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第1章 卒業後の進路
初ダンジョン内戦闘
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「なんか近づいてきてんな」
ズシンズシンという音を聞いて、タフィは足を止めた。
なお、通路は緩やかにカーブしているので、奥の方を確認することはできない。
「たぶんキューブが転がってきてるのよ。気をつけな、ここは狭いから避けらんないよ」
先ほど現れたキューブの幅はおよそ2.5メートル、対して通路の幅はおよそ3メートルだ。
「避ける必要なんかねぇよ。俺も一撃でサイコロ野郎を倒してやるから。見てな」
タフィは小走りでキューブとの距離を詰めると、気合を入れてバットを構えた。
「あのままバットで殴りかかるのかと思ったけど、やっぱり“打つ”スタイルで戦うんだね」
カリンはタフィの戦い方がモンスターにも通用するのか、興味津々な様子で見つめている。
「来いっ!」
キューブは音と振動をまき散らしながら、タフィへと迫っていく。
空間が狭いこともあってか、凄まじい圧迫感がタフィを襲う。
「うおおお!」
タフィは圧迫感を振り払うかの如く、雄叫びをあげながら、眼前に迫ったキューブ目掛けて力いっぱいにバットを振った。
バコーンッという衝撃音とともに、キューブの体はバラバラになって吹き飛んだ。
「どうじゃー!」
タフィは右手を高々と上げながら雄叫びをあげた。
「ナイスバッティング」
カリンはパチパチと手を叩きながらタフィのことを褒めた。
「さすがです兄やん」
ボイヤーも笑顔で駆け寄ってきた。
「言っただろ、一撃で倒すって」
さっきまで足を震わせていたのが嘘のように、タフィは堂々と胸を張って言った。
さらにもう一体のキューブを倒したタフィたちは、再び広い空間に出た。
「なんか行き止まりっぽいな」
タフィは周囲を見回したが、来た道以外に通路らしきものは見当たらなかった。
「じゃあ、ここになかったら戻ろ……」
しゃべっている最中、突然カリンへ向けて電撃魔法が放たれたが、カリンはそれを華麗に避けた。
「ヒトツメイワか」
攻撃してきた犯人を発見するや、カリンはすぐさま戦闘態勢に入る。
「急に現れたな」
タフィも咄嗟にバットを構える。
「モンスターはダンジョンが生み出すもんだからね。急に現れたって不思議じゃないよ」
出現したのは3体のヒトツメイワで、タフィたちを囲うような位置取りをしていた。
「タフィ、あんたは右のやつを、ボイヤーは左のやつをやって。うちは真ん中をやるから」
「おう」
「はい」
カリンの指示を受けて、それぞれが戦闘を開始した。
「当たらないよ」
カリンは巧みに魔法攻撃を避けながら、ヒトツメイワとの間合いを詰めていく。
「くらえっ!」
カリンは弱点であるコア目掛けて豪快に槍を投げた。
コアに槍を突き刺されたヒトツメイワは、その場に倒れ込んで消滅した。
「やりぃ」
「こっちも倒しました」
ボイヤーもファイヤーボールでヒトツメイワを粉砕していた。
「あとはタフィだけか」
カリンが目を向けると、タフィは次々と放たれる電撃やウォーターボールといった様々な魔法攻撃をバットで打ち返しているところであった。
「なんだか打撃練習してるみたいね」
タフィはなんとかヒトツメイワに当ててやろうとしていたが、魔法攻撃が矢継ぎばやに襲ってくるので、うまく狙いを定めることができないのだ。
「それにしても、あんだけスピードや軌道が違うのに、よく全部当てられるものよね」
「たぶん、色んな球種で攻められてたからですよ」
カリンの疑問にボイヤーが答えた。
「色んなって言っても、両手で数えられる程度でしょ」
「カリン姉さん、今は20種類以上あるんですよ」
「嘘、なんでそんなに増えてんの?」
「兄やん対策ですよ。兄やんから空振りを奪うために、皆次々と新しい変化球を開発していったんです。しかも同じ変化球でも、人によって変化が違いますからね。それに比べたら、魔法攻撃の変化なんてかわいいもんですよ。しかも、全部自分の方に近づいてくるってわかってるわけですから」
変化球と違って、魔法攻撃には自分から逃げていく軌道のものは存在しないうえに、すべてが自分に向かってくるので狙いが絞りやすかったのだ。
「なるほどねぇ。そう考えると、あいつの打球も攻撃向きよね」
「ですね」
カリンの意見にボイヤーも同意を示す。
「あんたみたいに弾道が高いと、打ち返したやつが相手を飛び越えていっちゃうけど、タフィはライナー性の当たりが多いから、その心配がないのよね。それに打球スピードもすごいし」
「兄やんの打球は気合入れて捕らないと、グラブがはじき飛びますからね。それに速すぎるんで、シングルヒットだと、2アウトでも二塁からかえって来れませんし」
「よっぽど俊足の奴じゃないとアレは無理よ。だいたい……あっ」
タフィが打ち返したウォーターボールは、強烈なライナーとなってヒトツメイワのコアを直撃、そのまま体を粉砕した。
「よっしゃあ!」
タフィは力強くガッツポーズをした。
「じゃ、新しいモンスターが出てくる前に、パパっと探しちゃいましょう」
「はい」
カリン、ボイヤー、そしてタフィは手分けして包丁を探したが、この場所で見つけることはできなかった。
ズシンズシンという音を聞いて、タフィは足を止めた。
なお、通路は緩やかにカーブしているので、奥の方を確認することはできない。
「たぶんキューブが転がってきてるのよ。気をつけな、ここは狭いから避けらんないよ」
先ほど現れたキューブの幅はおよそ2.5メートル、対して通路の幅はおよそ3メートルだ。
「避ける必要なんかねぇよ。俺も一撃でサイコロ野郎を倒してやるから。見てな」
タフィは小走りでキューブとの距離を詰めると、気合を入れてバットを構えた。
「あのままバットで殴りかかるのかと思ったけど、やっぱり“打つ”スタイルで戦うんだね」
カリンはタフィの戦い方がモンスターにも通用するのか、興味津々な様子で見つめている。
「来いっ!」
キューブは音と振動をまき散らしながら、タフィへと迫っていく。
空間が狭いこともあってか、凄まじい圧迫感がタフィを襲う。
「うおおお!」
タフィは圧迫感を振り払うかの如く、雄叫びをあげながら、眼前に迫ったキューブ目掛けて力いっぱいにバットを振った。
バコーンッという衝撃音とともに、キューブの体はバラバラになって吹き飛んだ。
「どうじゃー!」
タフィは右手を高々と上げながら雄叫びをあげた。
「ナイスバッティング」
カリンはパチパチと手を叩きながらタフィのことを褒めた。
「さすがです兄やん」
ボイヤーも笑顔で駆け寄ってきた。
「言っただろ、一撃で倒すって」
さっきまで足を震わせていたのが嘘のように、タフィは堂々と胸を張って言った。
さらにもう一体のキューブを倒したタフィたちは、再び広い空間に出た。
「なんか行き止まりっぽいな」
タフィは周囲を見回したが、来た道以外に通路らしきものは見当たらなかった。
「じゃあ、ここになかったら戻ろ……」
しゃべっている最中、突然カリンへ向けて電撃魔法が放たれたが、カリンはそれを華麗に避けた。
「ヒトツメイワか」
攻撃してきた犯人を発見するや、カリンはすぐさま戦闘態勢に入る。
「急に現れたな」
タフィも咄嗟にバットを構える。
「モンスターはダンジョンが生み出すもんだからね。急に現れたって不思議じゃないよ」
出現したのは3体のヒトツメイワで、タフィたちを囲うような位置取りをしていた。
「タフィ、あんたは右のやつを、ボイヤーは左のやつをやって。うちは真ん中をやるから」
「おう」
「はい」
カリンの指示を受けて、それぞれが戦闘を開始した。
「当たらないよ」
カリンは巧みに魔法攻撃を避けながら、ヒトツメイワとの間合いを詰めていく。
「くらえっ!」
カリンは弱点であるコア目掛けて豪快に槍を投げた。
コアに槍を突き刺されたヒトツメイワは、その場に倒れ込んで消滅した。
「やりぃ」
「こっちも倒しました」
ボイヤーもファイヤーボールでヒトツメイワを粉砕していた。
「あとはタフィだけか」
カリンが目を向けると、タフィは次々と放たれる電撃やウォーターボールといった様々な魔法攻撃をバットで打ち返しているところであった。
「なんだか打撃練習してるみたいね」
タフィはなんとかヒトツメイワに当ててやろうとしていたが、魔法攻撃が矢継ぎばやに襲ってくるので、うまく狙いを定めることができないのだ。
「それにしても、あんだけスピードや軌道が違うのに、よく全部当てられるものよね」
「たぶん、色んな球種で攻められてたからですよ」
カリンの疑問にボイヤーが答えた。
「色んなって言っても、両手で数えられる程度でしょ」
「カリン姉さん、今は20種類以上あるんですよ」
「嘘、なんでそんなに増えてんの?」
「兄やん対策ですよ。兄やんから空振りを奪うために、皆次々と新しい変化球を開発していったんです。しかも同じ変化球でも、人によって変化が違いますからね。それに比べたら、魔法攻撃の変化なんてかわいいもんですよ。しかも、全部自分の方に近づいてくるってわかってるわけですから」
変化球と違って、魔法攻撃には自分から逃げていく軌道のものは存在しないうえに、すべてが自分に向かってくるので狙いが絞りやすかったのだ。
「なるほどねぇ。そう考えると、あいつの打球も攻撃向きよね」
「ですね」
カリンの意見にボイヤーも同意を示す。
「あんたみたいに弾道が高いと、打ち返したやつが相手を飛び越えていっちゃうけど、タフィはライナー性の当たりが多いから、その心配がないのよね。それに打球スピードもすごいし」
「兄やんの打球は気合入れて捕らないと、グラブがはじき飛びますからね。それに速すぎるんで、シングルヒットだと、2アウトでも二塁からかえって来れませんし」
「よっぽど俊足の奴じゃないとアレは無理よ。だいたい……あっ」
タフィが打ち返したウォーターボールは、強烈なライナーとなってヒトツメイワのコアを直撃、そのまま体を粉砕した。
「よっしゃあ!」
タフィは力強くガッツポーズをした。
「じゃ、新しいモンスターが出てくる前に、パパっと探しちゃいましょう」
「はい」
カリン、ボイヤー、そしてタフィは手分けして包丁を探したが、この場所で見つけることはできなかった。
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