切れが悪い。

「どうした一体」

 リアムが木佐ちゃんやユメと仲良くしようとするとそれはそれで面白くなさそうな態度を隠しもしないし、なら相手が男ならいいのかと思えば佐川もマサくんに対しても同じ様に不愉快そうな態度を見せる。これではまるで、リアムを独り占めしたいと言っている様なものではないか。

「だって嫌なものは嫌だもん」

 口を尖らせて言う姿がまた駄々っ子の様で、このリアムにここまで執着してくれる人間がいると思うとつい嬉しくなって口の端が上がってしまう。

「……何だか嬉しそうで腹が立つんですけど」
「祐介は子供みたいだと思ったのだ」
「それって褒めてないよね?」
「可愛らしいと言っているのだ」

 これも恐らくは絆が立ち消えるのを根底で恐れるあまりの行動だとは思うが、それでも自分に興味を持たれているのがこうもあからさまに分かると、これまでほぼそういった経験のなかったリアムにしてみれば、こんなに暖かいものはない。祐介のそれは、リアムが祐介に感じている様な恋心とはまた別のものだったとしても、全てが片付くまでは、こうして暖かな人の隣でこうしていたいと思うのはそれ程悪いことだろうか。

「祐介」
「うん?」
「いつも私の我儘に付き合ってくれて、本当にありがとう」
「なに、急に改まって」

 祐介が、え? という顔をして笑いかける。リアムはそれに対し、ただ笑顔だけで返した。

 先程、師のことを思い出した時に痛んだキスマークの痕。この世界にリアムを留めるには、祐介が物理的に付けた傷や痕があると効果がある、とこれで証明されたことになる。これにより、祐介がリアムをこの世界に留めさせている存在だということもはっきりした。

 やはり、リアムの命を助けたことがきっかけに違いないとリアムは思う。全てがあの瞬間に定まったのだ。

 そしてきっと同じ時に、ユラはサツキを助けて絆を作った。だからリアムとサツキは時折不安定になりながらも、まだこうして互いに異なる世界に存在し続けているに違いない。

 祐介とユラが、リアム達を留めようとしなくなったその時、リアム達は元の身体へと戻るのだろう。

 ――帰りたくない。

 悲しい程に、思った。
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