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第六章 夜姫の追放
第二十一話
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宴の最中、陛下の隣にいる上級妃はついに私と夜姫だけになった。
最初は苦痛でしょうがなかった陛下の側近くも、回数を重ねるごとに慣れていき……今では特別な感情は何も抱かなくなっていた。
陛下は変わらず酒を飲んではガハハッと笑って、舞台上に歌姫の歌や舞姫の舞がなくても気にした様子はなく、実に楽しそうだ。
私はそんな陛下の隣にしなだれかかるように座り、上級妃として微笑み、お酌をして、いやらしい手遊びに耐え、そして夜になれば寝室で陛下のお相手をするだけ。
なんて無意味な時間だろう……でも、ただ静かに耐えた。
その間に、私は夜姫についての情報を集めた。
まずは父に手紙を出し、彼女についての情報を教えてもらった。
夜姫は、王宮にほど近い繁華街にある大きな遊郭の元遊女であったとのことだ。
女好きな陛下が遊郭の女たちを後宮に招いた際、自分の相手をした夜姫の手腕に魅了され、彼女のことを買い上げて側妃として迎え入れたらしい。
女性らしい膨らみとくびれのある豊満な肉体、目元と口元にあるほくろ、露出の多い服装が印象的な女性だとは思っていたが……遊女であったと聞くと、その色気にも納得がいった。
どうやら遊郭でも人気の遊女であったらしく、その夜伽の技術は確かなものらしい。
そういえば彼女と初めて会った時、陛下も床上手な女なのだと自慢げに言っていたわね。
彼女の買い上げに使われた金は、もちろん王宮から支払われている。
陛下が女好きであることは民衆にも知れ渡っているため、遊郭からは人気の遊女だからとかなりの額を請求されたらしいが……陛下は構わぬと二つ返事だったとのことだ。
手紙には女を買うから金を出せと陛下に言われた時、父がいかに呆れたかが書かれていた。
妃たちが住まう後宮に遊女を招くことだけでも異例なのに、皇帝ともあろう人物が女を買うから金を出せと王宮に命令するなど前代未聞だ……と、それはそれはツラツラと不満が書き連ねられている。
父の愚痴は適当に読み飛ばして、その他に役に立ちそうな情報がないか手紙を読み進めてみたが、特にこれといった情報は得られなかった。
……なぜ後宮に来てまで、父の不満を聞かなければならないのか。
より良い情報も得られなかったし、私はげんなりしながら、読み終わった父からの手紙をさっさと燃やして処分した。
もう少し夜姫についての情報がほしいな……彼女の弱みが知れれば一番だが、せめて彼女の人となりだけでも分かれば、何か計画に繋がるかもしれない。
そこで私は、夜伽にやってきた陛下にもそれとなく尋ねてみることにした。
「――夜姫について?」
事が終わって満足そうにしているところに尋ねてみると、陛下は少しぽかんっとした表情をしていた。
「えぇ。陛下から見て夜姫様はどういった方なのか、教えていただければと思いまして」
私がそう言うと、陛下は髭を撫でながらうーむと考え込んで、彼女について思い出しているようだった。
「夜姫といえば、やはり夜伽の上手さだな。他の妃が受け身なのに対してアレは自ら進んで余に迫ってきてな、余の上に乗って自ら腰を振って、他の女では味わえぬ快楽を余に献上するのだ」
悩んだ末に出てきた答えは、やっぱり夜伽のことだけ。
「さらに秘処だけではなく、時には胸や口も使って余を楽しませる女で……さすが遊女であっただけのことはあるな」
話している内に陛下の顔はだんだんその時のことを思い出しているのか、口元はニヤニヤとだらしなく緩み始め、彼女の素晴らしい手腕に想いを馳せているようだった。
……陛下に聞いた私が間違いだったわ。
そうこうしている内に陛下は辛抱たまらなくなったのか、寝台から起き上がっていそいそと身支度を整えたかと思うと、さっさと私の宮を出ていった。
まったくもって役に立たなかった、完全に時間の無駄。
まぁ……彼女については、自分で調べた方が早いと分かって良かったと思おう。
最初は苦痛でしょうがなかった陛下の側近くも、回数を重ねるごとに慣れていき……今では特別な感情は何も抱かなくなっていた。
陛下は変わらず酒を飲んではガハハッと笑って、舞台上に歌姫の歌や舞姫の舞がなくても気にした様子はなく、実に楽しそうだ。
私はそんな陛下の隣にしなだれかかるように座り、上級妃として微笑み、お酌をして、いやらしい手遊びに耐え、そして夜になれば寝室で陛下のお相手をするだけ。
なんて無意味な時間だろう……でも、ただ静かに耐えた。
その間に、私は夜姫についての情報を集めた。
まずは父に手紙を出し、彼女についての情報を教えてもらった。
夜姫は、王宮にほど近い繁華街にある大きな遊郭の元遊女であったとのことだ。
女好きな陛下が遊郭の女たちを後宮に招いた際、自分の相手をした夜姫の手腕に魅了され、彼女のことを買い上げて側妃として迎え入れたらしい。
女性らしい膨らみとくびれのある豊満な肉体、目元と口元にあるほくろ、露出の多い服装が印象的な女性だとは思っていたが……遊女であったと聞くと、その色気にも納得がいった。
どうやら遊郭でも人気の遊女であったらしく、その夜伽の技術は確かなものらしい。
そういえば彼女と初めて会った時、陛下も床上手な女なのだと自慢げに言っていたわね。
彼女の買い上げに使われた金は、もちろん王宮から支払われている。
陛下が女好きであることは民衆にも知れ渡っているため、遊郭からは人気の遊女だからとかなりの額を請求されたらしいが……陛下は構わぬと二つ返事だったとのことだ。
手紙には女を買うから金を出せと陛下に言われた時、父がいかに呆れたかが書かれていた。
妃たちが住まう後宮に遊女を招くことだけでも異例なのに、皇帝ともあろう人物が女を買うから金を出せと王宮に命令するなど前代未聞だ……と、それはそれはツラツラと不満が書き連ねられている。
父の愚痴は適当に読み飛ばして、その他に役に立ちそうな情報がないか手紙を読み進めてみたが、特にこれといった情報は得られなかった。
……なぜ後宮に来てまで、父の不満を聞かなければならないのか。
より良い情報も得られなかったし、私はげんなりしながら、読み終わった父からの手紙をさっさと燃やして処分した。
もう少し夜姫についての情報がほしいな……彼女の弱みが知れれば一番だが、せめて彼女の人となりだけでも分かれば、何か計画に繋がるかもしれない。
そこで私は、夜伽にやってきた陛下にもそれとなく尋ねてみることにした。
「――夜姫について?」
事が終わって満足そうにしているところに尋ねてみると、陛下は少しぽかんっとした表情をしていた。
「えぇ。陛下から見て夜姫様はどういった方なのか、教えていただければと思いまして」
私がそう言うと、陛下は髭を撫でながらうーむと考え込んで、彼女について思い出しているようだった。
「夜姫といえば、やはり夜伽の上手さだな。他の妃が受け身なのに対してアレは自ら進んで余に迫ってきてな、余の上に乗って自ら腰を振って、他の女では味わえぬ快楽を余に献上するのだ」
悩んだ末に出てきた答えは、やっぱり夜伽のことだけ。
「さらに秘処だけではなく、時には胸や口も使って余を楽しませる女で……さすが遊女であっただけのことはあるな」
話している内に陛下の顔はだんだんその時のことを思い出しているのか、口元はニヤニヤとだらしなく緩み始め、彼女の素晴らしい手腕に想いを馳せているようだった。
……陛下に聞いた私が間違いだったわ。
そうこうしている内に陛下は辛抱たまらなくなったのか、寝台から起き上がっていそいそと身支度を整えたかと思うと、さっさと私の宮を出ていった。
まったくもって役に立たなかった、完全に時間の無駄。
まぁ……彼女については、自分で調べた方が早いと分かって良かったと思おう。
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