「完結」異世界転生した男は特殊部隊に所属していた

leon

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第四話 新たな仲間

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村を後にして数日、俺は馬車を北へ走らせていた。地図によれば、この先は「グラン荒野」と呼ばれる広大な荒れ地だ。岩と砂が広がり、水源は少ない。だが、村長が言っていた「北の都市」の噂が気になっていた。魔王を倒したとはいえ、この世界の全てが解決したわけじゃない。情報と補給を求め、俺は荒野を進んだ。

風が砂を巻き上げ、視界が時折遮られる。馬が疲れ始めた頃、遠くに黒い影が見えた。魔物か?銃を手に構えつつ近づくと、それは倒れた馬車だった。周囲には血痕と壊れた武器。襲撃の跡だ。足跡を追うと、岩陰に隠れるようにして息を潜める少女がいた。歳は15か16くらい。ボロボロの服に、短剣を握りしめている。「お前、何者だ?」低い声で問うと、少女がビクリと震えた。だが、すぐに鋭い目で俺を見返してきた。「アリシアだ。あんたこそ何?盗賊か?」「佐藤悠斗。旅人だ。盗む気はない。お前を襲ったのは何だ?」アリシアは少し警戒を緩め、岩の向こうを指した。「魔獣だよ。角の生えた巨大な蜥蜴みたいなやつ。家族と一緒に都市へ向かってたけど、襲われて…私以外はみんな死んだ」涙を堪える声だったが、俺は感情に流されず状況を分析した。魔獣が近くにいるなら、危険はまだ終わっていない。「その魔獣、どの方向へ行った?数と特徴も教えてくれ」アリシアは驚いた顔をしたが、すぐに答えた。「西へ逃げた。数は3匹。体は5メートルくらいで、角が武器みたいに硬い。鱗が厚くて、剣じゃ歯が立たなかった」硬い鱗なら、貫通力のある弾が必要だ。俺は89式小銃の弾を確認し、アリシアに指示した。「ここに隠れてろ。俺が片付ける。動くなよ」彼女が頷くのを確認し、俺は足跡を追った。

西へ数百メートル進むと、岩場に潜む3匹の魔獣が見えた。アリシアの言う通り、巨大な蜥蜴だ。角は鋭く、鱗が陽光を反射している。距離を保ちつつ、風下に回り込む。音と匂いを隠し、最初の1匹を狙った。頭部にスコープを合わせ、引き金を引く。「パンッ!」銃声と共に頭が弾け、即死。残りの2匹が咆哮を上げ、俺へ突進してきた。動きは速いが、直線的だ。横に跳びつつ、次の一発を胸に撃ち込む。鱗を貫き、2匹目が倒れた。最後の1匹が角を振り上げてきたが、俺はナイフでかわしつつ拳銃を抜き、至近距離で目を撃ち抜いた。魔獣が崩れ落ち、静寂が戻る。「硬いが、急所を外さなきゃ問題ないな」血を拭い、アリシアの元へ戻った。彼女は目を丸くして俺を見ていた。「あんた…人間じゃないだろ?あんな魔獣をこんな簡単に…」「訓練の成果だ。それより、北の都市へ行くつもりなら一緒に来るか?一人じゃ危ないぞ」アリシアは少し迷った後、頷いた。「頼むよ。私もあそこに行きたい。家族の仇を討つ手がかりがあるかもしれない」目的があるならいい。俺は馬車に戻り、アリシアを乗せて北へ進んだ。

2日後、グラン荒野を抜けると、灰色の石壁に囲まれた都市が見えた。「カルディス」と呼ばれる交易都市らしい。門衛に怪しまれたが、アリシアが商人家族の生き残りだと説明し、なんとか入れた。中は活気に満ちていた。露店が並び、剣や鎧を身に着けた冒険者たちが歩いている。異世界らしい光景だが、どこか中東のバザールを思わせる喧騒だ。俺は目立たないようフードをかぶり、アリシアと宿を探した。「ここなら情報が集まる。魔獣や魔王の手がかりを探したい」アリシアが言うと、宿の主人に酒場を勧められた。そこは冒険者や商人が集まる場所らしい。夜になり、酒場へ向かうと、騒がしい声と酒の匂いが溢れていた。隅の席に座り、周囲を観察する。やがて、革鎧を着た大柄な男が近づいてきた。剣を腰に下げ、髭面に笑みを浮かべている。「お前ら、新顔だな。俺はガロン、冒険者だ。見慣れない武器持ってるな。傭兵か?」俺の銃に目をやる男に、軽く答えた。「佐藤だ。旅人だよ。武器は故郷のものだ。情報が欲しいんだが、この辺で妙な動きはないか?」ガロンは酒を一口飲み、声を潜めた。「妙な動きなら山ほどある。最近、東の森で魔物が増えてる。魔王が死んだって噂もあるが、逆に勢力が増してるって話だ。誰かが裏で糸を引いてるらしいぜ」魔王を倒したのに勢力が増す?俺は眉を寄せた。「その裏の奴ら、どこにいる?」「分からん。ただ、北の山脈に妙な光が見えたって報告があった。お前ら、そっちから来たんだろ?何か知ってるか?」俺は黙って首を振ったが、内心で状況を整理した。魔王の本拠で得た力と、石板の声。あれが全てじゃないのかもしれない。アリシアが口を開いた。「私、家族を魔獣に殺された。そいつらを操ってる奴がいるなら、絶対に許さない」ガロンは同情するように頷き、言った。「なら、俺と組まねえか?東の森で魔物を狩る依頼を受けてる。お前らの力なら稼げるぜ」俺は一瞬考えた。情報収集と補給の足しになるなら悪くない。「条件次第だ。報酬と装備の補充ができれば考える」ガロンは笑って手を差し出した。「決まりだな。明朝、出発だ」握手を交わし、俺たちは新たな一歩を踏み出した。


翌朝、ガロンと合流し、東の森へ向かった。アリシアは短剣を手に、俺は銃とナイフを装備。ガロンは大剣を背負い、自信満々に先導した。森は湿気が強く、木々が密集している。視界が悪い分、音に頼るしかない。「魔物はゴブリンとオーガの混成だ。数は20匹以上。気をつけろよ」ガロンの警告に、俺は頷いた。敵の数が多ければ、戦略が必要だ。「俺が先制する。ガロン、アリシアは左右から援護してくれ。囲まれないよう間隔を取れ」指示を出し、俺は木陰に身を潜めた。やがて、ゴブリンの甲高い声とオーガの重い足音が近づいてきた。小柄なゴブリンが10匹、巨体のオーガが5匹。連携してるらしい。最初のゴブリンを狙い、頭を撃ち抜く。銃声で敵が混乱した隙に、次々と仕留める。オーガが突進してきたが、動きが遅い。足を撃って動きを止め、ガロンが大剣で首を落とした。アリシアは素早く動き、ゴブリンの背後から短剣で急所を刺す。10分で殲滅。俺の弾は10発減ったが、効率は悪くない。ガロンが息を切らしながら笑った。「お前、化け物だな。こんな楽に狩れるとは思わなかったぜ」「連携が良かっただけだ。それより、敵の動きが不自然だ。誰かに操られてる気配がある」地面に落ちたゴブリンの首飾りを見ると、赤い石が埋まっていた。魔王の手先と同じ核に似ている。アリシアが顔をしかめた。「これ…家族を襲った魔獣にも付いてた。やっぱり裏に誰かがいるんだ」ガロンが首をかしげた。「魔術師か何かか?森の奥に古い塔がある。そこを調べるか?」俺は頷き、装備を整えて塔へ向かった。

森の奥にそびえる塔は、苔と蔦に覆われていた。入り口は開け放たれ、薄暗い階段が続く。俺が先頭に立ち、銃を構えて進む。ガロンとアリシアが後ろに続く。塔の最上階に着くと、ローブをまとった男が立っていた。白髪に赤い目。手に持つ杖から不気味な光が漏れている。「お前らが魔王の残党を潰した奴らか。面白い。だが、ここで終わりだ」男が杖を振ると、黒い霧が広がり、魔物が召喚された。オーガとゴブリンの強化版だ。俺は即座に指示を出した。「ガロン、アリシア、左右に散れ。俺が魔術師を狙う!」霧の中を突き進み、男に銃を向ける。だが、弾は魔法の障壁に弾かれた。物理攻撃が効かないなら、別の手段だ。床に転がる石を拾い、男に投げつける。障壁が一瞬揺らぎ、その隙に拳銃で杖を撃ち抜いた。「ぐああっ!」男が叫び、霧が消える。ガロンとアリシアが魔物を仕留め、俺は男に近づいた。「誰に仕えてる?魔王は死んだぞ」男は血を吐きながら笑った。「魔王は…ただの駒だ。本当の主は…深淵にいる…お前ごときじゃ…」息絶えた男の手から、赤い石が落ちた。アリシアが拾い上げ、悔しそうに言った。「まだ終わってないんだね…」俺は頷き、塔を見回した。壁に刻まれた紋様が、新たな謎を示していた。
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