ドラゴンに殺られそうになって(電車にはねられそうになって)気が付いたらOLになっていた(気が付いたら魔術師になっていた)件

ミドリ

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第四章 アルティメット編開始

第653話 魔術師リアムのアルティメット編・病院二日目の夜は更ける

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 リアムと祐介は、駅前のラーメン屋で冷やし中華を食べると、そのままデパートなる大きな建物がある駅で途中下車した。女の水着などさっぱり分からぬが、祐介に言われるがまままずは一着試着した。

「これでいいのか?」

 試着室から出て来たリアムを見た祐介は、周りをささっと確認すると、リアムを試着室に押し込んでカーテンを閉じてしまった。カーテンの隙間から少し照れくさそうな顔を覗かせると、首を横に振った。

「ビキニは駄目だね。危険過ぎる」
「危険?」
「ワンピースにしよう。ね?」
「……何でも構わぬが」
「ちょっと待ってて。開けないでね」

 祐介はそう言うと、水着を探しに行ってしまった。何故危険なのだろうかとリアムは不思議に思い鏡を見てみる。……納得した。胸がかなり際どいことになっている。リアムの胸のサイズに対し、布の大きさが小さ過ぎるのだ。これでは水に入った途端どうなるか分かったものではない。

 結局、リアムは祐介が選んできた黒いワンピースの水着を購入することにした。そこそこな金額であるが、社宅生活は家賃が殆どかからない為サツキの貯金はほどほどある。始めの頃こそ使うのを躊躇ったが、そうも言っていられないのをすぐに理解したリアムは、祐介の指導の元しっかりと管理していた。元々、金の管理はきちっとしている方だったので、分母と物価が分かってしまえば問題はない。

 祐介も水着を新調したところで、二人は帰路についた。



 大分疲れていたリアムは、今夜もまた祐介の作る軽食を食べて風呂から上がると、祐介にドライヤーをしてもらった。あまりにも気持ちがいいのと疲れとが合わさって、リアムは祐介の膝の上でついウトウトし始める。

「魔法を使い過ぎると疲れちゃうのかね?」
「……その様だ」

 祐介が、リアムの頭を優しく撫でつつ頭の匂いを嗅いでいる。部屋は涼しいが、祐介は暖かい。眠くなってきて少し寒く感じたリアムは、回された祐介の腕の中に自分の腕をしまい込んだ。

「……ねえ、早川さんと、何か話したの?」

 祐介が耳元で囁く。名前の件は、ユメに話した。どうして祐介はそれに気付いたのだろうか。

「……この件が綺麗に片付いたら、ちゃんと話そう」

 リアムの目は、もう殆ど閉じかけていた。魔力を使い果たすと気を失ってしまうことの多かった元の世界よりはマシだが、それに近いものはある。

「……眠いのだ」
「……うん、お疲れ様」

 祐介はそう言うと、毛布を引っ張ってきてリアムに掛けた。リアムの身体中の力が、どんどん抜けていく。

 祐介の指が、リアムの前髪を掻き分けた。

「おやすみ」

 祐介の声は聞こえたが、もう反応は出来なかった。

 すると。

 額に触れる柔らかいものは祐介の唇か。それが名残惜しそうに離れていくと、暫くして微かに唇に触れたものがあった。

 そして、微かな呼び声。

「……リアム」

 きっとこれは夢に違いない。だけど夢でも祐介に名前を呼ばれるのが嬉しくて、嬉しくて、リアムは眠りに落ちつつにっこりと笑ったのだった。
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