紙切り道中異世界見聞録

いんじんリュウキ

文字の大きさ
59 / 86
第2章 北条家戦争

初戦は空中にて

しおりを挟む
「ソーリー、もう少しでお城だけど、そこからはどう飛んだらいいんだい?」

 ヘリコプターが辰巳たちに聞いてきた。

「あ、お城にはそんなに近づかなくていいんで、ぐるっと外周を飛んでください」

「オーケー」

 ユノウの指示を受けて、ヘリコプターは針路を変更する。

「あれが江戸城か。なんか、思った以上に小さいな」

 江戸城の天守閣は層塔型三層三階の建物で、辰巳が時代劇などで見てきたものよりもかなり小ぶりなサイズだった。

「ここでは北条家の支城に過ぎませんからね。江戸時代みたいな巨大なものは建てないですよ」

 ユノウが理由を説明する。

「なるほどね。お、なんか甲冑を付けた妖怪がいっぱいいるな」

 城内では、大勢の妖怪たちが合戦の準備を進めていた。

「どうやら、氏吉は本気で戦を仕掛けるつもりなんだな……しかし、先ほどからもののけの姿しか見えんが、家臣たちは大丈夫なのか?」

 吉右衛門は言い知れぬ不安にさいなまれた。

「……ん、なんか飛び上がったけど、あれは……提灯?」

 辰巳が発見したのは、宙を舞うひとつ目の提灯妖怪だった。

「空を飛ぶもののけか。スパシアル殿、十分に気をつけられよ」

 吉右衛門はヘリコプターに注意を促す。なお、スパシアルとはヘリコプターの名前である。

「オーケー」

 スパシアルは不用意に近づかないようにしていたが、提灯妖怪は徐々に距離を詰めてきていた。

「あれ、雷門の提灯くらいでかいんじゃないの」

 提灯妖怪は辰巳が思っていた以上に巨大だった。

「単なる威嚇か、それとも攻撃を仕掛けてくるのか、いずれにしても、そろそろ撤退した方がよさそうですね」

 提灯妖怪との距離が三〇〇メートルほどまでに近づいたところで、ユノウは撤退の考えを示す。

「確かに頃合いかもしれんな」

「俺も逃げた方がいいと思う」

 吉右衛門と辰巳もその考えに同意する。

「じゃ、撤退しましょう。スパシアルさん、小田原へ引き返してください」

「オーケー」

 スパシアルが小田原へ向けて針路を変え始めると、逃がすかとばかりに提灯妖怪は一気に加速し、口を開くかのように上下がパックリと割れる。

「マズい、スパシアルさん、全速力で逃げて!」

 提灯妖怪の動きを見たユノウは大声で叫ぶ。

「オ、オーケー」

 スパシアルは一気にスピードを上げて離脱を図る。

 その直後、提灯妖怪から火炎放射が放たれた。

「わ!?」

 驚く辰巳。

 だが、ギリギリのところで炎は届かなかった。

「危ねぇとこだったな……」

 後方を見ると、提灯妖怪が追いかけてきているようだったが、その姿はどんどんと小さくなっており、やがて完全に見えなくなった。

「どうやら振り切ったようだな。それにしても、あのようなものまでいるとは、これは、生半可な戦い方では勝てんかもしれんぞ……」

 吉右衛門は険しい表情を浮かべつつ、これからどうすべきか改めて考え始めていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

アラフォー幼女は異世界で大魔女を目指します

梅丸みかん
ファンタジー
第一章:長期休暇をとったアラフォー独身のミカは、登山へ行くと別の世界へ紛れ込んでしまう。その場所は、森の中にそびえる不思議な塔の一室だった。元の世界には戻れないし、手にしたゼリーを口にすれば、身体はなんと6歳の子どもに――。 ミカが封印の箱を開けると、そこから出てきたのは呪いによって人形にされた大魔女だった。その人形に「大魔女の素質がある」と告げられたミカは、どうせ元の世界に戻れないなら、大魔女を目指すことを決心する。 だが、人形師匠はとんでもなく自由すぎる。ミカは師匠に翻弄されまくるのだった。 第二章:巷で流れる大魔女の遺産の噂。その裏にある帝國の侵略の懸念。ミカは次第にその渦に巻き込まれていく。 第三章:異世界で唯一の友人ルカが消えた。その裏には保護部屋の存在が関わっていることが示唆され、ミカは潜入捜査に挑むことになるのだった。

辺境で静かに暮らしていた俺、実は竜王の末裔だったらしく気づけば国ができていた

平木明日香
ファンタジー
はるか五億四千万年前、この星は六柱の竜王によって治められていた。火・水・風・土・闇・光――それぞれの力が均衡を保ち、世界は一つの大きな生命のように静かに巡っていた。だが星の異変をきっかけに竜の力は揺らぎ、その欠片は“魂”となって新たな生命に宿る。やがて誕生した人類は文明を築き、竜の力を利用し、ついには六大陸そのものを巨大な封印装置へと変えて竜王を眠りにつかせた。 それから幾千年。 現代では六つの大国がそれぞれ封印を管理し、かろうじて世界の均衡を保っている。しかし各地で異常な魔獣が出現し、封印の揺らぎが噂されはじめていた。 そんな世界を気ままに旅する青年がいる。名はブラック・ドラグニル。三年前からハンターとして魔獣を討伐し、その肉を味わいながら各地を渡り歩く放浪者だ。規格外の実力を持ちながら名誉や地位には興味がなく、ただ「世界のうまいものを食べ尽くす」ことを楽しみに生きている。 ある日、光の王国ルミナリア近郊で王女ユリアナが大型魔獣に襲われる事件が起きる。死を覚悟した騎士団の前に現れたブラックは、その怪物をわずか数十秒で討ち倒す。彼にとっては雑魚同然だったが、その圧倒的な強さは王国中に知れ渡る。王女は自由に生きる彼の姿に心を奪われるが、ブラックは次の目的地へ向かう計画を練るばかり。 だが彼自身はまだ知らない。 自らが竜族の末裔であり、世界を再び“統合”へ導く鍵となる存在であることを。 竜の封印が揺らぐとき、自由を愛する青年は世界の命運を左右する選択を迫られる。 これは、竜の記憶と人の魂が交錯する壮大なファンタジー叙事譚である。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

若返ったオバさんは異世界でもうどん職人になりました

mabu
ファンタジー
聖女召喚に巻き込まれた普通のオバさんが無能なスキルと判断され追放されるが国から貰ったお金と隠されたスキルでお店を開き気ままにのんびりお気楽生活をしていくお話。 なるべく1日1話進めていたのですが仕事で不規則な時間になったり投稿も不規則になり週1や月1になるかもしれません。 不定期投稿になりますが宜しくお願いします🙇 感想、ご指摘もありがとうございます。 なるべく修正など対応していきたいと思っていますが皆様の広い心でスルーして頂きたくお願い致します。 読み進めて不快になる場合は履歴削除をして頂けると有り難いです。 お返事は何方様に対しても控えさせて頂きますのでご了承下さいます様、お願い致します。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL 十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。 高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。 そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。 要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。 曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。 その額なんと、50億円。 あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。 だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。 だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

処理中です...