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第四章 アルティメット編開始
第677話 魔術師リアムのアルティメット編・最後の砦攻略、残すところはあと一人
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麗子とユメが和解したことで、残す砦はあと一つ、羽田だけとなった。
社長の「麗子にばれたくない」という望みは叶わなかったが、今後は麗子の大海原の様に広い心に感謝して生きていくことになるだろう。そうなってもらわぬと、きっと誰も割に合わない。
「久住社長」
リアムが社長に向き直った。
「はい!」
社長が居住まいを正してリアムを見た。その目に浮かぶのは、安堵。図られたとはいえ、不義を働いたのはこの男も同様である。一番恐れていた麗子との別れが回避されたことで、ほっとしただろうことは理解出来た。
「あなたに、羽田さんの対処についてご対応いただきたい」
社長が、ごくりと唾を呑み込む音が聞こえた。
「……あなた、私も、いえ、私がちゃんと話をしないと」
「麗子さんは駄目だよ! だって羽田さんはずっと麗子さんのことが好きだったってことだろ!? 僕がやる! 僕が、ちゃんと今度こそ!!」
「でも、羽田さんにはいつも強く出れないじゃない!」
「そ、そうだけど!」
ここはここで何やら微妙な力関係があるらしい。すると、祐介がさらっと提案した。
「では、お二方に追加して、今回のプロジェクトリーダーの橋本さんに代表として立ち会っていただきましょうか」
「えっ山岸くん、それ喋っちゃうの?」
麗子が訝しげに社長と祐介を交互に見た。プロジェクトとは一体何のことか、という目だった。
祐介は麗子に向かっていつものあの有無を言わせない笑顔を見せると、はっきりと言った。
「社長命令で発足したプロジェクトなので、詳細は社長にお伺いください」
「ちょっ山岸くん!」
途端、社長が慌て出したが、祐介は一切動じない。
「僕、何か間違ったこと言いましたか?」
社長が、ぐっと詰まってそのまま黙り込んだ。この男はまだこの期に及んで隠し事を麗子に対ししようとしているらしい。愚かだ、とリアムは思った。
「……お二方」
「……はい」
しょぼくれた社長が、恨めしそうな目でリアムを見た。ここは、麗子にもきちんと伝えておいた方がいいだろう。
「私に貞操の危機があった件も踏まえ、きちんと処理をしていただきたいと思う」
麗子の目が見開かれた後、社長をぎろりと見た。社長は更に縮こまってしまった。
「祐介も、散々殴られた。沢山血も出た。その理由を質す質さないはお任せするが、我々が羽田さんを警戒し続ける数週間を送ったことを、是非念頭においていただきたいと思う」
リアムがそう告げると、麗子が社長の腕に触れ、しっかりと頷いてみせた。
「……分かったわ。早々に羽田さんと話をするから。もう、私達のことであなた達に迷惑は掛けないよう、ちゃんと話をします」
「頼んだ」
麗子の姿は凛として、見ていて心地よい。
「社員の安全を守るのは会社の義務よ。それを私達会社の代表が脅かしていたなんて、あってはならないことですから、ちゃんと、ちゃんとします。終わったら、きちんと報告をしますから」
リアムも祐介もユメも、麗子のその言葉に頷いた。社長は麗子の横でまだ少し不安そうな顔をしている。こんな情けない浮気性の男のどこがいいのかとも思うが、それでも離れられない絆があるのかもしれなかった。
リアムと祐介の様に。
「では、一旦退散しよう」
リアムがそう言うと、祐介が扉を開け、ユメは振り返ると麗子に向かってぺこりと深くお辞儀をした。
残すところはあと一人。
賽は投げられた。
社長の「麗子にばれたくない」という望みは叶わなかったが、今後は麗子の大海原の様に広い心に感謝して生きていくことになるだろう。そうなってもらわぬと、きっと誰も割に合わない。
「久住社長」
リアムが社長に向き直った。
「はい!」
社長が居住まいを正してリアムを見た。その目に浮かぶのは、安堵。図られたとはいえ、不義を働いたのはこの男も同様である。一番恐れていた麗子との別れが回避されたことで、ほっとしただろうことは理解出来た。
「あなたに、羽田さんの対処についてご対応いただきたい」
社長が、ごくりと唾を呑み込む音が聞こえた。
「……あなた、私も、いえ、私がちゃんと話をしないと」
「麗子さんは駄目だよ! だって羽田さんはずっと麗子さんのことが好きだったってことだろ!? 僕がやる! 僕が、ちゃんと今度こそ!!」
「でも、羽田さんにはいつも強く出れないじゃない!」
「そ、そうだけど!」
ここはここで何やら微妙な力関係があるらしい。すると、祐介がさらっと提案した。
「では、お二方に追加して、今回のプロジェクトリーダーの橋本さんに代表として立ち会っていただきましょうか」
「えっ山岸くん、それ喋っちゃうの?」
麗子が訝しげに社長と祐介を交互に見た。プロジェクトとは一体何のことか、という目だった。
祐介は麗子に向かっていつものあの有無を言わせない笑顔を見せると、はっきりと言った。
「社長命令で発足したプロジェクトなので、詳細は社長にお伺いください」
「ちょっ山岸くん!」
途端、社長が慌て出したが、祐介は一切動じない。
「僕、何か間違ったこと言いましたか?」
社長が、ぐっと詰まってそのまま黙り込んだ。この男はまだこの期に及んで隠し事を麗子に対ししようとしているらしい。愚かだ、とリアムは思った。
「……お二方」
「……はい」
しょぼくれた社長が、恨めしそうな目でリアムを見た。ここは、麗子にもきちんと伝えておいた方がいいだろう。
「私に貞操の危機があった件も踏まえ、きちんと処理をしていただきたいと思う」
麗子の目が見開かれた後、社長をぎろりと見た。社長は更に縮こまってしまった。
「祐介も、散々殴られた。沢山血も出た。その理由を質す質さないはお任せするが、我々が羽田さんを警戒し続ける数週間を送ったことを、是非念頭においていただきたいと思う」
リアムがそう告げると、麗子が社長の腕に触れ、しっかりと頷いてみせた。
「……分かったわ。早々に羽田さんと話をするから。もう、私達のことであなた達に迷惑は掛けないよう、ちゃんと話をします」
「頼んだ」
麗子の姿は凛として、見ていて心地よい。
「社員の安全を守るのは会社の義務よ。それを私達会社の代表が脅かしていたなんて、あってはならないことですから、ちゃんと、ちゃんとします。終わったら、きちんと報告をしますから」
リアムも祐介もユメも、麗子のその言葉に頷いた。社長は麗子の横でまだ少し不安そうな顔をしている。こんな情けない浮気性の男のどこがいいのかとも思うが、それでも離れられない絆があるのかもしれなかった。
リアムと祐介の様に。
「では、一旦退散しよう」
リアムがそう言うと、祐介が扉を開け、ユメは振り返ると麗子に向かってぺこりと深くお辞儀をした。
残すところはあと一人。
賽は投げられた。
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