紙切り道中異世界見聞録

いんじんリュウキ

文字の大きさ
39 / 86
第1章 北条家騒動

何で移動しようかな?

しおりを挟む
「これくらいの光で大丈夫ですか?」

 ユノウは懐中電灯で辰巳の手元を照らした。

「うーん……まぁ、いいか。で、どんなのを切ったらいいんだ?」

「小田原へ行くのはあたしと辰巳さん、夏ちゃん、奈々ちゃん、吉右衛門さん、仁仙さんの六人ってとこでしょうから、シンプルに考えればミニバン、余裕を持たせるならマイクロバスって感じですかね」

「マイクロバス? 俺そんなでかい車運転したことないよ」

「ご心配なく。昔トラックを運転していたんで、大型車の運転は任せてください。あ、ちなみにこれがその時の相棒です」

 ユノウはレッグポーチから一枚の写真を取り出した。

「おぉっ」

 写真には、電飾を組み込んだシートキャリアやフロントバンパーなどを装着したド派手なデコトラと、その前でピースサインをするユノウの姿が写っていた。

「荷台に荒波と鯛の絵を描いていたんで、仲間連中からは”乙姫”ってあだ名で呼ばれてたんですよ」

「へぇ。これって、いくらくらいかかってるの?」

「正確には覚えてないですけど、一〇〇〇万くらいはかかってますかね」

「一〇〇〇万……。このトラック、その中に入ってないの?」

「さすがに処分しましたよ。家具なんかと違って、持ってるだけで保険とか税金がかかりますからね」

「そっかぁ、本物見たかったな」

 辰巳は残念そうに写真をユノウに返すと、アタッシュケースから紙とハサミを取り出し、手早く形を切り始めた。

「何を切ることにしたんですか?」

「マイクロバス」

「ちなみになんですけど、そういうお題をふられることってありました?」

「さすがにマイクロバスはないなぁ。乗り物だと鉄道系が多いかなぁ、新幹線とかSLとかね」

 シンプルな形だったこともあって、辰巳はあっという間に切り終えた。

「出でよ、マイクロバス!」

 眩い光とともに姿を現したのは、テレビのロケバスやホテルなどの送迎バスとして使われていそうな感じのマイクロバスだった。

「見た感じは普通そうだなぁ」

「ですね」

 辰巳とユノウが近づいていくと、突然パッとヘッドライトが光り、クラクションが鳴り響いた。

「おわっ!」

「きゃっ!」

 二人は驚いてその場に立ち止まり、恐る恐るバスの運転席を見たが、そこには誰もいなかった。

「ごめんなさい。挨拶のつもりだったんですけど、驚かせちゃったみたいですね。初めまして、僕はバスのむかいです」

 その声は、バスのフロント部分あたりから聞こえてきた。

「……自動放送って感じではないな。こっちの世界だと、バスみたいなのも普通にしゃべったりするの?」

「いえ、さすがにそこまでファンタジーじゃないですから、なんでもかんでも普通にしゃべったりはしませんよ」

「じゃあ、このバスが特別ってこと?」

「まぁ、特別っていえば特別ですよね。辰巳さんが魔法で生み出したようなものですから。あ、もしかしたら、辰巳さんが切ったものは意思を持って現れるのかもしれませんよ。今までに切ったやつだって、全部普通にしゃべってたじゃないですか」

「いや、そう言われればそうだけどさ。俺が切ったのって、騎馬武者とか魔法使いとか、全部意思を持ってるのが当たり前のやつだったじゃん」

「じゃあ、試しに何か無機物的なものを切ってみましょうよ。あ、壺なんてどうですか?」

「壺ねぇ……」

 辰巳は言われるがままに壺の形を切った。

「出でよ、壺」

 呼ばれて現れたのは、三〇センチほどの高さがある陶器の壺であった。

「……」

 辰巳は三〇秒ほど様子を見たが、特に動いたりする素振りはなかった。

「……もしもし、壺さんでしょうか?」

 辰巳は壺に向かって声をかけてみた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

アラフォー幼女は異世界で大魔女を目指します

梅丸みかん
ファンタジー
第一章:長期休暇をとったアラフォー独身のミカは、登山へ行くと別の世界へ紛れ込んでしまう。その場所は、森の中にそびえる不思議な塔の一室だった。元の世界には戻れないし、手にしたゼリーを口にすれば、身体はなんと6歳の子どもに――。 ミカが封印の箱を開けると、そこから出てきたのは呪いによって人形にされた大魔女だった。その人形に「大魔女の素質がある」と告げられたミカは、どうせ元の世界に戻れないなら、大魔女を目指すことを決心する。 だが、人形師匠はとんでもなく自由すぎる。ミカは師匠に翻弄されまくるのだった。 第二章:巷で流れる大魔女の遺産の噂。その裏にある帝國の侵略の懸念。ミカは次第にその渦に巻き込まれていく。 第三章:異世界で唯一の友人ルカが消えた。その裏には保護部屋の存在が関わっていることが示唆され、ミカは潜入捜査に挑むことになるのだった。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

若返ったオバさんは異世界でもうどん職人になりました

mabu
ファンタジー
聖女召喚に巻き込まれた普通のオバさんが無能なスキルと判断され追放されるが国から貰ったお金と隠されたスキルでお店を開き気ままにのんびりお気楽生活をしていくお話。 なるべく1日1話進めていたのですが仕事で不規則な時間になったり投稿も不規則になり週1や月1になるかもしれません。 不定期投稿になりますが宜しくお願いします🙇 感想、ご指摘もありがとうございます。 なるべく修正など対応していきたいと思っていますが皆様の広い心でスルーして頂きたくお願い致します。 読み進めて不快になる場合は履歴削除をして頂けると有り難いです。 お返事は何方様に対しても控えさせて頂きますのでご了承下さいます様、お願い致します。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL 十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。 高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。 そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。 要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。 曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。 その額なんと、50億円。 あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。 だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。 だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

処理中です...