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金髪ナルシーくん登場
しおりを挟む「……そろそろよさそうだな。」
アッくんがあたしの手をひいて、フロアの空いてるスペースに移動する。
たくさんの人が踊る中であたしたちのダンスなんて誰も見てないかもしれないけど、それでもやっぱり緊張しちゃう。
アッくんが上手にリードしてくれるおかげで傍目から見るとスムーズに踊れてるように思う。
それでも時々足がもつれそうになると、アッくんが腰に回した腕でフワッと浮かせて助けてくれる。
「ふっ、まぁまぁだな。」
「これでも頑張って練習したのっ」
イジワルそうな笑顔でイジワルなことを言うアッくんといつものやりとりをしていると、自然と肩の力が抜けて足も動くようになってきた。
何とか一曲踊り終わり早々にフロアの端っこに引っ込む。
二曲連続はさすがにしんどい。
一曲踊れただけでも十分満足だし。
「喉乾いたー」と言うと、飲み物を貰ってくるとアッくんがその場を離れる。
アッくんは離れるのを渋っていたけど、飲み物のスペースは同じように一曲踊って喉を潤したい人でかなり混雑しているため、あたしのこの凶悪なヒールで踏んづけでもしたらかなり申し訳ないと遠慮した。
飲み物スペースは目と鼻の先だしね。
行く前に「絶対にここを動くな。誰に話しかけられても答えるな。」とめっちゃ過保護な言葉をしつこく残して言ったけど、あたしのこと5歳児だと思ってんのかな?
もう21なんだけど。
「お嬢さん、宜しければ一曲踊りませんか?」
「それより私とテラスの席でお茶でも如何です?」
「この後、俺の部屋で一杯どう?」
アッくんが人混みに消えた途端、ドドドーっと知らない男の人たちに囲まれて、一斉に声を掛けられてビビった。
最後の人とかすごい直接的なお誘いなんだけど。
アッくんに話すなって言われたけど、これ無視したほうがいいの?
でも、流石に無視するのはちょっと……って感じだったので曖昧に微笑んで首を横に振っておいた。
これで伝わるでしょって思ってたら、”部屋で一杯”の奴に手を取られて、スリスリと手の甲を撫でられる。
「恥ずかしがらなくていいから……。」
…………きっんもーーー‼︎
えー⁉︎普通初対面の女の子の手触る⁉︎
なんかさっきから金髪サラサラヘアー無駄に靡かせててめっちゃナルシーっぽいし、生理的に無理よりの無理なんだけど。
但しイケメンに限る。とかないから‼︎
アッくん以外はみんなイモムシと同列だから‼︎
内心ギャーと思いながら手を引き抜こうとする……が、めっちゃ力強くてこいつ全然離さん‼︎
10センチのピンヒールの攻撃力を見よっ‼︎って感じで足でも踏んづけてやろうと思ったら、筋肉モリモリの腕が横から伸びてきて、金髪ナルシー君の手首を捻り上げた。
「痛たたたたたたたっ‼︎」
「アッく……レクさん‼︎」
見ると、アッくんが恐い顔して金髪ナルシー君を見下ろしていた。
「俺の妻に何か用か?」
「つまぁ⁉︎痛っ‼︎痛いって‼︎とりあえず離せっ‼︎」
解放された手首を痛そうに撫でながら金髪ナルシー君がギッとアッくんを睨みつける。
「妻ってどういうことだ?ランゲ殿は化け物女と結婚したはずだろう‼︎」
化け物女とかヒドッ‼︎
傷つくしっ‼︎
アッくんの背中から顔だけ出して、金髪ナルシー君をこれでもか‼︎っていうぐらい睨みつけた。
多分効果ないけど。
「…………。」
「ふんっ、妻などと見栄を張るな。実際の妻が醜すぎるから娼婦を着飾らせて連れてきたんだろ?
お気に入りなのか?一晩くらい貸してくれてもいいだろ?」
「はぁー?娼婦じゃないし‼︎アッく……あ、アレクさんの妻だし‼︎
もしあたしが娼婦だったとしてもあんたみたいなのぜーったいお断り‼︎」
ムカっときてつい言い返す。そんですぐアッくんの背中に隠れる。
金髪ナルシーくん力強くて恐いし。
「椿、こいつに何かされたか?」
「……大丈夫。手すりすりされただけ。あと部屋来いって誘われた。」
全部チクってやる。アッくんに怒られろっ!
「レオーン殿、貴殿は結婚されているはずだが?
妻帯者でありながら人の妻にちょっかいかけるのが君の騎士道精神なのか?」
「俺は貴族だ。愛人を持って何が悪い?
お前こそ平民の分際で俺に指図するな‼︎」
金髪ナルシー君が大声でアッくんに噛み付く。
「はぁー。俺は平民だが、騎士団では貴様より階級が上だ。立場を弁えろ。
雑魚の分際で俺の妻に触るな。殺すぞ……。」
おう……流石アッくん。迫力が違う。
アッくんの声は決して大きくないが、低く低く地鳴りのように響く声で、聞いてるだけで体が震え出すような……そんな声だった。
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