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「主(あるじ)よ、まさか初めての口淫で気を失ってしまったわけではあるまいな?」
アーシュが覗き込んでくる気配を感じ、ミチカはうすく目を開けた。
絶頂の余韻でまだふわふわして身体は気だるいが意識はあった。
「いえ、わたくしは起きています。ただ、力が入らなくて起き上がれないだけです」
「おお、さすがは我が主だ。あの程度の魔素の放出で気を失うはずはなかったな」
アーシュは嬉しそうに口の端を上げて、ミチカの額に軽く口付けた。
無邪気な笑顔だ。
横暴な奴隷のくせに、たまに可愛く見えてしまうのがくせモノなのだ。
「では、あとどれくらいで再開(・・)できる?」
「はい?」
何をだろう、と目の前の使い魔を見つめ、その意味を悟りミチカは呆然とした。
やはり全然可愛くなどない。
「えー……と、一日とか、二日後でしょうか……?」
「ははっ、主は本当に冗談が好きなのだな」
「だって、もう魔素はあげたでしょう?」
「そうだな。フルコースで言うのなら、前菜というところか。非常に美味であった」
「ま、待ってください……」
「ああ、待っている。おまえを一目見た時からずっと待っている。おまえの匂いを嗅いだ時からずっと欲情している。だが、この豚のごとき奴隷は欲望を解き放つことも許されず、ただただ主に奉仕することを命じられとても興奮した」
「興奮した」
「とても、興奮した」
見れば、使い魔のズボンの股間がぎちぎちに張っていた。
(これは…………)
ミチカは疲れも、何も身につけていないことも忘れ、ふるんと乳房を揺らしながら勢いよく起き上がった。
何度も忘れかけたが、ふたたび自分の目的を思い出したのだ。使い魔に奉仕という名の快楽地獄を見せられたが、心はまだ折れてはいない。
(間違いない、これはチンポです!)
「どうした? 我が主よ」
首を傾げるアーシュに、ミチカは意を決して事情を説明した。
「ということで、わたくしは、男性のチ……ペニスが怖いのです。が、しかし、結婚を控える身としては早急にチ……ペニスに慣れなくてはいけません。それで使い魔のあなたを召喚して、チ……ペニスに」
「チンポでよいぞ」
「チンポに慣れたいのです! チンポを見せてください!」
(言った……!)
チンポ見たさに魔王を呼び出してしまったことを、やはり怒られないだろうか?
おそるおそる目の前に座るアーシュを見上げると、神妙な顔はしていたが怒ってはいないようだった。
「なるほど、それは一大事だったのだな……」
「そう、そうなのです!」
「伴侶となる男の局部に恐怖するなど、悲劇でしかない。私が喜んで協力しよう。なぜならこの下賤の雄豚はおまえに跪くことだけが生き甲斐の奴隷なのだからな」
「え、ええ、ありがとう」
アーシュは美しい男だというのに、なぜ自分を豚だの下賤だのと言うのかミチカには理解できなかった。だが、そんなことよりも、チンポだ。
「あなたはとても美しいわ。その美しいあなたにも、凶悪で恐ろしい魔物のようなチンポがついているのだとすればもう、わたくしは諦めて慣れるしかないと思うのです」
「そうか。決意は固いのだな。では、まず自分の目で確かめてみるといい」
目の前でアーシュは鮮やかにシャツを脱ぎ捨てた。
均整の取れた美しい肉体に、ミチカは息を呑む。細身にも見えたが、服の下の身体は適度な筋肉に覆われ引き締まっており、つい手を伸ばして触れてしまいたくなるような男の色気があった。
しかし、気になるのはやはり下半身である。
食い入るようなミチカの視線に動じることもなく、アーシュはベルトを外し床に放る。
そして躊躇いなくズボンを一息に下ろすと、勢いよく何かが飛び出してきてビタンッと彼の腹を打ち跳ね返った。
「…………ひっ!」
ミチカは両手で口を覆う。
「やはり、これがチンポだというの……!」
裸身を晒して堂々と立つアーシュの股間もやはり堂々と勃ち上がっていた。そして目の前のそれは可愛いハムスターなどではない。これこそ魔王だ。
レダラスのものと基本的な作りは同じようで、ビキビキと血管の這うソレは生き物のように見えた。獰猛に鎌首を上げた大蛇のごとく、ミチカの身体をすくませる。
「うぅ……凶悪な巨大キノコにも見えないこともありません……まだそちらのほうが……」
「自己暗示とはいい心がけだ。ところで主よ、おまえが見たとき、婚約者殿と使い魔は何をしていたのだ?」
「そうですね……確か、使い魔の女性が跪いて、レダラスさまのチンポにこう、口を……」
言葉にするのはいささか恥ずかしく、ゼスチャーを交えて説明した。
「なるほど、理解した」
アーシュは自らの怒張に手を添え、ミチカによく見せた。
「これは怖いものではないぞ。主を慕う従順な下僕だ。さあ、誇り高き我が主よ。おまえも使い魔の女がしていたように口をつけてみるのはどうか」
「どうか、って……そんな、無理です! 見ているだけで恐ろしいというのに!」
「慣れる、と心に決めたのではなかったか?」
挑発するようにアーシュの片眉が上がる。
——そうだ。確かにミチカは決めたはずだ。
現実のチンポが恐ろしいものだとしても、慣れてみせるのだと。そのために使い魔を利用するのだと。
「分かりました。では、そこに座ってください」
「さすが主だ。なんと豪胆な心意気」
ベッドに腰掛けたアーシュとは逆に、ミチカは震える足でベッドから降りると、そそり勃つペニスの前に膝をついた。それでもやはり恐怖が先立って目を伏せてしまい、はあ、はあと荒い息を繰り返し吐く。
アーシュは彼女の顎に手を添え、上向かせた。
「よく見るのだ。主よ。これからおまえの施しを受ける、無力で愚かなペニスを」
「うぅ…………」
鼻先にあるソレは無力には見えなかった。
生命力にあふれ、やる気満々に見える。
(凶悪で、歪な……なんて、なんていやらしくて、いかがわしくて、卑猥なかたちなの。これを舐めたりしゃぶったりなんて……わたくしにできるの……)
ごくり、とミチカの喉が鳴る。
「いきなりはまだ無理のようだな。何事も順序というものがある。そうだ、まずは目を覆って舐めてみればよい」
「そ、そうね。見えないのなら、まだ……」
ミチカはその提案に頷いた。
おそろしいのはまず見た目だ。それをなんとかごまかせばできそうな気がする。
アーシュはクローゼットからスカーフを何枚か見繕ってくると、そのうちの一枚でミチカの目を覆った。
しかし、どうだろう。
目隠しをするのはいい案だと思ったのだが、見えないとそのぶん想像力が増し、かえって恐怖心が強まる結果となった。
「アーシュ……これは、やはり怖いです。やりとげられる自信がありません」
肩を落としスカーフを外そうとすると、その手をアーシュが押さえた。
「諦めるのは早すぎるぞ、主。まだ方法はあるはずだ」
「でも、どうしたら……」
わずかな沈黙の後、シュルッと衣ずれの音がして、絹のスカーフがミチカの腕に絡まった。
「アーシュ?」
「こうして、目隠しを外せないように手を縛るのはどうだろう?」
「…………!!」
目隠しをされて、その上さらに腕を拘束されるというのか。
ミチカはさらなる恐怖におののいた。
「し、しかし、なるほど……。荒療治というわけですね」
これなら途中で怖くなっても目隠しは外せない。
婚約有効期限まで後わずか。それまでにペニスに慣れるためには、ここまでしなければならないのかもしれない。
ミチカが覚悟を決めた顔でこくりと頷くと、両手首を後ろに回されギュッと縛られた。
「はぁ……っ!」
思わず喘ぎにも似た切ないため息が漏れる。
「よし、これで準備は整った。あとはすべてこの奴隷に任るがよい」
「後ろ手とは、念が入っていますね……」
「これならどうあがいても外せまい。それに、このほうが主の愛らしい乳房がよく見えるからな」
「隠そうともしない下心……。いいでしょう。ギブ&テイクです」
「物分かりのいい主は好きだぞ」
アーシュはミチカの唇に指を当てる。
「よいか、まずは唇に軽く触れるだけだ」
「ええ……」
戦々恐々として待つミチカの唇に、ぷに、と指よりも大きな何かが押しつけられた。
「……ッ!」
おそらく先端の張り出た部分だろう。ゆっくりと唇を押すその感触は思ったよりもつるつるとしていて、弾力があった。
(こ、こ、こ、これが、チンポ…………!)
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