28 / 86
第1章 北条家騒動
護衛Show
しおりを挟む
「♪隠れても無駄よ、私には、わかる。悪い奴らぁは、おしおきしなくちゃ。それが私の、役目だからぁ~」
ワミは光の壁で辰巳と夏を守りつつ、ノリノリで電撃魔法を放っていく。
普段とは趣向を変えたのか、魔法使いらしい黒服ではなく、黒い着物を身にまとい、とんがり帽子にはきらびやかな花飾りがあしらわれていた。
また今回はアカペラではなく、伴奏もセットだ。
「なんか、歌謡ショーを見ているみたいだな」
辰巳は魔法使いにお願いされ、ピアノやドラム、バイオリンなどの伴奏者を切り出していた。彼らは楽器を演奏するだけで、相手を攻撃することはない。
「歌声も素敵ですけど、音楽も素敵ですね」
夏は曲に合わせて手拍子をしている。
伴奏が加わったことで、最初の襲撃時以上にエンターテイメント感が強まっていた。
そしてこの異様な状況に、襲っている側の忍者たちは面食らっていた。
「くそっ、なんなんだこれはっ!」
リーダー格の忍者は苛立ちを露わにした。
「兄貴、どうします? このまま戦い続けたとしても、あいつを始末できるは思えないんですが……」
部下の忍者が指摘したように、眼前に立ちはだかるワミによって、忍者たちは夏に近づくことすらできていない。それどころか、魔法攻撃によって戦闘不能に陥る者が相次いでいた。
「……悔しいが、俺もそう思う。畜生、この歌のせいで調子が完全に狂った」
森の中に響いていたのは、戦闘中のBGMとしてはミスマッチとも思える演歌調の曲で、忍者たちは完全に戦闘のリズムを崩されていた。
もっともワミからすれば、これは戦闘用のBGMではなく、自身の気分を高めるために歌っているのであって、その場に合っている合っていないなどはどうでもいいことだった。
「じゃあ、撤収しますか? 今ならまだ、倒れている連中を連れて逃げ帰ることができそうですから」
部下の忍者からの問いかけに、リーダー格の忍者は悔しさを滲ませながら答えた。
「……是非もないか。助かるものを見捨てていくわけにはいかないからな」
そう言うと、仲間に向かって口笛で撤収の指示を出した。
「これで任務の失敗が確定か……。任務遂行のためなら、犠牲を無視して行動すべきなんだろうが、俺にその判断はできないな……」
「それが兄貴の良いところですよ」
「なんだ、お前まだそこにいたのか」
「へへっ。兄貴がそう思ってくれているからこそ、俺らは安心して兄貴に命を預けられるんですよ。だからその……落ち込まないでください」
部下の忍者が、普段見せないような真面目な顔で心配しているのを見て、リーダー格の忍者は思わず吹き出した。
「ぷっ! 真面目な顔が似合わねぇな。けど、お前の気持ちはわかったから、さっさと行け」
部下の忍者はうなずくと、負傷している仲間のもとへ向かった。
「さて、永島のオヤジになんて言い訳するかな」
リーダー格の忍者が見つめる先では、仲間の忍者たちが煙幕の展開や負傷者の回収などを行い、素早く撤収作業を進めていく。
「♪逃げたいのなら、お逃げなさぁい。去るぅもぉのに、去るぅもぉのに、興味はないかぁら~」
煙幕によって周囲の視界は奪われていたが、その意図を察しているワミは、平然と歌い続ける。
無論警戒は全く怠っておらず、忍者たちが逃げ去っていった方向とは真逆の位置から、毒矢が放たれるのを察知するや、すぐさまそれを叩き落した。
「けどね、かかってくるのなら、お相手いたすわ。その時は、逃がしはしませんから。覚悟してください」
ワミは演歌によくあるセリフのような歌い回しをすると、攻撃してきた忍者を魔法で痺れさせた。
「くっ、しくじったか。かくなるうえは」
虜囚になることを恐れた忍者は、舌を噛んで自害しようとした。
「♪ねぇ、言ったでしょ。逃がしは、しないって。たとえ、それが、たとえ、それが、黄泉の国であぁってもぉ~」
ワミは直感で異変に気づくや、間髪入れずに二の矢となる攻撃を放ち、ギリギリのところで忍者の自害を阻止し、身柄を拘束した。
「♪これで最後かしら。仇なす者は、仇なす者は、もういないみたいね~。それならこれにて、私の役目も、終りでしょう」
ゆっくりと頭を下げるワミに向かって、辰巳と夏は大きな拍手を送る。
それを見て伴奏者たちも役目を終えたことを察し、二人に向かってお辞儀をすると、楽器とともにスーッと姿を消していった。
ワミは光の壁で辰巳と夏を守りつつ、ノリノリで電撃魔法を放っていく。
普段とは趣向を変えたのか、魔法使いらしい黒服ではなく、黒い着物を身にまとい、とんがり帽子にはきらびやかな花飾りがあしらわれていた。
また今回はアカペラではなく、伴奏もセットだ。
「なんか、歌謡ショーを見ているみたいだな」
辰巳は魔法使いにお願いされ、ピアノやドラム、バイオリンなどの伴奏者を切り出していた。彼らは楽器を演奏するだけで、相手を攻撃することはない。
「歌声も素敵ですけど、音楽も素敵ですね」
夏は曲に合わせて手拍子をしている。
伴奏が加わったことで、最初の襲撃時以上にエンターテイメント感が強まっていた。
そしてこの異様な状況に、襲っている側の忍者たちは面食らっていた。
「くそっ、なんなんだこれはっ!」
リーダー格の忍者は苛立ちを露わにした。
「兄貴、どうします? このまま戦い続けたとしても、あいつを始末できるは思えないんですが……」
部下の忍者が指摘したように、眼前に立ちはだかるワミによって、忍者たちは夏に近づくことすらできていない。それどころか、魔法攻撃によって戦闘不能に陥る者が相次いでいた。
「……悔しいが、俺もそう思う。畜生、この歌のせいで調子が完全に狂った」
森の中に響いていたのは、戦闘中のBGMとしてはミスマッチとも思える演歌調の曲で、忍者たちは完全に戦闘のリズムを崩されていた。
もっともワミからすれば、これは戦闘用のBGMではなく、自身の気分を高めるために歌っているのであって、その場に合っている合っていないなどはどうでもいいことだった。
「じゃあ、撤収しますか? 今ならまだ、倒れている連中を連れて逃げ帰ることができそうですから」
部下の忍者からの問いかけに、リーダー格の忍者は悔しさを滲ませながら答えた。
「……是非もないか。助かるものを見捨てていくわけにはいかないからな」
そう言うと、仲間に向かって口笛で撤収の指示を出した。
「これで任務の失敗が確定か……。任務遂行のためなら、犠牲を無視して行動すべきなんだろうが、俺にその判断はできないな……」
「それが兄貴の良いところですよ」
「なんだ、お前まだそこにいたのか」
「へへっ。兄貴がそう思ってくれているからこそ、俺らは安心して兄貴に命を預けられるんですよ。だからその……落ち込まないでください」
部下の忍者が、普段見せないような真面目な顔で心配しているのを見て、リーダー格の忍者は思わず吹き出した。
「ぷっ! 真面目な顔が似合わねぇな。けど、お前の気持ちはわかったから、さっさと行け」
部下の忍者はうなずくと、負傷している仲間のもとへ向かった。
「さて、永島のオヤジになんて言い訳するかな」
リーダー格の忍者が見つめる先では、仲間の忍者たちが煙幕の展開や負傷者の回収などを行い、素早く撤収作業を進めていく。
「♪逃げたいのなら、お逃げなさぁい。去るぅもぉのに、去るぅもぉのに、興味はないかぁら~」
煙幕によって周囲の視界は奪われていたが、その意図を察しているワミは、平然と歌い続ける。
無論警戒は全く怠っておらず、忍者たちが逃げ去っていった方向とは真逆の位置から、毒矢が放たれるのを察知するや、すぐさまそれを叩き落した。
「けどね、かかってくるのなら、お相手いたすわ。その時は、逃がしはしませんから。覚悟してください」
ワミは演歌によくあるセリフのような歌い回しをすると、攻撃してきた忍者を魔法で痺れさせた。
「くっ、しくじったか。かくなるうえは」
虜囚になることを恐れた忍者は、舌を噛んで自害しようとした。
「♪ねぇ、言ったでしょ。逃がしは、しないって。たとえ、それが、たとえ、それが、黄泉の国であぁってもぉ~」
ワミは直感で異変に気づくや、間髪入れずに二の矢となる攻撃を放ち、ギリギリのところで忍者の自害を阻止し、身柄を拘束した。
「♪これで最後かしら。仇なす者は、仇なす者は、もういないみたいね~。それならこれにて、私の役目も、終りでしょう」
ゆっくりと頭を下げるワミに向かって、辰巳と夏は大きな拍手を送る。
それを見て伴奏者たちも役目を終えたことを察し、二人に向かってお辞儀をすると、楽器とともにスーッと姿を消していった。
0
あなたにおすすめの小説
アラフォー幼女は異世界で大魔女を目指します
梅丸みかん
ファンタジー
第一章:長期休暇をとったアラフォー独身のミカは、登山へ行くと別の世界へ紛れ込んでしまう。その場所は、森の中にそびえる不思議な塔の一室だった。元の世界には戻れないし、手にしたゼリーを口にすれば、身体はなんと6歳の子どもに――。
ミカが封印の箱を開けると、そこから出てきたのは呪いによって人形にされた大魔女だった。その人形に「大魔女の素質がある」と告げられたミカは、どうせ元の世界に戻れないなら、大魔女を目指すことを決心する。
だが、人形師匠はとんでもなく自由すぎる。ミカは師匠に翻弄されまくるのだった。
第二章:巷で流れる大魔女の遺産の噂。その裏にある帝國の侵略の懸念。ミカは次第にその渦に巻き込まれていく。
第三章:異世界で唯一の友人ルカが消えた。その裏には保護部屋の存在が関わっていることが示唆され、ミカは潜入捜査に挑むことになるのだった。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
若返ったオバさんは異世界でもうどん職人になりました
mabu
ファンタジー
聖女召喚に巻き込まれた普通のオバさんが無能なスキルと判断され追放されるが国から貰ったお金と隠されたスキルでお店を開き気ままにのんびりお気楽生活をしていくお話。
なるべく1日1話進めていたのですが仕事で不規則な時間になったり投稿も不規則になり週1や月1になるかもしれません。
不定期投稿になりますが宜しくお願いします🙇
感想、ご指摘もありがとうございます。
なるべく修正など対応していきたいと思っていますが皆様の広い心でスルーして頂きたくお願い致します。
読み進めて不快になる場合は履歴削除をして頂けると有り難いです。
お返事は何方様に対しても控えさせて頂きますのでご了承下さいます様、お願い致します。
莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ
翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL
十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。
高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。
そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。
要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。
曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。
その額なんと、50億円。
あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。
だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。
だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる