我が家の家庭内順位は姫、犬、おっさんの順の様だがおかしい俺は家主だぞそんなの絶対に認めないからそんな目で俺を見るな

ミドリ

文字の大きさ
47 / 100
第七章 次の首探し

47.折角頑張ったんだからそんなに怒らなくてもいいじゃないか

しおりを挟む
 蓮は結界を解き終わると、亮太に勾玉を返してきた。蓮の顔色はもう悪くない。それを確認してから、亮太は勾玉を受け取り首にかけた。

 全てが終わったのは外から結界を張っていたアキラにも分かったらしい。蓮が張った内側の結界が消えたので、中の様子が見える様になったのだろう。

 みずちが蛟龍から蛇の姿へと戻り、当たり前の様に亮太のポケットに納まったところでアキラが張った結界が解かれた。

 それまではぼんやりとしか見えていなかったアキラの姿が亮太の目にはっきりと映った。相変わらず平然とした顔をしているが、額には汗が光っている。

 亮太がアキラに声をかけた。

「アキラ、大丈夫か?」

 するとアキラが呆れた顔をした。

「大丈夫そうじゃないのはそっちでしょ」
「え?」

 アキラが亮太の服を指差した。亮太が改めて自分の服を見ると、膝は泥だらけ、手のひらも黒く、いつの間にかネルシャツの前がそこそこビリビリに破れていた。泥は膝をついたりしたから分かるが、服はいつ破れたのか?

 亮太が不思議そうにしていると、蓮が教えてくれた。

「コウ様を背に庇われて首の口の中に身体を半分突っ込んでいかれた時に」
「あーあの時か! 勾玉付けてなかったからちゃんと見えてなくて、はは」

 そうか、その時八岐大蛇ヤマタノオロチの牙にでも引っかかってしまったのだ。亮太は納得して頷いた。すると蓮が顰め面になってぶつぶつと説教を始めてしまった。

「そもそも私に勾玉を渡してから戦いに挑むなど無茶が過ぎるのですよ」
「いやだって、レンの顔色真っ白だったし」
「だってではありません!」
「はい」

 説教を通り越して叱責になってきた。

「しかも亮太は勾玉がないと八岐大蛇がろくに見えないと分かった上で私に渡したのですよね?」
「でも一応ぼやっとは見えたし」
「それは結果論でしょう!」
「悪かったって」
「万が一亮太に怪我でもあったら、巻き込んでしまった私はどう償えばよいのですか!」

 巻き込んだ自覚はあったらしい。意外だった。

「もう少し慎重に取り組んでいただけませんと、まだあと六匹もいるんですよ」

 そしていつの間にか亮太が残りのも全部退治する話になっている。本当にこいつはいつもいつも。

 でも。

 亮太は苦笑しつつ言った。

「次は気を付けるからそう怒るな。な?」

 すると、蓮が目を見張った。

「……亮太?」
「何だよ」
「いつもの様に『俺は一般人のただのおっさんなんだ』と言わないのは何故ですか」

 亮太はぐ、と詰まった。お前達とまだいれるから、なんて口が裂けても言えない。

「まあ、戦うのも慣れてきたし」
「それが理由ではないですよね?」

 ずい、と蓮が亮太の目の前に来て見下ろしてきた。怖い。でも言いたくない。絶対嫌だ。他の理由、他。何かないか。亮太の目が左右に泳ぐ。

 あ、ひとつあった。

「……色、が」
「色? 何のことです?」

 整った蓮の顔がとても近い。いくら普段犬の姿の時はくっついて寝ているからといって、人の姿の蓮とくっついていたいとは思わなかった。そして怖い。

 周りをチラッと見たが、アキラとは目が合わなかった。心なしか表情が昏い様な気がするが、やはり抑えるのが大変だったのだろうか。コウは一体何を考えているのか、興味深そうに亮太と蓮をまじまじと眺めていた。どちらにしろ助けはない。

 仕方ない、これもあまり言いたくはなかったが、まだこっちならそこまで抵抗はない。亮太は続きを言うことにした。

「お前達の出す色、色彩っていうやつ、それを見るのはやぶさかじゃねえんだよ」
「はい? 色彩、ですか?」
「そ」
「ちょっとよく分からないのですが」

 本当に分からないのだろう、それは蓮の顔を見れば分かった。それが分かる位は、亮太はもう蓮とそれなりに長い時間を過ごしていた。それに気づくこともまた、亮太にとっては心地いい瞬間だった。

 本当に、こいつらと離れたらどうなっちまうんだ。

 亮太は心底不安になった。誰もいなくなった、もぬけの殻の部屋の夢を時折見る。起きてそこにアキラと狗神とみずちがいると、現実はこっちだったかと気が抜けた。気が抜けた後に、これは将来必ず迎える現実だと悟るのだ。

 こんなこと、言えない。言ったらこいつらはきっと、無理して傍にいようとするに違いないから。

 だから、第二の理由を言おう。別に嘘じゃない、本当のことだ。

「お前達が姿をその、変身する時に見える色があるんだよ。俺は、それが凄くその、好きなんだ」
「はあ」
「なかなかまだ描く機会もないし、出来たら頭に記憶させる位はもうちょい見たい」
「そうですか」
「そうなんだよ。特にコウのは草薙剣を出す時しか見れないだろ?」
「まあ、そうなんですかね」

 恐らく理解はしていないだろう蓮が相槌を打った。アキラはうつむいたままだ。すると、思いもならないところが会話に割り込んできた。

「亮太は、絵を描くのか?」

 コウだった。黄銅色の瞳がキラキラと亮太を見て輝いている。そういった物に興味があるのかもしれなかった。

 亮太は頷いた。

「ずっと描いてなかったけどな、最近再開した」

 すると、コウの表情まで輝いた。

「見たい」

 こいつはこんな顔も出来るんだな、そう知った瞬間だった。



 昼飯は久々のマックにした。なんせアキラが一緒なので、腹が足りない分を追加で頼める様な店でないと厳しいのだ。

 しかし、梅ヶ丘の駅前のマックの店内でこの面子は目立った。

 アキラと亮太だけならただの親子にしか見えなかっただろうが、そこにモデルと言っても余裕で通用する蓮、それに今はその蓮よりもイケメンなコウまでいる。煌びやか過ぎて一緒にいるのが心苦しく思えてきた。

 本当に何でこんなおっさんの周りにこいつらはいてくれるんだろう。亮太はポテトをポリポリとつまみながら、実に旨そうにてりやきマックバーガーに齧り付いているコウを眺めた。

 コウはよく噛むタイプらしく、食事のスピードはのんびりだった。そして大食漢ではない様で、食べきれないポテトをアキラに分け与えていた。アキラのことはよく知っているらしい。

 肌はすべすべで、髭を剃った様な痕もない。生えてこない体質なのかもしれないな、そう思った。すごい若くはないが、皺もなく明らかに亮太よりは若い。

 あまりにも亮太が不躾に見つめていたからだろう、コウが居心地悪そうに尋ねてきた。だが先程までの態度とは違い、嫌そうではない。

「さっきから、何だ」
「いや、年齢どれ位かなーと」

 そんなことか、という表情になると、コウは残りのポテトを全てアキラに渡して紙ナプキンで手を拭いた。

「二十八だ」
「ふーん。結婚は?」

 田舎で二十八なら結婚しているだろう、そう思っての質問だった。

 すると途端にコウの顔が実に嫌そうな表情に変わった。

「……してない。あんなのとは絶対にしない」
「あんなの?」

 相手がいるのか。しかし相手の女性も『あんなの』とまで言われると少々憐れである。

「聞くな。思い出すだけでおぞましい」
「おぞましいって、相手の女性はゴリラか何かなのか?」

 すると、今度のコウの表情は微妙な表情だった。眉は八の字、口角は垂れ下がり、何とも情けない。

 余程聞かれたら嫌なのだろう、亮太はこの話はもう止めることにした。

「わりい、嫌ならもう聞かないよ。で、コウは泊まる所はどうするつもりなんだ?」
「いや、こちら東京には悪い気を追って今日来たばかりでまだ」
「コウ様は僕といるのー」

 ポケットの中から、みずちが間髪入れず主張してきた。

「僕亮太とコウ様の間で寝るんだもん!」
「いやでもさすがにもう俺の部屋だと狭……」
「やだもん! 楽しみにしてたんだもん! うっううっ」

 すると、外が急に暗くなり始めてきた。拙い、みずちの機嫌を損ねるとまた大荒れな天気になってしまう。

 亮太は慌ててポケットの中に向かって言った。

「わ、分かった! 分かった! 一緒に寝る! 寝るから泣くな!」

 コウの目が見開いたが、何も言わなかった。そりゃこんなおっさんと同じ布団で寝たくはないだろうが、それは亮太だって同じだ。

「ほ、本当?」
「おお、本当だ本当! だから泣くな、な?」
「えへーじゃあ狗神は床だねー」
「……私は反対側に移動しますが床には寝ませんよ」

 蓮はあくまで亮太とくっついて寝るつもりらしい。シングルサイズのマットレスに大人二人に中型犬一匹、更に蛇まで。

 ゆっくり休めるんだろうか、亮太は思わず小さな溜息を一つついた。


 外の天気はあっという間に晴れ間を見せていた。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

【完結】うだつが上がらない底辺冒険者だったオッサンは命を燃やして強くなる

邪代夜叉(ヤシロヤシャ)
ファンタジー
まだ遅くない。 オッサンにだって、未来がある。 底辺から這い上がる冒険譚?! 辺鄙の小さな村に生まれた少年トーマは、幼い頃にゴブリン退治で村に訪れていた冒険者に憧れ、いつか自らも偉大な冒険者となることを誓い、十五歳で村を飛び出した。 しかし現実は厳しかった。 十数年の時は流れてオッサンとなり、その間、大きな成果を残せず“とんまのトーマ”と不名誉なあだ名を陰で囁かれ、やがて採取や配達といった雑用依頼ばかりこなす、うだつの上がらない底辺冒険者生活を続けていた。 そんなある日、荷車の護衛の依頼を受けたトーマは――

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~

紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。 そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。 大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。 しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。 フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。 しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。 「あのときからずっと……お慕いしています」 かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。 ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。 「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、 シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」 あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。

異世界ママ、今日も元気に無双中!

チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。 ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!? 目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流! 「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」 おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘! 魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...