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第2章 北条家戦争
初戦は空中にて
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「ソーリー、もう少しでお城だけど、そこからはどう飛んだらいいんだい?」
ヘリコプターが辰巳たちに聞いてきた。
「あ、お城にはそんなに近づかなくていいんで、ぐるっと外周を飛んでください」
「オーケー」
ユノウの指示を受けて、ヘリコプターは針路を変更する。
「あれが江戸城か。なんか、思った以上に小さいな」
江戸城の天守閣は層塔型三層三階の建物で、辰巳が時代劇などで見てきたものよりもかなり小ぶりなサイズだった。
「ここでは北条家の支城に過ぎませんからね。江戸時代みたいな巨大なものは建てないですよ」
ユノウが理由を説明する。
「なるほどね。お、なんか甲冑を付けた妖怪がいっぱいいるな」
城内では、大勢の妖怪たちが合戦の準備を進めていた。
「どうやら、氏吉は本気で戦を仕掛けるつもりなんだな……しかし、先ほどからもののけの姿しか見えんが、家臣たちは大丈夫なのか?」
吉右衛門は言い知れぬ不安にさいなまれた。
「……ん、なんか飛び上がったけど、あれは……提灯?」
辰巳が発見したのは、宙を舞うひとつ目の提灯妖怪だった。
「空を飛ぶもののけか。スパシアル殿、十分に気をつけられよ」
吉右衛門はヘリコプターに注意を促す。なお、スパシアルとはヘリコプターの名前である。
「オーケー」
スパシアルは不用意に近づかないようにしていたが、提灯妖怪は徐々に距離を詰めてきていた。
「あれ、雷門の提灯くらいでかいんじゃないの」
提灯妖怪は辰巳が思っていた以上に巨大だった。
「単なる威嚇か、それとも攻撃を仕掛けてくるのか、いずれにしても、そろそろ撤退した方がよさそうですね」
提灯妖怪との距離が三〇〇メートルほどまでに近づいたところで、ユノウは撤退の考えを示す。
「確かに頃合いかもしれんな」
「俺も逃げた方がいいと思う」
吉右衛門と辰巳もその考えに同意する。
「じゃ、撤退しましょう。スパシアルさん、小田原へ引き返してください」
「オーケー」
スパシアルが小田原へ向けて針路を変え始めると、逃がすかとばかりに提灯妖怪は一気に加速し、口を開くかのように上下がパックリと割れる。
「マズい、スパシアルさん、全速力で逃げて!」
提灯妖怪の動きを見たユノウは大声で叫ぶ。
「オ、オーケー」
スパシアルは一気にスピードを上げて離脱を図る。
その直後、提灯妖怪から火炎放射が放たれた。
「わ!?」
驚く辰巳。
だが、ギリギリのところで炎は届かなかった。
「危ねぇとこだったな……」
後方を見ると、提灯妖怪が追いかけてきているようだったが、その姿はどんどんと小さくなっており、やがて完全に見えなくなった。
「どうやら振り切ったようだな。それにしても、あのようなものまでいるとは、これは、生半可な戦い方では勝てんかもしれんぞ……」
吉右衛門は険しい表情を浮かべつつ、これからどうすべきか改めて考え始めていた。
ヘリコプターが辰巳たちに聞いてきた。
「あ、お城にはそんなに近づかなくていいんで、ぐるっと外周を飛んでください」
「オーケー」
ユノウの指示を受けて、ヘリコプターは針路を変更する。
「あれが江戸城か。なんか、思った以上に小さいな」
江戸城の天守閣は層塔型三層三階の建物で、辰巳が時代劇などで見てきたものよりもかなり小ぶりなサイズだった。
「ここでは北条家の支城に過ぎませんからね。江戸時代みたいな巨大なものは建てないですよ」
ユノウが理由を説明する。
「なるほどね。お、なんか甲冑を付けた妖怪がいっぱいいるな」
城内では、大勢の妖怪たちが合戦の準備を進めていた。
「どうやら、氏吉は本気で戦を仕掛けるつもりなんだな……しかし、先ほどからもののけの姿しか見えんが、家臣たちは大丈夫なのか?」
吉右衛門は言い知れぬ不安にさいなまれた。
「……ん、なんか飛び上がったけど、あれは……提灯?」
辰巳が発見したのは、宙を舞うひとつ目の提灯妖怪だった。
「空を飛ぶもののけか。スパシアル殿、十分に気をつけられよ」
吉右衛門はヘリコプターに注意を促す。なお、スパシアルとはヘリコプターの名前である。
「オーケー」
スパシアルは不用意に近づかないようにしていたが、提灯妖怪は徐々に距離を詰めてきていた。
「あれ、雷門の提灯くらいでかいんじゃないの」
提灯妖怪は辰巳が思っていた以上に巨大だった。
「単なる威嚇か、それとも攻撃を仕掛けてくるのか、いずれにしても、そろそろ撤退した方がよさそうですね」
提灯妖怪との距離が三〇〇メートルほどまでに近づいたところで、ユノウは撤退の考えを示す。
「確かに頃合いかもしれんな」
「俺も逃げた方がいいと思う」
吉右衛門と辰巳もその考えに同意する。
「じゃ、撤退しましょう。スパシアルさん、小田原へ引き返してください」
「オーケー」
スパシアルが小田原へ向けて針路を変え始めると、逃がすかとばかりに提灯妖怪は一気に加速し、口を開くかのように上下がパックリと割れる。
「マズい、スパシアルさん、全速力で逃げて!」
提灯妖怪の動きを見たユノウは大声で叫ぶ。
「オ、オーケー」
スパシアルは一気にスピードを上げて離脱を図る。
その直後、提灯妖怪から火炎放射が放たれた。
「わ!?」
驚く辰巳。
だが、ギリギリのところで炎は届かなかった。
「危ねぇとこだったな……」
後方を見ると、提灯妖怪が追いかけてきているようだったが、その姿はどんどんと小さくなっており、やがて完全に見えなくなった。
「どうやら振り切ったようだな。それにしても、あのようなものまでいるとは、これは、生半可な戦い方では勝てんかもしれんぞ……」
吉右衛門は険しい表情を浮かべつつ、これからどうすべきか改めて考え始めていた。
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