ドラゴンに殺られそうになって(電車にはねられそうになって)気が付いたらOLになっていた(気が付いたら魔術師になっていた)件

ミドリ

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第四章 アルティメット編開始

第697話 魔術師リアムのアルティメット編・目覚まし時計

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 リアムは、目覚まし時計の音で目が覚めた。どこのだ? 祐介宅の、である。

 安定の壁の薄さ。明らかに問題であろう。

 リアム自身は目覚まし時計を掛け忘れたので有り難いは有り難かったのだが、如何せん祐介の眠りは毎度深い。ずっと鳴っているが、一向に止める気配はなく、耳障りで不快だ。

 リアムは頭をぼりぼりと掻きながら、半分寝惚けた頭のまま何も考えず転移魔法陣を通過した時に「ぐえっ」と蛙の様な声を聞きつつ、ベッドから降りて目覚まし時計を止めた。よし。

 大きな欠伸をしながら再び転移魔法陣の前に行くと、また「ぐえっ」と声が聞こえた。何事だろうかとぼーっとした頭で下を見ると、どうやら祐介の腹を踏みつけていたらしい。祐介が寝転がったまま、驚愕の表情でリアムを見上げている姿が目に入った。

 そして、ここでようやく自分が昨日散々祐介と離れようとしていたことを思い出し、急いでフルールを唱えようと転移魔法陣に手を翳した。

「フルール!」

 その瞬間、祐介がリアムの足首をガッと掴む。

「あっこら!」

 ヴウゥン、と青い光の粒子が発生し、足に祐介がくっついたまま、二人はサツキ宅にまとめて転移された。

 転移魔法陣で転移してくる位置は、ベッドの位置よりやや上。そして今は祐介が寝転がった状態でリアムの足首を掴んでいる。つまりどうなるかというと、リアムは祐介が受け止める腹と腕の中に落ちていった。鼻の頭を思い切り祐介の鎖骨にぶつけ、目の前に星が瞬く。

「つう……!」
「だ、大丈夫?」

 リアムが鼻を押さえて悶絶していると、祐介が慌ててリアムの肩を抱きながら半身を起こし、リアムの顔を心配そうに覗き込んできた。

「も、問題ない!」
「痛そうだけど」
「優秀な魔術士は、これ位の痛みは何ともないのだ!」
「痛いって言ってるんだけど」
「うっ煩い!」

 すると、祐介が眉毛を垂らしながらふ、と笑った。

「ねえ、それまだ今日も続くの? そろそろ仲直りしようよ」

 どうやら祐介は、リアムが怒ってこういう態度を取っていると勘違いしているらしい。

「別に怒ってなどおらん! 祐介、家へ戻れ! 私はさっさと着替えて出勤するのだ!」
「今日さ、朝マックしようよ」
「わっ私は一人でっ」
「お化粧はどうするの?」
「自分でやる! 難しくないのなら出来るからな!」

 リアムが祐介から離れようと身を捩ると、祐介が悲しそうな顔をした。

「僕、そんなに悪いことした?」

 そんな風に言われてしまうと、強く出るのが憚られる。

「……別に祐介は何もしておらん」

 目を逸らしながらリアムが口を尖らせつつ言うと、祐介に笑顔が戻った。

「お化粧はさせて下さい。ね? 朝ごはんも一緒に食べよう。嫌なら手は繋がないから。ね?」

 今朝のは完全にリアムの失態だ。リアムは、渋々と頷くしかなかった。



 なるべく口数を減らして祐介の顔を見ない様にと心がけたはいいが、そうすると目に入るのは祐介の骨ばった指やしっかりとした首ばかりで、余計心臓に悪い。というかこれはもう完全に変態の部類に入るであろうとリアムは自己認識を新たにした。

 祐介は言葉通り、手は繋がずに接してくれた。それでも祐介がずっと喋っているものだから、結局リアムはそれを無視する訳にもいかず、相槌は打つ。結果として会話しており、これでは昨日の覚悟は何だったのか。

 なので、職場についた時は安心した。木佐ちゃんも出社し仕事が始まると時間は早く過ぎ、ユメが昼飯に誘ってきたので祐介には断りを入れ、そして。

 とうとう、飲み会の時間になった。
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