イフルート

如月りょう

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ルート1

五関 絢①

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「おっそーい! 女の子を待たせたらダメなんだぞ~」
「わ、わるい」

 遅れる気はなかったが、家を出る前の京香の様子が気になって、そのことを考えて歩いていたら思ったより遅く歩いてしまっていたようだ。
 先に着いていた五関の姿をじーと見る。水色のワンピースを身に纏い、中学の時から変わらない絵に書いたようなポニーテールは健在だ。ただ中学時代と変わった点としては、黒髪がメインであるが、確かな存在感を放っている赤に染めた毛の束、俗に言うインナーカラーをしている、という点だ。ちょうど両耳の後ろからポニーテールの先目掛けて綺麗に真っ直ぐ伸びる赤はとてもよく目立つ。

「……? どうかした? なにかあった?」
「いや、大丈夫だ。ありがとう。さぁ行こうぜデート―――ぁ」

 言ってからしまった。と思ったが時既に遅し。俺は勝手にデートということにしていたけど、五関には遊びに行かないか? としか言っていない。
 心の底から後悔して左手で顔を覆う。覆ったまま、何も言ってこない五関が気になって横目で盗み見る。

「―――ッッ///」

 横目でもハッキリと分かるほど顔を赤らめる五関の姿が目に入る。その姿を見て俺も顔が赤くなる。

「そ、そういえばこうやって2人で遊びに行くのって初めてだな! いやー楽しみだな、遊ぶの!」
「あ、そ、そうだね! 初めて遊ぶの楽しみー!」

 空気を変えようとあまり中身のない話題をふる。一応遊びを強調してみたが、逆に意識してしまう。

「でもほんと意外だよな。幼稚園からの幼馴染なのに」
「そうだよね。いつも遊ぶってなると、かなめっちも入れて3人だったもんね」
「そうそう。あ、覚えてる? 小学生の時に要が鶏に追いかけられたの」
「すっごい覚えてる! あれは忘れたくても忘れられないよー」
「あとさ、中学の時―――」

 先程の気まずかった雰囲気は嘘のように昔話に花が咲く。
 高校に入学してから新しく仲良くなった女の子は八重野ぐらいだけど、やっぱり一番気心知れている女の子は五関だなと改めて実感した。





「ん~// 美味しすぎてほっぺたが落ちる~」
「その表現久しぶりに聞いたな」

 あの後俺たちは電車に乗って目的のパンケーキを食べに来ていた。
 やはり人気は間違いないようで、30分ほど並んだ。
 周りをぐるりと見回す。ここはパンケーキ専門店ということもあって女性客が過半数を締めていた。ポツポツいる男性客も女性と一緒に来ている。デートだろうか? 少しだけ場違いな空気を感じながら俺は目の前のパンケーキを頬張る。

「おぉ、これは確かに美味しいな」
「ね! ね!! ね!!! 美味しいよね!? ほっぺた落ちるよね!?」

 五関の圧に軽く引きつつ、俺はまたパンケーキを口に運ぶ。
 今まで食べたことのないほどフワフワなパンケーキに2口目でも感動する。甘さが口いっぱいに広がる。

「まじで美味い! 今度京香も連れてこないとなー」
「……きょかちゃん?」

 先程まで鼻歌を歌いながらパンケーキを食べていた五関の手がピタリと止まる。

「うん? ああ、京香だよ。なんか元気ないみたいなんだよ、京香のやつ」
「ふ~ん。そうなんだ」

 顔を伏せている五関の声は心なしかワントーン低く聞こえる。

「ずっと仲良しだね! 2人は」

 バッと顔を上げてそう言った五関の顔は笑顔だった。俺の気のせいか……?

「仲良い……のか? バカバカ言ってくるけどな」
「あはは! 可愛いじゃん! 私は一人っ子だから妹いるの羨ましいよ」
「そうか? 俺からしたら一人っ子ってのも良いと思うけどな」
「別に嫌ってわけじゃないけど、あんな可愛い妹欲しいじゃん! 私がれいやっちの立場なら絶対好きになる自信あるけどな~」
「言い過ぎだって。ちょっと幻想抱いてるぞ」
「そうなのかなー?」

 うーんと腕を組んで考えている五関。
 確かに京香はモテる。京香目当てで俺に近づいてくる男は数多くいた。もし京香が俺の妹じゃなかったらどう思うんだろ……?

「でもれいやっちときょかちゃんってさ」

 うん? と俺は先程までの思考を止め、五関の続く言葉を待つ。

「昔から皆に言われてるけど、全然似てないよね。特に容姿!」
「ぐはっっ!!」

 ズシッと言葉のナイフが胸に刺さる。
 昔から耳にタコができるほど言われてきた言葉。それは俺自身が1番自覚している。ただそれを他の人から改めて言われると傷ついてしまう。

「……京香は母さん似で俺は父さん似だからな……。髪の色からして違うし……。俺なんてミジンコだよ……どうせ……」
「わわっ! そんなに落ち込まないで! それにさっ」

 頬を赤に染め、首を少しだけ傾ける五関。

「れいやっちは十分魅力的だよ?」

 照れくさそうな表情の五関と先程の言葉のコンビネーションに、ネガティブモードに突入しそうだった気持ちは一気に春を迎えたような暖かさに包まれた。
 なんだか照れくさくて残りのパンケーキを一気に頬張る。

「あ、早食いだね! 私も負けないよ!」

 2人してパンケーキにがっつく。先程まで感じていた甘さは何故かあまり感じなかった。
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