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序章
7月21日②
しおりを挟む「零矢は今日シフト入ってるのー?」
「あー、そういえば入ってたな」
京香と志保ちゃんが去ってから、不意にバイトの話をしてきた五関。
俺は撮っておいたシフトを確認するためスマホを開いた。
「えーと……お、今日あかり先輩いるじゃん。ラッキー」
「あかり先輩!? どれどれぇ」
五関がシフトを確認するために俺のスマホを覗いてきた。
突然近づいてきた五関とふわりと香るいい匂いにドキッとしつつ視線をスマホから逸した。
「いいなぁ。私も行こうかな。客として」
へへへと悪戯な笑みを俺に向けてきたので 「おい」 と短めにツッコミを入れておく。
五関とは違う高校だがバイト先は同じ。腐れ縁がまだ続いているのそういう理由だ。
「冗談だって! じゃ私はこっちだから。またバイト先でねー」
バイバイと手を振りながら駅の人混みに消えていく。五関はここから3駅離れたみなみ高校という高校に通っている。幼稚園からの幼馴染が違う高校に通うとわかったときは、寂しい気持ちになった。あの時の寂しさは今でも覚えている。……結局同じバイト先になったわけだが。
「あいつは変わらねぇな」
「まったくだ」
「わっしょい!」
突如後ろから聞こえてきた男の声に変な声をあげてしまった。
「要かよ、驚かすな」
「今の驚いたリアクションかよ。てっきり祭りの練習でもしてるのかと思った」
わりぃわりぃと全く反省の色が見えないこの男は伊藤要という俺のもうひとりの幼馴染だ。五関とは違い要とは同じ高校だ。
「絢ってさ、零矢のこと好きだよな」
「どっこいしょー!?」
「……やっぱり祭りの練習してるよな?」
あまりの驚きに再び変な声を出してしまった。
「ま、俺のことも好きだろうけどな!」
「あー、ソウデスネ」
要のいつもの冗談を真に受けてしまって悔しい気持ちをぐっと抑える。
「そんなことより、これ見ろよこれ!」
そんなことよりってお前が言ったんだろ! というツッコミは胸の奥にしまった。ツッコミを入れてしまうと要の思うつぼだと思ったからだ。
そんな風に考えている俺を尻目に、なにやら興奮した様子で鞄をゴソゴソと漁り、一冊の雑誌を取り出した。出てきたのはアイドル雑誌だ。俺はその雑誌に見覚えがあった。
「そのアイドル雑誌、まさか……?!」
「そう! この雑誌こそ、俺達の青春であるアイドルグループ 『セブンスカイ』 3周年人気総選挙結果が載っている雑誌なのだー!」
「な、なんだってー!」
セブンスカイとは、俺が中学3年生のときに好きになった7人組女性アイドルグループである。
周りの白い視線を無視して俺達は雑誌を見つめた。
「俺もまだ見ていない。……開けるぞ? せーのっ」
ばっと雑誌を開いた。そこには7人の少女と順位が記載されていた。
俺はざっと目を通していると、3位の表記に目が止まった。
「キラリちゃん3位か、惜しい」
キラリちゃんこと星空キラリ。俺の推しである。
「うわ、スピカちゃん5位じゃん。1位は‥安定のセツナちゃんか。やっぱすげえな」
要の推しである夏空スピカちゃんは5位だったらしい。1位の夜空セツナちゃんはこれで1回目の総選挙から3連覇。シンプルに凄い。
「なんかやる気なくなった。早く学校行って帰ろうぜ」
「夏休み前にそんなテンション低いのお前ぐらいだぞ」
そんなやり取りをしながら、俺達は学校に到着した。
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