イジる彼女とイジられ彼女

如月りょう

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寡黙な少女との出会い

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 悪夢の高校生活2日目から2日が経ち、今日は金曜日。高校生活初めての土日を迎えるということもあり、教室はどこか賑やかに感じる。始業式から考えると、5日が経過している現在、早くも仲良しグループが出来つつある。だが、大半はまだ手探り状態。僕もそのうちの1人。
 波乱の幕開けで、高校生活もイジられ続けるのかと思っていたが、意外と普通に高校生活を送れていた。
 というのも、あの一回以降、最上さんは僕にちょっかいを出さなくなった。
 イジる宣言があったが、今彼女は女の子グループと仲良く談笑している。
 僕のことはどうやら忘れてくれたみたいで安心する。ただ、後ろの席なので油断は出来ないが……。
 そんなわけで僕の不安材料のひとつが解消されようとしているなか、もうひとつの問題点が浮上してくる。それはーーー

(友達ができない!!)

 友達問題。
 中学時代から特別友達が多い方ではなかった。むしろ心許せる友達は片手で足りるぐらいしかいなかった。みんな僕のことを友達というよりイジる対象で見ていたから。
 もしかすると、それを友情だと捉えている人もいたかもしれないが、僕は友達だと思っておらず、イジってくる人達。という認識だった。

 高校生になってから、話しかけたり、話しかけてくれる人もいたが、まだ友達とは言えない距離を感じている。
 休み時間になった今も、こうして机で1人考え込んでいるのがその答えだ。

(まずは僕と似たような人を見つけないと)

 僕は教室を見渡す。
 複数人で喋っている人達、他のクラスに行っている人、寝ている人……。
 多様な人がいる中、僕みたいに寝ずに1人で座っている人が見当たらない。
 この時間も友達作りは無理か……と諦めかけたとき、1人の女の子を視界に捉えた。彼女の席は教室入口近くの1番前の席だ。
 その子は1人で本を読んでいた。
 僕も本は読む。といっても漫画だが。
 ここからだと彼女が読んでる本の内容まではわからないが、もしかしたら彼女が読んでる本は僕の知ってる本かもしれないし、そうでなくても漫画を好きな可能性は高い。
 休み時間終了まであと5分。ここが勝負!
 そう確信した僕は席を立ち、彼女の席まで歩いて行く。そして彼女の横に立った。
 読んでる本を覗き見ると、どうやら小説のようで、僕の知らない世界だった。
 少し残念な気持ちになっていると、彼女が視線を小説から僕の方に切り替えていて目が合った。
 思わず逸らしそうになったが、グッと堪える。
 なぜかそのまま睨めっこ状態が続く。なんて声をかけようか迷っていると、彼女が目線はそのままに小説をパタンと閉じた。

「……何か用?」

 端的な一言であったが、声が透き通っていて言葉の存在感を感じた。

「いや、えと……何読んでるのかなと思って……」

 僕が声を発すると、彼女は元々大きな目をさらに丸めて微かに驚いたような表情をした。

「びっくりした……あなた男の子なのね」
「んなっ!」

 声を聞くまで女の子と思われていたことにショックを受けつつ、びっくりしたと言う割には表情があまり変わっていない彼女を見て、彼女なりの冗談なのかな? とも考えた。

「正真正銘の男だよ! ていうか服見ればわかるでしょ!」
「そう言われてみればそうね。……ごめんなさい」

 ぺこりと軽く頭を下げる彼女を見て、冗談ではなく本気で女の子と思っていたんだと察し、改めてショックを受けた。
 確かに、いかにも寡黙な少女という感じの彼女が初対面の相手に冗談を言うとは考えにくいよな……と自己完結した。

「読んでるのはただの大衆小説よ。他に何か聞きたいことは?」
「あ、えーと……特にないです」

 僕が言い終わると同時に 「そ」 とだけ返事をし、再び小説の世界へと戻っていった。
 僕はしぶしぶ自分の席に戻ろうとした。その時……

「なーに私以外の女の子と喋ってんのー? 浮気とかマジやばいよー?」
「へあっ!」

 突然後ろから両肩をドンと叩かれて変な声を出してしまう。振り向くとそこには最上さんがいた。……ん? というか今なんて言ってた?

「急にやめてよ! あと今なんて言ったの?」
「だーかーらー! 浮気はダメって言ってんの!」
「ばっ?!」

 慌てて寡黙な少女を見る。彼女は無表情のまま僕と最上さんを交互に見ていた。
 早く弁解しないと変な噂が広まる! そう感じ必死に弁明の言葉を頭の中で繋ぎ合わせる。それが完成するよりも前に、彼女が口を開いた。

「……まだ1週間も経ってないのに早いね。おめでとう。お幸せに」
「いやん、ありがとう♡」
「ちょい! これ以上話をややこしくしないで!」

 いつまでもノリノリな最上さんにストップをかける。最上さんは 「ちぇー」 と唇を尖らせながら先程まで一緒にいた女子グループの元に帰っていった。

(しばらく音沙汰無いと思っていたら最悪のタイミングでイジってきた……。しかも場を荒らすだけ荒らしてフォロー無しかよ……! 最悪だ……)

 この絶妙な空気をどうしてくれるんだ、と最上さんを恨んでいると

「もう少しでチャイム鳴るから席に戻ったら? それに、また彼女さんに誤解される」

 誤解してるのは君なんだ! と伝えようとしたがチャイムが鳴ってしまった。
 ……弁解は次の休み時間でいいか。
 そう思い自分の席に戻る。
 変な誤解を招いた張本人がニヤニヤしながら手を振っている。タチの悪い人を背にして僕は席に座った。
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