雇われ側妃は邪魔者のいなくなった後宮で高らかに笑う

ちゃっぷ

文字の大きさ
21 / 40
第六章 夜姫の追放

第二十一話

しおりを挟む
 宴の最中、陛下の隣にいる上級妃はついに私と夜姫イェチェンだけになった。

 最初は苦痛でしょうがなかった陛下の側近くも、回数を重ねるごとに慣れていき……今では特別な感情は何も抱かなくなっていた。

 陛下は変わらず酒を飲んではガハハッと笑って、舞台上に歌姫グージェンの歌や舞姫ウージェンの舞がなくても気にした様子はなく、実に楽しそうだ。

 私はそんな陛下の隣にしなだれかかるように座り、上級妃として微笑み、お酌をして、いやらしい手遊びに耐え、そして夜になれば寝室で陛下のお相手をするだけ。

 なんて無意味な時間だろう……でも、ただ静かに耐えた。

 その間に、私は夜姫についての情報を集めた。

 まずは父に手紙を出し、彼女についての情報を教えてもらった。

 夜姫は、王宮にほど近い繁華街にある大きな遊郭の元遊女であったとのことだ。

 女好きな陛下が遊郭の女たちを後宮に招いた際、自分の相手をしたに魅了され、彼女のことを買い上げて側妃として迎え入れたらしい。

 女性らしい膨らみとくびれのある豊満な肉体、目元と口元にあるほくろ、露出の多い服装が印象的な女性だとは思っていたが……遊女であったと聞くと、その色気にも納得がいった。

 どうやら遊郭でも人気の遊女であったらしく、その夜伽の技術は確かなものらしい。

 そういえば彼女と初めて会った時、陛下も床上手な女なのだと自慢げに言っていたわね。

 彼女の買い上げに使われた金は、もちろん王宮から支払われている。

 陛下が女好きであることは民衆にも知れ渡っているため、遊郭からは人気の遊女だからとかなりの額を請求されたらしいが……陛下は構わぬと二つ返事だったとのことだ。

 手紙には女を買うから金を出せと陛下に言われた時、父がいかに呆れたかが書かれていた。

 妃たちが住まう後宮に遊女を招くことだけでも異例なのに、皇帝ともあろう人物が女を買うから金を出せと王宮に命令するなど前代未聞だ……と、それはそれはツラツラと不満が書き連ねられている。

 父の愚痴は適当に読み飛ばして、その他に役に立ちそうな情報がないか手紙を読み進めてみたが、特にこれといった情報は得られなかった。

 ……なぜ後宮に来てまで、父の不満を聞かなければならないのか。

 より良い情報も得られなかったし、私はげんなりしながら、読み終わった父からの手紙をさっさと燃やして処分した。

 もう少し夜姫についての情報がほしいな……彼女の弱みが知れれば一番だが、せめて彼女の人となりだけでも分かれば、何か計画に繋がるかもしれない。

 そこで私は、夜伽にやってきた陛下にもそれとなく尋ねてみることにした。

「――夜姫について?」

 事が終わって満足そうにしているところに尋ねてみると、陛下は少しぽかんっとした表情をしていた。

「えぇ。陛下から見て夜姫様はどういった方なのか、教えていただければと思いまして」

 私がそう言うと、陛下は髭を撫でながらうーむと考え込んで、彼女について思い出しているようだった。

「夜姫といえば、やはり夜伽の上手さだな。他の妃が受け身なのに対してアレは自ら進んで余に迫ってきてな、余の上に乗って自ら腰を振って、他の女では味わえぬ快楽を余に献上するのだ」

 悩んだ末に出てきた答えは、やっぱり夜伽のことだけ。

「さらに秘処だけではなく、時には胸や口も使って余を楽しませる女で……さすが遊女であっただけのことはあるな」

 話している内に陛下の顔はだんだんその時のことを思い出しているのか、口元はニヤニヤとだらしなく緩み始め、彼女の素晴らしい手腕に想いを馳せているようだった。

 ……陛下に聞いた私が間違いだったわ。

 そうこうしている内に陛下は辛抱たまらなくなったのか、寝台から起き上がっていそいそと身支度を整えたかと思うと、さっさと私の宮を出ていった。

 まったくもって役に立たなかった、完全に時間の無駄。

 まぁ……彼女については、自分で調べた方が早いと分かって良かったと思おう。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました

ましゅぺちーの
恋愛
侯爵令嬢のアリサは婚約者だった王太子テオドールと結婚した。 ちょうどその半年前、アリサの腹違いの妹のシアは不慮の事故で帰らぬ人となっていた。 王太子が婚約者の妹のシアを愛していたのは周知の事実だった。 そんな彼は、結婚初夜、アリサに冷たく言い放った。 「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と。

「君は有能すぎて可愛げがない」と婚約破棄されたので、一晩で全ての魔法結界を撤去して隣国へ行きます。あ、維持マニュアルは燃やしました。

しょくぱん
恋愛
「君の完璧主義には反吐が出る」――婚約者の第一王子にそう告げられ、国外追放を命じられた聖女エルゼ。彼女は微笑み、一晩で国中の魔法結界を撤去。さらに「素人でも直せる」と嘘を吐かれた維持マニュアルを全て焼却処分した。守護を失いパニックに陥る母国を背に、彼女は隣国の軍事帝国へ。そこでは、彼女の「可愛くない」技術を渇望する皇帝が待っていた。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

《完結》氷の侯爵令息 あなたが子供はいらないと言ったから

ヴァンドール
恋愛
氷の侯爵令息と言われたアラン。彼は結婚相手の伯爵令嬢にとにかく冷たい態度で接する。 彼女は義姉イライザから夫が子供はいらないと言ったと聞き、衝撃を受けるが気持ちを切り替え生きていく。

婚約破棄の代償

nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」 ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。 エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。

処理中です...