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第1章 北条家騒動
しゃべるものども
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「いかにも、儂は壺である」
「しゃべった」
辰巳は念のために壺を持って調べてみたが、しゃべること以外に変わった点は見受けられなかった。
「お主、いきなりジロジロと見回すのは失礼ではないか」
「すいません」
辰巳は壺をそっと地面に置いた。
「それで、儂に何の用だ?」
「用?」
「お主が疑問に思ってどうする。特に用がないのなら儂は帰るが、いいか?」
「あ、はい」
辰巳がうなずくと、壺はスーッと姿を消した。
「ユノウの言うとおりみたいだね」
「たぶん、召喚獣みたいな扱いなんでしょう」
「なるほどねぇ。じゃあ、花火を切ったら、『たまや~』とか言いながら出てくるのかな」
気になった辰巳が、新しい紙を出すためにアタッシュケースに手を伸ばした瞬間、まるで自らの存在をアピールするかのように、クラクションが鳴った。
「あのぉ、僕は用あるんでしょうか?」
迎は完全に放置されていた。
「あ、ごめんごめん。迎さんにはちゃんと用があるから。とりあえず、ドア開けてもらえるかな?」
辰巳は両手を合わせて迎に謝った。
「わかりました」
二人は迎に乗り込むと、自然な流れでユノウが運転席に、辰巳がドア脇の席に座った。
「えっと、アクセルにブレーキ、メーター、特に問題はなさそうだね。……マニュアル車運転するなんて久しぶり」
ユノウはハンドルを握り、ゆっくりとアクセルを踏んだ。
「これ、スピード出したら酔いそうなんだけど」
ガタガタと揺れながら、迎は低速で草むらを進んでいく。
「それはしょうがないですよ。ここ、ただの草むらですから」
軽く運転感覚の確認ができたところで、ユノウは迎を止めた。
「とりあえず、運転は大丈夫ですね。まぁ、問題があるとすれば、あたしがずっと運転しなきゃいけないことぐらいですかね」
その言葉に迎が反応する。
「あ、道教えてくれれば、僕自分で走りますから」
「え、自走できるの?」
「できますよ」
迎は軽くエンジンをふかすと、そのままゆっくりと動き出した。
「本当だ、普通に走ってる」
「なので運転が大変でしたら、任せてもらっても構いませんよ」
「……」
「ユノウさん?」
「……あ、ごめんごめん。もう、止めていいよ」
迎はその場に停車し、二人は外へ出た。
「これで移動手段は決定かな」
「……」
「ユノウ?」
「え? あ、そうですね」
「……じゃ、迎さん、また明日呼ぶから、その時はよろしく」
「わかりました。では、失礼します」
迎は別れの挨拶として軽くクラクションを鳴らし、姿を消した。
「ところで、さっきからずっと何を考えているの?」
「……乗り物自体が運転してくれるのであれば、別に車にこだわる必要はないんじゃないかなぁって」
二人は移動手段について、自分たちが運転することを前提にして考えていたため、車以外の乗り物は候補から外していた。
「あぁ、確かに」
「例えばヘリコプターとか飛行機なら、小田原なんてあっという間ですよ。ちょっと、試しにヘリコプター切ってもらえませんか?」
「ヘリコプター……うーん、わかった」
プロペラ部分に多少手こずりつつも、辰巳は見事に形を切り上げた。
「出でよ、ヘリコプター!」
現れたのは、やや大型で流線形の機体をもったヘリコプターだ。
「やぁ、呼んだのは君たちかい?」
ヘリコプターは軽い感じで二人に挨拶した。
「はい。早速ですけど、乗りたいんでドア開けてもらえますか?」
「オーケー」
コックピットと客室、双方のドアが開く。
「俺、こっち乗るから」
今度は辰巳が操縦席に座り、ユノウが客席に座った。
「おぉっ!」
ずらっと並ぶ計器類や操縦桿を見て、辰巳のテンションが一気に上がる。
「辰巳さんって、ヘリ乗るの初めてですか?」
「初めて初めて。ユノウは?」
「あたしは伊豆諸島へ行った時に乗ったことがあります。その時乗ったヘリも、客室はこんな感じでしたね」
ユノウが座っているのは一番後ろに設置された四人掛けシートで、前二列には通路を挟むかたちで一人掛けシートと二人掛けシートが設置されている。座席のシートピッチは狭く、ひざまわりは少し窮屈だった。
「それで、操縦は君がするの?」
ヘリコプターからの質問に対し、辰巳は右手を左右に振った。
「いや、しませんしません。操縦は全部お任せします」
「オーケー。じゃあ、腕前を披露する意味も込めて、一回飛んでみよう。二人とも、シートベルトを着用してくださぁい」
ヘリコプターがドアを閉めてエンジンを起動させるや、プロペラが大きな音を立てて回転を始めた。
「すげぇエンジン音」
「そりゃそうですよ、プロペラの真下にいるんですから」
「じゃあ、飛ぶよ。テイクオフ」
合図と同時に、ヘリコプターは凄まじい風を巻き起こしながら原っぱを離陸した。
「おー、飛んでる飛んでる」
辰巳は興奮を隠しきれない。
「耳栓のストックってあったかなぁ?」
ユノウは窓の外には見向きもせず、初ヘリに戸惑うであろう夏たちへの対応について考えていた。
「この辺を軽く旋回するね」
ヘリコプターは五分ほど夜空を飛行した後、元の場所に着陸した。
「二人とも、空の散歩はいかがだったかな?」
「最高っ」
「良かったです。それに座席の方も問題ないですね」
こうして、小田原への移動手段はヘリコプターに決定した。
「しゃべった」
辰巳は念のために壺を持って調べてみたが、しゃべること以外に変わった点は見受けられなかった。
「お主、いきなりジロジロと見回すのは失礼ではないか」
「すいません」
辰巳は壺をそっと地面に置いた。
「それで、儂に何の用だ?」
「用?」
「お主が疑問に思ってどうする。特に用がないのなら儂は帰るが、いいか?」
「あ、はい」
辰巳がうなずくと、壺はスーッと姿を消した。
「ユノウの言うとおりみたいだね」
「たぶん、召喚獣みたいな扱いなんでしょう」
「なるほどねぇ。じゃあ、花火を切ったら、『たまや~』とか言いながら出てくるのかな」
気になった辰巳が、新しい紙を出すためにアタッシュケースに手を伸ばした瞬間、まるで自らの存在をアピールするかのように、クラクションが鳴った。
「あのぉ、僕は用あるんでしょうか?」
迎は完全に放置されていた。
「あ、ごめんごめん。迎さんにはちゃんと用があるから。とりあえず、ドア開けてもらえるかな?」
辰巳は両手を合わせて迎に謝った。
「わかりました」
二人は迎に乗り込むと、自然な流れでユノウが運転席に、辰巳がドア脇の席に座った。
「えっと、アクセルにブレーキ、メーター、特に問題はなさそうだね。……マニュアル車運転するなんて久しぶり」
ユノウはハンドルを握り、ゆっくりとアクセルを踏んだ。
「これ、スピード出したら酔いそうなんだけど」
ガタガタと揺れながら、迎は低速で草むらを進んでいく。
「それはしょうがないですよ。ここ、ただの草むらですから」
軽く運転感覚の確認ができたところで、ユノウは迎を止めた。
「とりあえず、運転は大丈夫ですね。まぁ、問題があるとすれば、あたしがずっと運転しなきゃいけないことぐらいですかね」
その言葉に迎が反応する。
「あ、道教えてくれれば、僕自分で走りますから」
「え、自走できるの?」
「できますよ」
迎は軽くエンジンをふかすと、そのままゆっくりと動き出した。
「本当だ、普通に走ってる」
「なので運転が大変でしたら、任せてもらっても構いませんよ」
「……」
「ユノウさん?」
「……あ、ごめんごめん。もう、止めていいよ」
迎はその場に停車し、二人は外へ出た。
「これで移動手段は決定かな」
「……」
「ユノウ?」
「え? あ、そうですね」
「……じゃ、迎さん、また明日呼ぶから、その時はよろしく」
「わかりました。では、失礼します」
迎は別れの挨拶として軽くクラクションを鳴らし、姿を消した。
「ところで、さっきからずっと何を考えているの?」
「……乗り物自体が運転してくれるのであれば、別に車にこだわる必要はないんじゃないかなぁって」
二人は移動手段について、自分たちが運転することを前提にして考えていたため、車以外の乗り物は候補から外していた。
「あぁ、確かに」
「例えばヘリコプターとか飛行機なら、小田原なんてあっという間ですよ。ちょっと、試しにヘリコプター切ってもらえませんか?」
「ヘリコプター……うーん、わかった」
プロペラ部分に多少手こずりつつも、辰巳は見事に形を切り上げた。
「出でよ、ヘリコプター!」
現れたのは、やや大型で流線形の機体をもったヘリコプターだ。
「やぁ、呼んだのは君たちかい?」
ヘリコプターは軽い感じで二人に挨拶した。
「はい。早速ですけど、乗りたいんでドア開けてもらえますか?」
「オーケー」
コックピットと客室、双方のドアが開く。
「俺、こっち乗るから」
今度は辰巳が操縦席に座り、ユノウが客席に座った。
「おぉっ!」
ずらっと並ぶ計器類や操縦桿を見て、辰巳のテンションが一気に上がる。
「辰巳さんって、ヘリ乗るの初めてですか?」
「初めて初めて。ユノウは?」
「あたしは伊豆諸島へ行った時に乗ったことがあります。その時乗ったヘリも、客室はこんな感じでしたね」
ユノウが座っているのは一番後ろに設置された四人掛けシートで、前二列には通路を挟むかたちで一人掛けシートと二人掛けシートが設置されている。座席のシートピッチは狭く、ひざまわりは少し窮屈だった。
「それで、操縦は君がするの?」
ヘリコプターからの質問に対し、辰巳は右手を左右に振った。
「いや、しませんしません。操縦は全部お任せします」
「オーケー。じゃあ、腕前を披露する意味も込めて、一回飛んでみよう。二人とも、シートベルトを着用してくださぁい」
ヘリコプターがドアを閉めてエンジンを起動させるや、プロペラが大きな音を立てて回転を始めた。
「すげぇエンジン音」
「そりゃそうですよ、プロペラの真下にいるんですから」
「じゃあ、飛ぶよ。テイクオフ」
合図と同時に、ヘリコプターは凄まじい風を巻き起こしながら原っぱを離陸した。
「おー、飛んでる飛んでる」
辰巳は興奮を隠しきれない。
「耳栓のストックってあったかなぁ?」
ユノウは窓の外には見向きもせず、初ヘリに戸惑うであろう夏たちへの対応について考えていた。
「この辺を軽く旋回するね」
ヘリコプターは五分ほど夜空を飛行した後、元の場所に着陸した。
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こうして、小田原への移動手段はヘリコプターに決定した。
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