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第2章 卒業試験
待ち構えし者たち
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翌日、タフィたちは魔石を探すため、再び朝一からダンジョンを訪れていた。
「うわっ……」
ダンジョンのそばまで来たところで、タフィは見知った顔を見つけて顔をしかめた。
「おっ、来たな平民」
朝日を浴びながら、アポロスが仁王立ちで待ち構えていたのだ。
「やっぱり現れたね。タフィ、どうせ無視しても無駄なんだから、ちゃちゃっと相手してやりな」
カリンはタフィの背中を軽くポンッと叩いた。
「はぁ……わかったよ。おいバカ息子、今日はなんの用だ?」
「お前、ゴッチのじじいが喜ぶものを探しているそうだな」
「……お前、俺のファンか? なんでそんなすぐ知ってんだよ」
「うるせぇ! 今度こそお前を叩きのめしてやる! おい、やってやれ」
アポロスはかたわらにいた2人の若い男女に命じた。
「待て待て待て、誰だそいつら?」
男の方は深緑色のオーバーオールに麦わら帽子と、農夫のような見た目をしており、女の方はウサギの獣人なのか、頭から長い耳が生えており、またそのかわいらしい顔とは裏腹に、手には全くかわいげのない巨大なハンマーが握られていた。
「これは俺が雇った助っ人冒険者だ。叩きのめす前に、一応紹介しておいてやろう。こっちが野菜魔法の使い手で、Dランク冒険者のジョーマ。そしてこっちがハンマーの使い手で、同じくDランク冒険者のライナだ」
「野菜魔法?」
「姉さん知ってます?」
「うちも初めて聞いた」
タフィはもちろん、ボイヤーとカリンも初めて聞く魔法だった。
「おっ、あいつら戸惑ってるな。この隙にやっちまえ!」
アポロスはしてやったりといった様子でニヤッと笑う。
「返り討ちにしてやる。ボイヤー、お前ハンマーの奴を相手してくれ。俺は野菜の奴を相手するから」
「はい」
ジョーマ&ライナとタフィ&ボイヤーによるタッグマッチのゴングが鳴った。
「突き出ろタケノコ!」
ジョーマは地面に右手をつけながら大声で叫び、魔法を解き放った。
「……来るっ!」
地中の変化を敏感に感じ取ったタフィは、タケノコが地面から顔を出す瞬間に合わせて思い切りバットをフルスイング。豪快なアッパースイングで、巨大なタケノコを見事に打ち飛ばした。
「な……」
自信を持って繰り出したタケノコを打たれ、ジョーマは軽いショックを受けた。
「何してんだ! 早く次を撃てよ!」
すかさずアポロスが檄を飛ばす。
「く、くらえカボチャ落とし」
オレンジ色をした大きなカボチャがタフィの真上に出現し、そのまま勢いよく落下する。
「おらぁっ!」
技名を聞くと同時に頭上を警戒していたタフィは、即座にカボチャに反応。ひっぱたくようなダウンスイングで、落下してくるカボチャを打ち返した。
「ギャッ!」
カボチャは鋭いライナーとなってジョーマを直撃。ジョーマはそのまま後ろにひっくり返り、タフィの勝利が確定した。
「おっしゃー!」
タフィが雄叫びをあげるなか、ボイヤーとライナの戦いも終幕に近づいている。
両者の戦闘はライナが大ジャンプでハンマー攻撃を仕掛けたところから始まり、ボイヤーがそれを横っ飛びで回避しつつしっぽビンタで反撃するなど、戦いは近距離で繰り広げられていた。
「はあぁっ!」
必殺のハンマー攻撃を放つべく、ライナは高々とジャンプし、高速縦回転をしながらタフィに迫っていく。
「く……」
回避不可能と判断したボイヤーは、鍛え上げたふさふさしっぽを盾にして攻撃を防御。
そして着地した瞬間に隙ができるのを見逃さず、ボイヤーはしゃがみ込みながらライナにアッパーをおみまいした。
「ふぐぉっ!」
ライナの体は人形のように宙を飛ぶ。
「おわっ!」
狙ったわけではないが、ライナが飛んでいった先には運悪くアポロスがおり、アポロスはライナの下敷きになった。
「やったー」
2人を倒したのを見て、ボイヤーは両手を上げて喜んだ。
「ナイスファイト。初めての対人戦としては、2人とも上出来ね」
カリンは軽く拍手をしながら2人を褒めた。
「あのタケノコには、俺も正直ちょっとビビったな。もし技名言ってなかったらヤバかったかもしんない」
「あんた、あいつが魔法を放とうとしてる時の動きはちゃんと見てたよね?」
「見てたよ」
「だったらさ、地面に手をつけた時点で、なんとなく地面絡みだなってことは想像できるじゃん。あの流れで空中からなんか来るってパターンはそうそうないから。野球だって投手の動きとかで球種を読んだりするでしょ、それと一緒よ」
「なるほどな」
「姉さん、僕の方はどうでした?」
タフィとの話が一段落したところで、今度はボイヤーが意見を求めた。
「そうねぇ、あんたはちょっと相手の間合いで戦いすぎかな。遠距離から攻撃できる技を持ってるんだから、羽ばたきで砂煙を起こしてその隙に距離を離すとか、その辺は工夫した方がいいかな」
「はい」
ボイヤーは従順な生徒のように深くうなずいた。
「……それじゃ、2人とも疲れてないようだし、ダンジョンに入ろっか」
「おう」
「はい」
倒れているアポロスたちを横目に、3人はダンジョンへと入っていった。
「うわっ……」
ダンジョンのそばまで来たところで、タフィは見知った顔を見つけて顔をしかめた。
「おっ、来たな平民」
朝日を浴びながら、アポロスが仁王立ちで待ち構えていたのだ。
「やっぱり現れたね。タフィ、どうせ無視しても無駄なんだから、ちゃちゃっと相手してやりな」
カリンはタフィの背中を軽くポンッと叩いた。
「はぁ……わかったよ。おいバカ息子、今日はなんの用だ?」
「お前、ゴッチのじじいが喜ぶものを探しているそうだな」
「……お前、俺のファンか? なんでそんなすぐ知ってんだよ」
「うるせぇ! 今度こそお前を叩きのめしてやる! おい、やってやれ」
アポロスはかたわらにいた2人の若い男女に命じた。
「待て待て待て、誰だそいつら?」
男の方は深緑色のオーバーオールに麦わら帽子と、農夫のような見た目をしており、女の方はウサギの獣人なのか、頭から長い耳が生えており、またそのかわいらしい顔とは裏腹に、手には全くかわいげのない巨大なハンマーが握られていた。
「これは俺が雇った助っ人冒険者だ。叩きのめす前に、一応紹介しておいてやろう。こっちが野菜魔法の使い手で、Dランク冒険者のジョーマ。そしてこっちがハンマーの使い手で、同じくDランク冒険者のライナだ」
「野菜魔法?」
「姉さん知ってます?」
「うちも初めて聞いた」
タフィはもちろん、ボイヤーとカリンも初めて聞く魔法だった。
「おっ、あいつら戸惑ってるな。この隙にやっちまえ!」
アポロスはしてやったりといった様子でニヤッと笑う。
「返り討ちにしてやる。ボイヤー、お前ハンマーの奴を相手してくれ。俺は野菜の奴を相手するから」
「はい」
ジョーマ&ライナとタフィ&ボイヤーによるタッグマッチのゴングが鳴った。
「突き出ろタケノコ!」
ジョーマは地面に右手をつけながら大声で叫び、魔法を解き放った。
「……来るっ!」
地中の変化を敏感に感じ取ったタフィは、タケノコが地面から顔を出す瞬間に合わせて思い切りバットをフルスイング。豪快なアッパースイングで、巨大なタケノコを見事に打ち飛ばした。
「な……」
自信を持って繰り出したタケノコを打たれ、ジョーマは軽いショックを受けた。
「何してんだ! 早く次を撃てよ!」
すかさずアポロスが檄を飛ばす。
「く、くらえカボチャ落とし」
オレンジ色をした大きなカボチャがタフィの真上に出現し、そのまま勢いよく落下する。
「おらぁっ!」
技名を聞くと同時に頭上を警戒していたタフィは、即座にカボチャに反応。ひっぱたくようなダウンスイングで、落下してくるカボチャを打ち返した。
「ギャッ!」
カボチャは鋭いライナーとなってジョーマを直撃。ジョーマはそのまま後ろにひっくり返り、タフィの勝利が確定した。
「おっしゃー!」
タフィが雄叫びをあげるなか、ボイヤーとライナの戦いも終幕に近づいている。
両者の戦闘はライナが大ジャンプでハンマー攻撃を仕掛けたところから始まり、ボイヤーがそれを横っ飛びで回避しつつしっぽビンタで反撃するなど、戦いは近距離で繰り広げられていた。
「はあぁっ!」
必殺のハンマー攻撃を放つべく、ライナは高々とジャンプし、高速縦回転をしながらタフィに迫っていく。
「く……」
回避不可能と判断したボイヤーは、鍛え上げたふさふさしっぽを盾にして攻撃を防御。
そして着地した瞬間に隙ができるのを見逃さず、ボイヤーはしゃがみ込みながらライナにアッパーをおみまいした。
「ふぐぉっ!」
ライナの体は人形のように宙を飛ぶ。
「おわっ!」
狙ったわけではないが、ライナが飛んでいった先には運悪くアポロスがおり、アポロスはライナの下敷きになった。
「やったー」
2人を倒したのを見て、ボイヤーは両手を上げて喜んだ。
「ナイスファイト。初めての対人戦としては、2人とも上出来ね」
カリンは軽く拍手をしながら2人を褒めた。
「あのタケノコには、俺も正直ちょっとビビったな。もし技名言ってなかったらヤバかったかもしんない」
「あんた、あいつが魔法を放とうとしてる時の動きはちゃんと見てたよね?」
「見てたよ」
「だったらさ、地面に手をつけた時点で、なんとなく地面絡みだなってことは想像できるじゃん。あの流れで空中からなんか来るってパターンはそうそうないから。野球だって投手の動きとかで球種を読んだりするでしょ、それと一緒よ」
「なるほどな」
「姉さん、僕の方はどうでした?」
タフィとの話が一段落したところで、今度はボイヤーが意見を求めた。
「そうねぇ、あんたはちょっと相手の間合いで戦いすぎかな。遠距離から攻撃できる技を持ってるんだから、羽ばたきで砂煙を起こしてその隙に距離を離すとか、その辺は工夫した方がいいかな」
「はい」
ボイヤーは従順な生徒のように深くうなずいた。
「……それじゃ、2人とも疲れてないようだし、ダンジョンに入ろっか」
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「はい」
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