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第二話 これって恋?
しおりを挟む「は? ちょっと待って、マジでありえんてぃーなんだけど!」
ジャンナは、スマホの画面に映るメッセージを何度も見直した。リサとミナが、心配そうに彼女の顔を覗き込む。
「どうしたのジャンナ? なんか彼氏でもできた?」
リサが冗談めかして言ったが、ジャンナの顔は青ざめたままだ。彼女がスマホを二人に見せると、メッセージの送り主は『クロエ』と名乗っていた。
「誰この人、ジャンナのファン?」
「いや、違うの…。この人、前世の私を知ってるみたいで…」
ジャンナは震える声でそう告げた。リサとミナは顔を見合わせ、目を丸くした。
「え、ジャンナって実はコスプレアイドルだったの? すごい!」
「いや、そうじゃなくて! ガチでヤバい奴なの!」
ジャンナは、自分がジャンヌ・ダルクの生まれ変わりであることを、二人にはまだ言っていなかった。だが、もう隠しきれないかもしれない。彼女は、意を決して口を開いた。
「実は…私、前世はフランスのジャンヌ・ダルクだったの…」
リサとミナは、一瞬静まり返った後、大爆笑した。
「まじかー! ジャンナ、そういうノリもいけるんだー!」
「ちょーウケるんですけど! てか、絶対ジャンナはフランスの貴族とかの生まれ変わりだよー。その美貌、納得!」
ジャンナは肩を落とした。彼女が何を言っても信じてもらえないだろう。
「とにかく、このメッセージの主は、私を『聖女』と呼んで、何か企んでいるみたい…」
その時、ジャンナのスマホが再び震えた。今度は、メッセージではなく、着信だった。画面には『田中』の文字。ジャンナは、慌てて通話ボタンを押した。
「もしもし、田中くん?」
「ジャンナちゃん! 大変だ! 僕、図書館で調べてたんだけど、ジャンヌ・ダルクに異端審問官として敵対した人物の中に、『ジャン』っていう名前の人がいたみたいなんだ!」
田中の興奮した声が、電話越しに響く。ジャンナは、その言葉を聞いて、背筋が凍るような思いがした。
「…クロエじゃなくて、ジャンなの…?」
「うん! しかもその人、後にジャンヌ・ダルクの処刑に深く関わったみたいで…」
田中の言葉は、ジャンナの心を恐怖で満たした。
「もしかして、あの人、私のことを…!」
「ジャンナちゃん、落ち着いて! 僕がついてるから!」
田中の優しい声に、ジャンナは少しだけ落ち着きを取り戻した。彼は、私のことを信じてくれている。
「田中くん…私、怖いの…」
「大丈夫だよ。明日、学校で会おう。僕がジャンナちゃんを守るから」
ジャンナは、田中の言葉に胸が熱くなった。
「ありがとう…」
電話を切ると、ジャンナはリサとミナに言った。「私、明日、田中くんと会うね」
二人は、顔を見合わせてニヤニヤと笑った。
「ジャンナ、ガチ恋じゃん!」
「田中くん、ちょー真面目そうだけど、ジャンナにはお似合いかも!」
ジャンナは、二人の言葉に顔を赤くした。
翌日、放課後。ジャンナは、田中と一緒に図書室にいた。田中は、たくさんの歴史書を広げて、真剣な表情で調べている。ジャンナは、彼の横顔をじっと見つめていた。
「田中くんってさ、本当に歴史が好きなんだね」
「うん。だって、過去から学ぶことって、たくさんあるから。それに、僕は、ジャンヌ・ダルクの歴史を、もっと多くの人に知ってほしいんだ」
田中の言葉に、ジャンナは胸が締め付けられるような思いがした。彼は、私のことを尊敬してくれている。なのに、私は、過去から逃げている。
「…私ね、正直、ジャンヌ・ダルクのことが大嫌いだった」
ジャンナは、勇気を出して、そう告白した。田中は、驚いたように顔を上げた。
「どうして?」
「だって、神の声に忠実に従った結果、裏切られて、火刑に処されて…何もいいことなかったから」
「でも…彼女は、フランスを救ったんだよ」
「そんなの、私には関係ない! 私は、ただのジャンナなの! ギャルになって、楽しいことだけしたいの!」
ジャンナは、感情が高ぶり、涙が溢れてきた。田中は、そんな彼女の涙を、優しく拭った。
「ジャンナちゃんは、何も悪くないよ。僕が、ジャンナちゃんの過去を受け止めてあげるから」
その言葉に、ジャンナは思わず田中の胸に飛び込んだ。彼の体は、彼女が想像していたよりもずっと温かかった。
「田中くん…ありがとう…」
その時、ジャンナのスマホが震えた。メッセージの通知。今度は、差出人が『ジャン』になっていた。
『聖女よ、我を見つけてくれたのか。では、もう一度、火を燃やそうではないか』
メッセージには、彼女の家の住所が添付されていた。ジャンナは、その文字を見て、体が硬直した。
「どうしたの、ジャンナちゃん?」
田中が心配そうに覗き込んできた。ジャンナは、震える手でスマホを田中に見せた。田中は、メッセージを見て、顔色を変えた。
「これは…! 警察に連絡しなきゃ!」
「いや、ダメだよ! もし、この人が本当に…」
ジャンナは、過去の記憶が蘇り、動けなくなってしまった。その時、田中の目が、彼女の肩にかかった、小さな金色の刺繍に留まった。それは、彼女が愛用しているカバンの肩紐に縫い付けられていた、フランスの王家の紋章だった。
「ジャンナちゃん…もしかして、この紋章…」
「…これは、前世で私が使っていたもの…」
ジャンナは、観念して、そう告白した。田中は、信じられない、という表情を浮かべていたが、すぐに真剣な眼差しになった。
「ジャンナちゃん、僕が、ジャンナちゃんを守るから。だから、もう、一人で抱え込まないで」
田中は、ジャンナの手を強く握った。彼の温かい手が、彼女の心を包み込む。
「田中くん…」
「僕が、ジャンナちゃんの騎士になってあげる」
その言葉は、まるで、遠い昔に聞いた、誰かの誓いの言葉のようだった。
ジャンナは、田中と一緒に、メッセージの送り主である『ジャン』を探すことにした。
「もしかしたら、彼は、私を殺すために、現代に転生してきたのかもしれない」
ジャンナは、不安そうに言った。田中は、優しく微笑んだ。
「大丈夫だよ。僕が、ジャンナちゃんを、守ってあせるから。たとえ、相手が、前世の宿敵だったとしても…」
二人は、ジャンナの住所へと向かった。そこは、ごく普通のマンションだった。オートロックを解除し、エレベーターに乗り込む。
「…本当に、ここにいるのかな…」
ジャンナは、不安で、田中の手を握りしめた。田中は、その手を強く握りしめ返した。
エレベーターの扉が開き、廊下に出ると、一人の男の子が立っていた。彼は、ジャンナたちを見るなり、ニヤリと笑った。
「やあ、聖女。見つけてくれたか」
その声は、ジャンナの記憶の中の、異端審問官の声と、全く同じだった。
「やっぱり…ジャン…」
「ああ、そうだ。僕は、お前を火刑に処した、ジャン・ル・ピュイだ」
男の子は、そう言って、ジャンナに近づいてきた。彼の目は、冷たく、嘲笑に満ちていた。ジャンナは、恐怖で動けなくなってしまった。
「待て! ジャンナちゃんに、何をするつもりだ!」
田中が、ジャンナの前に立ちふさがった。ジャンは、田中を見て、クスクスと笑った。
「ほう、聖女の騎士か。だが、お前では、僕には敵わない」
ジャンは、そう言うと、ジャンナに向かって手を伸ばした。その手には、不気味な光が宿っている。
「…やめて…!」
ジャンナは、思わず叫んだ。すると、彼女の体から、眩い光が放たれた。ジャンは、その光に弾き飛ばされ、壁にぶつかった。
「…まさか、お前、まだそんな力を…!」
ジャンは、驚愕の表情を浮かべた。ジャンナは、自分の体から放たれた光を見て、信じられない、という表情を浮かべていた。
「…私、こんな力、持ってたの…?」
「ジャンナちゃん…!」
田中は、ジャンナの力を目の当たりにし、再び、彼女の騎士となることを誓った。
「ジャンナちゃん、もう大丈夫だよ。僕が、ジャンナちゃんを守るから」
その言葉に、ジャンナは、彼の胸に顔をうずめた。
「ありがとう、田中くん…」
彼女は、自分の中に眠っていた、聖女としての力を、今、思い出した。そして、その力を、大切な人を守るために使いたい、と強く願った。
「…行くよ、ジャンナちゃん」
田中は、ジャンナの手を強く握り、ジャンに向かって歩き出した。
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