神隠しの子

ミドリ

文字の大きさ
10 / 64

其の十 すみません

しおりを挟む
 町の中心に近付いてきたところで、駅から学校に向かうジャージ姿の生徒がちらほらと目に入る様になってきた。すると、明らかに花の様子がおかしい。

「そ、宗ちゃん、そろそろ私降りて歩いていくから」
「じゃあ俺も降りて歩く」
「だ、だって誰かに見られたら」

 それでピンときた。花は、俺と花が一緒にいるところを他の生徒に見られ、それが畑中吉乃に伝わるのを恐れているのだろう。確か畑中吉乃の部活は、……何だったか。興味がないから、そもそも知らない。

 本当に困っている風だったので、仕方なく一旦自転車を止める。花は降りると、荷台の荷物を持とうとした。咄嗟にその手を掴み、止める。ぎょっとした表情の花を無視し、片手で自転車を支えたまま、俺も自転車から降りた。

 手を繋いだ状態で歩き始めると、花は一所懸命手を引っこ抜こうとしたが、無駄な努力だ。絶対に離すもんか、と握り方を恋人繋ぎに変える。花が更に焦りだして繰り返し引っ張り……やがて諦めた。

 よし勝った、と心の中でガッツポーズを作る。

「畑中に隠すつもりかよ」
「いや、その、でもね」
「俺と付き合ってることって、隠さないといけない様ないけないことなのか?」

 だが、多分もう時既に遅しだ。周りの奴らは明らかにこちらを見て何やらヒソヒソと話をしている。だがこれで、これ以上花に悪い虫は付かないだろうし、且つ速やかに噂は広まるので畑中対策にもなる筈だ。

「……そう、そうだよね。隠す必要ないもんね!」

 耳まで赤くした花が、急にこちらを見上げてにこっと笑顔になって言うものだから、花の蜜に吸い寄せられる虫の如く、顔を近付けてしまい。

 あ、しまったと思った時にはもう遅い。

 商店街のど真ん中で、白昼堂々花にキスしてしまっていた。

「そ、そそそそそそおちゃんんん??」

 花が空いている方の手で口を押さえると、俯き加減でこちらを軽く睨んできた。睨む花も、滅茶苦茶可愛い。だが、正直俺も、今は余裕ゼロの焦りまくりだ。どうしようか。周りが騒いでいるのが聞こえてきたが、抑え続けていた七年分の想いは、もう止められなかった。

「花、好き」

 自然に出て来てしまった言葉に、行動を乗せる。

 三回目のキス。

 すみません、止められませんでした。心の中で、花に謝った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

裏切りの代償

中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。 尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。 取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。 自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。

処理中です...