ドラゴンに殺られそうになって(電車にはねられそうになって)気が付いたらOLになっていた(気が付いたら魔術師になっていた)件

ミドリ

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第四章 アルティメット編開始

第714話 OLサツキのアルティメット編・サツキとユラの再会

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 ユラはサツキの腕を掴むとサッと立ち上がらせ、自分の背中に庇った。

「ユラ、ど、どうしてここに」
「話は後だ! あいつ、前の奴じゃねえか」

 痛そうに起き上がりつつあるシーフの男を眉を潜めながら見ていたユラに、サツキは慌てて伝えた。

「あの人、バリアーラの魔法陣を持ってて魔法が効かないの!」
「バリアーラ? ああ、それでサツキが追い詰められてたのか」

 ユラは何かに納得した様子で頷いていたが、サツキを振り返り薄く笑うと、言った。

「ちと待ってろ。すぐ片付けてくるから」

 そしてスタスタとまだ立ち上がりかけている男の元へと向かう。シーフの男が唱えた。

「バリアーラ! ふ、ふふ! これで物理攻撃も魔法も効かねえ!!」
「ふーん」

 ユラは気にする様子もなく、バリアーラの障壁に手を突っ込んで男の頭を掴んだ。

「え!?」
「攻撃しなきゃ関係ねえもんな」

 ユラはニヤリと笑うと、呪文を唱えた。

「フォア・フルール・アレ、フレイのダンジョン地下四十階」
「え」
「じゃあな、ボス戦頑張れよ」
「え――」

 男は驚愕の表情のまま、その場で掻き消えた。ユラがパンパン、と手を叩いてから、ゆっくりとサツキを振り返る。

 今の呪文は、一体何だろう? フルール・アレが含まれていた様だが、サツキには聞き覚えがなかった。

「ユラ、今のは……?」

 サツキは唖然とした表情でユラに尋ねた。こちらにゆっくりと戻ってくる、ユラの飄々とした表情。

「ありゃあフォア・フルール・アレって言って、対象を指定の場所に飛ばす呪文だ。知らなかったか?」
「あ、うん」

 ユラは、サツキが勝手に出て行ったことを怒っていないのだろうか。いやまああそこの家はリアムの家であってユラの家じゃないけど、そういうことではなく。

 ユラがサツキの目の前に立った。自然、サツキは首を大きく逸らして見上げることになる。

「お前、俺を置いていくなよな」

 やはり言われた。サツキは目を逸らすと、一歩後ろに下がる。そしてユラに肩を掴まれた。

「カントに行く気だったんだろ? ジュリアンから聞いた」
「え!? ジュリアン喋っちゃったの!?」

 あれだけ約束したのに、そんなあっさりと約束が反故されるなんてあんまりだ、とサツキは思わずユラを見てしまった。

 しまった、水色の瞳に吸い込まれそうになっていく。ユラはずっとサツキから目を離さないから、だから勘違いしてしまいそうになるから、だから見たくなかったのに。

「お前の払った額の一割増の額を払ったんだよ。だから俺の勝ちだな」
「え!? ユラ、お金ないのに!」

 サツキがズバッと事実を述べると、ユラが唇を尖らせた。

「お前が俺を置いて行っちゃうからだろ。お前の所為だからな、だから次から俺の家はお前の家だ」

 なんと、ユラから同棲……いや、同居を申し出てきたではないか。

「いや、でも、うちに恋人を連れ込まれたりしたらやっぱり嫌だし……」
「は?」

 ユラの片眉が、思い切り曲がった。そんな表情をしなくても、サツキの気持ちはとうに知っているだろうに。サツキがまた泣きそうになると、ユラは何の前触れもなしにいきなりサツキにキスをした。

「お前、まだ分かってなかったのか? 俺はてっきりもう分かったもんだとばかり思ってたんだけど」
「え? 分かってない? 何が?」

 サツキが本当に分からず首を傾げると、ユラが「あ」と言った。

「そうか、俺、もう当たり前過ぎて昨日お前に言うのを忘れてたことを今思い出した!」
「へ? 分かんないよ、ユラ」

 サツキが心底困ってそう尋ねると、ユラの口がにっこりと笑い、そして言った。
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