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後ろの席のギャル
しおりを挟む僕がイジられる要因はどうやら2つあるらしい。
1つ目は見た目。
僕はお世辞にも男らしい体型とは言えない。身長は160センチで背の順はいつも前の方。筋肉もあまりなく、中学時代は女子と腕相撲で良い勝負をしていた。それを裏付けるように、体重は45キロと全体的に見て小柄だ。
顔も男らしくなく、どちらかといえば中性的で塩顔とよく言われていた。小学生の頃はよく女の子に間違われた記憶がある。……今もごく稀に間違われるけど。
以上のように、小柄な体型と中性的な顔立ちが、女の子からイジられる原因となっているらしい。
2つ目は反応。
僕は異常なほどの怖がりだ。ちょっとの物音にも敏感に反応してしまうし、声も出てしまう。そういった反応が面白いみたいで、男子からよく後ろから驚かされていた。
怖がりが故に芸人顔負けのリアクションを取ってしまい、その結果イジりっ子達の良い的になってしまった。
この2点が僕と友達が中学時代に分析したイジられ要因。
そして始業式が終わり、後ろの席のギャルからイジる宣言を受け、帰宅した今現在。ここがターニングポイントだと帰宅してから服もそのままに懸命に考えていた。イジられない方法を。
(まずあのギャルは緊張してる僕が面白いからイジるって言ってた。まだオーバーリアクションはしてないから、これは恐らく要因1のせい)
学校でギャルから言われた言葉を思い出しながら分析する。
緊張している僕の見た目が面白いということなら要因1が当てはまる。ということは、僕がしなければいけないこと、それはーーー
(常に平然を装い、何をされても過剰な反応をしない。だ!)
これに尽きる。あのギャルはイジると言っていたので、もう逃げることは出来ないだろう。ならば何をされても反応せず、こいつはつまらない奴と思わせればいい。イジった相手が無反応ならイジりがいが無い、だから僕をイジる。と中学時代に誰かが言ってたことを思い出した。
(でも問題があるな……)
そう、この作戦には問題がある。それは僕が怖がりなことと、イジってくる相手が自分の後ろの席にいる、ということ。
真正面から驚かされても怖がる自信のおる僕が、もし仮に授業中後ろからちょっかいを出された時、リアクションを取らない自信がない。
これは反射に近い。目に異物が近づくと目を閉じるように。高熱の物に触れた時、すぐに手を離すように……。つまりは不可避。
(無理なものは無理で諦めよう。というか、始業式後にすぐ寝るような人だから授業中も寝てるよね)
少なからずある可能性に賭け、僕はまだ買ったばかりの制服に皺がつかないよう着替え始めたーーー。
(今日が高校生活の運命を決める1日だ)
あれから服を着替えた僕は晩ご飯を食べ、明日の準備をして眠りについた。そして今、校門の前にいる。
(よし、行こう!)
時刻はまだ8時。登校している生徒は数える程しかいない。なぜこんなに早く来たのかというと、昨日みたいに先手を打たれて相手のペースになってしまうことを恐れたから。
今日は僕が先に教室に着いて、自分の席で寝たフリをしておこう。そうすればあのギャルに打つ術はないはず!
それに、あのギャルが何時に登校するか把握できれば、逆にこちらから仕掛けることができるんじゃないか……?
イジられっぱなしの僕が念願のイジる側に立てる。しかも相手は僕がイジられる原因になったギャル!
想像するだけでワクワクが止まらなくなる。教室に向かう足取りも軽く感じる。
1限目までの時間、どんな風にイジるか作戦を練っておこう。無意識に悪戯な笑みを浮かべながら教室のドアを開けーーー
「わ!!!!!!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
教室のドアを開けた瞬間、目の前に人がいて驚かされた。あまりの驚きに腰が抜けて尻餅をついてしまった。
「あははは! マジウケる!! そんなびっくりしなくていいじゃん!」
立てる? と目に涙を浮かべ、笑いながら手を差し伸べてくれたのは昨日のギャル。
「あー、おもろ。リアクションも最高なんだね、きみ」
「な、なんで僕が来ることわかったんですか?!」
そうだ、なぜこのギャルは僕が入ってくることをわかっていたのか。それに言っちゃ悪いが、どう見てもこんな早い時間に登校するようなキャラに見えない。まさか待ち伏せしてたのか……?
「なんでって、時間を間違えて早く来ちゃって暇だから外見てぼーとしてたの。そしたらきみの姿が見えて驚かしちゃえ! って思ったってわけ」
髪を靡かせながら語るギャル。悔しいが、少し絵になっている。
「……最悪だ」
「まぁまぁ、そんな落ち込まなくてもいいっしょ! 面白かったよ!」
面白さなんてどうでもいい。このギャルにリアクションを見せてしまったのが最悪だ。これでもうイジられるピースが揃ってしまった……。
「そういえばまだ自己紹介してなかったね。私の名前は最上千尋。きみの後ろの席ね。1年間よろしく~。で、君の名前は?」
このギャル、もとい最上さんは僕の手を強引に掴んで起こしてくれた。
「僕は佐井将生。……よろしく」
高校生活2日目。
僕のイジられライフが幕を開けてしまう。
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